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<シンガポールは給与が高く、寮も清潔>出稼ぎ労働者へのインタビューから浮かぶ、働く場所としてのシンガポールの魅力。

シンガポールの街中の工事現場などで見かける外国人労働者の方々。彼らはどんなビザを持ち、どうやってシンガポールに来て、どんな風に働いているのかを知る機会は多くありません。

新型コロナウイルスの感染がシンガポールで拡大した時期には、彼らは劣悪な環境で働かされているという報道が流れました。

「劣悪な環境で可哀想」という印象を持ったかもしれませんが、それは間違っているかもしれません。シンガライフ編集部のインタビューから、彼らは給与が高く制度もしっかりしているシンガポールは働く場所として、満足しているということが分かりました

長文になりますが、貴重なインタビューをご覧ください。

32万人の労働者

シンガポールには、インドやバングラデシュ、中国などから高い給与を求めて出稼ぎ外国人労働者が働いています。シンガポール労働省(MOM)によると、その数は約32万人。

彼らはワークパーミット(労働許可証)というビザを所持しています。建設現場や港湾で働く単純労働者向けの労働許可で、2年ごとの更新となります。日本人が取得することは基本的にはできません。

人口約560万人のシンガポールにとって、建設現場や清掃業などに従事する出稼ぎ労働者は貴重な労働力となり、シンガポール経済を陰で支えています

現場を監督するマネジャーへのインタビューです。

現場マネジャーのMohamed(モハメド)さん

<モハメドさんの経歴>
シンガポールに移住したインド人の父親とマレーシア人の母親を持ち、現在52歳でPRホルダー。
元々は現場で働いていたものの、今はマネジメント職に就く。

15歳 中学校卒業
16歳 セールスの仕事に就職
18歳 シンガポール軍で2年間の兵役         
20歳 工事現場でマレーシア人と共に働く
22歳 婚活をして結婚
24歳 マネジャーとなる
26歳 危機管理資格取得 夜間学校に通い高卒資格を取得
28歳 インドで3年間スーパーバイザーに
31歳 シンガポールに帰国
33歳 オペレーションマネジャー
35歳  サイト(現場)マネジャー
37歳 セーフティーマネジャー
40歳 セーフティマネジャーとして現在の会社に転職
52歳 現在
65歳 定年予定

シンガポール政府公認のスキルアップ研修

出稼ぎ労働者は主に、インドやバングラディシュ、それに中国から来ています。仲介する派遣会社があるので、そこを経由してシンガポールに移住するという形です。出稼ぎ労働者を雇いたい建設会社は、
・人数
・国籍
・求めるスキル
などを派遣会社に伝えると、派遣会社がリストアップし、そのリストから採用を決めるという流れですね。

一定程度のスキルが身についている労働者は、当然その分給与も高くなるので、未経験の労働者を安く雇い、シンガポールに来てからシンガポール政府公認の無料スキルアップトレーニングを受けさせて、現場に配置するケースが多いです。

言語は働きながら覚える

自分の国の言語しか話せない者がほとんどで、当初はマネジャー指示内容を理解できない者が多く、そういう労働者たちは現場で技術を見ることで仕事を覚えていきます。

ただ、現場でいろいろな国の言葉が飛び交うので、1年ほど働けば「現場言葉(work language)」を覚え、別の国出身であっても互いに意思疎通ができるようになります。

例えば、タミル語しか話せなかったインド人労働者が10年間の勤務で中国語も話せるようになったケースもあり、言葉の問題はそれほど大きくはありません

大卒で出稼ぎにくる人も

出稼ぎ労働者の中には、自国で大学まで卒業して英語も話せる人もいます。彼らはセンスがあるので、はじめは現場で働いていたとしても、すぐに現場を離れてオフィスの仕事に配置転換することもあります。

シンガポールの無料スキルトレーニングはありがたく、シンガポールで何年か働きスキルを身につけて国に帰る人も多くいます

寮費と食費は会社が支払う

出稼ぎ労働者の方々は、スキルの有無によって多少の差はあるものの、月に500〜700ドルが給与の相場です
寮費や食費は勤務先の会社が支払う仕組みになっています。

会社は労働者一人当たりにかかる費用は毎月約1,000ドル。内訳は
給与:500〜700ドル
寮費:120ドル
食費:70ドル
その他:税金や医療保険などです。

宗教の異なる労働者は寮では別部屋に

現場では国籍や宗教では関係なく配置しますが、寮では異なる宗教の労働者は別の部屋に割り当てています。無用なトラブルを回避するためで、特にイスラム教は1日5回祈りの時間があるので、同じ部屋にした場合に、周りの人間に迷惑となってしまいます。
食べ物や食べ方、暮らし方が国籍によってバラバラなので、上手に配置するのが大切です。

建設現場内に寮を建てて生活

現在は、約160人の労働者が働くリバーバレーにあるコンドミニアムの建設現場を監督しています。寮費や送迎トラックの費用を抑えるためにその現場内に寮を建てています。同じ敷地内にあるので、通勤も楽、食事もスムーズに提供できますし。ただ、労働者の側からすれば、常に監視の目があるようなものなので、居心地は良くないかもしれませんね。

7年ほど前までは、労働者の住む場所を建設会社が好き勝手に決めることができましたが、政府が規制を強化して、人数や消防設備、生活環境の清潔さなどをチェックし、OKが出たところにのみ住まわせることができます

外国人労働者が働くコンドミニアムの建設現場

楽しいのは「地図に残る仕事」

私が現場で働いていた時に楽しいと感じた仕事は、駅やショッピングモールなど完成後に「地図に残る現場」でした。完成してから、現場を訪れて家族に見せると、誇らしい気持ちになりましたね。その気持ちは監督になった今でも変わっていません。

反対に辛い仕事は、金属のワイヤーを結び直す仕事でした。ワイヤーが顔や手に当たり傷だらけになりました。また、セメントを手で混ぜる仕事も炎天下の中、重くて大変でした。

コロナの流行で人員の入れ替えが困難に

新型コロナウイルスの流行でシンガポールと労働者たちの母国との往来ができなくなったため、人員の入れ替えが難しくなっているのが困っている点です。
自由に往来できる時は、仕事にそぐわない労働者を送り返して別の人員を配置するということができましたが、それが今はできません。作業も滞りがちですし、会社は余分なコストを払っている状態になっています。

また、労働者の方も、自由に外出できないストレスで浪費してしまう人もあり、同僚に借金を申し込んだり、高利貸しに手を出したりするケースもあります。会社が対応しなければならないので、大変です。

デート相手はラッキープラザで見つける

労働者の方々は基本的に日曜日が休みで、外出する人が多いですね。ラッキープラザなど、住み込みで働くメイドさんたちが集まる場所に出かけて、デートの相手を探すケースが多いですよ。

ただ、ワークパーミットではシンガポールで結婚することは認められておらず、どうしても一時的な出会いになってしまいます。シンガポール政府も注意を呼びかけていますが、メイドさんを妊娠させてしまうことも少なくありません。

※編集部注意:メイドには半年に一度の検診が義務付けられており、妊娠が発覚したら本国へ送還される。

勤続20年を超えるスタッフも

メディアは労働者たちのことを劣悪な環境で働かされ、かわいそうな人という視線で見ているかもしれませんが、ほとんどの人たちがシンガポールの暮らしを気に入っていて、帰りたがりません

生活費、食費がかからないため、母国への仕送りもたくさんできて、医療保険や税金は会社が負担です。自国で働くよりもいい生活ができていると思います。その証拠に20年以上も勤務する人がいます。彼らの稼ぎが自国に住む家族や親戚の生活を支えているのです。モハメドさんは誇らしげに話してくれました。

日本人は我々を敬遠している?

シンガライフ編集部は、モハメドさんに日本人への印象を聞いてみました。モハメドさんの回答は「礼儀正しくて、働き者」という印象を持っているそうです。
ただ、これまでの人生で一度も日本人から話しかけられた経験はないと寂しそうに話していました。今回のインタビューにも驚いたそうです。

次のページは現場で働く2人の男性の声を紹介します。

フィントリリス彩花
この記事を書いた人
東京生まれ・東京育ち。ツアコン、山ガイド、米国ディズニー、ニューヨーク勤務を経て、結婚、出産し、シンガポールへ移住。 現在は2児の母。 人と話すこと、書くことを生きがいとしており、私の文章を通して皆様の世界が広がりましたら本望です。