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【4/26(日)放送 TV番組「情熱大陸」出演】ショートショート作家・田丸さんがシンガポール日本人小学校で講演

「ショートショート」とは短くて不思議なお話のこと。楽しむ気持ちを大切にして、短くても少し長くても、続きがあっても構わない、自由な発想から生まれる新しい創作文学です。
シンガポール日本人学校で2月に行われた田丸さんによる特別授業。2時間を使って、5年生全員が会議室に集まりました。「文章や日記を書くのが得意な人~?苦手な人?」と田丸さんが生徒にたずねると、苦手な人~、にたくさんの児童が手を挙げていました。


また、小説を書いたことがある人~?という質問にも数名の児童が手を挙げて始まった今回のワークショップ。
小学生が小説を書くなんて、ちょっとハードル高過ぎやしませんか?と大人は思ってしまいます。

どうやって書くのでしょう?

(1)不思議な言葉を作ります

・身近に思いつくいろいろな言葉20個を書いてください
・その中から1つだけ言葉を選んで〇をつけ、その言葉から思いつくことを自由に10個書いてみよう
・はじめに書いた言葉と、思いつくことをランダムに組み合わせて不思議な言葉をいくつか作ります

(2)不思議な言葉から想像を広げていく


・不思議な言葉を1つ選び、それはどんなモノか説明します、イラストでもOK
・それは、どこで、どんなときに、どんな良いことがありますか?
・それは、どこで、どんなときに、どんな悪いことがありますか?

(3)想像したことを短い物語にまとめる
児童が作った作品のタイトルは
「先が見えるメガネ」
「温かい上ばき」
「口笛をふく時計」
「元気なおりがみ」
「季節があるジュース」
などと、小学生ならではの身の回りの言葉から生まれたタイトルをもとに、こんなんだったらいいな、こうであったら面白いな・楽しいなと考えながら文章を作成していました。


創作をしている児童たちは、リラックスした雰囲気でもあり真剣な顔つきでもあり、頭の中の想像力を最大限に活用しているように見えました。

どんな作品を作ったのでしょうか

「白滝シューズ」女子児童Aの作品
白滝を変形させてできたシューズが発明された。白滝シューズに3つのいいことがある。白滝シューズはふつうのゴムなどでできたくつより弾力があり、早く走ることができる。2つ目のいいことは、伸びるひも靴だから履きやすい。3つ目のいいことは色を生卵や醤油などで変えられる。だが、ツルツルしているから脱げやすく滑りやすい。

「いろいろな色の月」女子児童Bの作品
あれは色が変わる月。週1で色が変わる。リスナーの投票で決められて誰でも気軽に変えることができるんだ。変わる時、グラデーションになってきれいなんだよ!でも土曜~金曜で変わるから、金曜日はみんなあきちゃっているんだ。それに黒の時は1週間おやつがなくて、白の時はまぶし過ぎて夜が朝みたい。ぼくはぐんじょう色がきれいだと思うな。

「○○の形をした海」女子児童Cの作品
今の時代では海は「Art」だ。私の職業はその海の形をデザイン作るというものだ。各国で自分の海が一番すごいと競争しあい、観光のメインになりはじめた。私も趣味で各国の海のArtをよく見に行く。海Artはどんな色の海でも形がすごいと感動が生まれる。またきれいな色の海で海Artを作ると美し過ぎる。海Artは人をいやす力を持っている。海Artがされている海では遊べないし意外とくずれやすかったり、悪いこともけっこうある。

授業を見ての感想

ワークシートの段階から児童が書いたものが発表されると、笑いが起こり次々にほかの児童が手を挙げます。後ろで見ている先生も興味深くかつ真剣に見守っています。最後の作品の発表では、田丸さんも含めて教室全体のエネルギーがMAXに。
高揚感さえありました。児童の作品には、柔軟で純粋でキラリと光るセンスが感じられて羨ましくなるほど。田丸さんのワークショップ、シンガポールの中学校、高校で行われたらぜひ見に行きたいと想像は広がり、思春期の尖った作品に個人的に興味が湧きました。


田丸さんに聞きました

Q)1年生から5年生までのワークショップを今回しましたが、学年により違いはありましたか?
田丸さん)
学年が上がるにつれて成熟していき、書き慣れて文章の完成度が上がっていきますね。想像力の突飛さは下の学年の方があるようにも見えますが、それを上手くまとめていく作業は学年が上がるにつれてアップしていきますね。
表現をどうしたら伝わるか、描写の訓練が積まれていくので、突飛でさらにどのように展開し、さらに結末をどのように持っていくかが成熟していくことが感じられました。
「もっと面白くしたいんですがどうしたらいいですか?」「文末の締め方をどうしたらいいですか?」と今日のクラスでは積極的に質問してきてくれて、文章として完成度を上げていくモチベーションも出てきたのが印象的でした。


Q)創作をみんなで行い、発表する意味は何ですか?
田丸さん)
創作は一人でやるのもいいですが、みんなで行うことで刺激を与え合い、発表を聞いただけ発想の引き出しが広がりやすくなります
発表を聞いて、あれなら自分の方が面白い!と思う子もいたでしょうし、あの構造いいな、自分も書きたいなとどんどん書けるようになってくる循環が出てきます。
ですから、1回だけでなく、2回、3回と書いて欲しいと思います。最初はちょっと控えめだった子が、2回目3回目になると解放されていくパターンもあるので、そうなるとさらに楽しいですね。


Q)常識のヘルメットやブレーキを外すことは難しいですか?
田丸さん)
僕自身もそうですけど、誰かから言われたことや注意されたことにより、知らず知らずのうち空気を読み、忖度をするようになってしまいます。それを必要以上にやってしまいがちです。
小学校の中学年・高学年くらいだと周りの視線を気にし出し、大人になるにつれブレーキを踏み、躊躇しまいます。常識のヘルメット=「こうでなければいけなんだ」という思い込みがどんどん強くなっていきます。
ただ、こういう機会を通して1度でも外した経験があると、何かしら成長の過程で違いが出てくるといいです。


Q)児童たちに期待することはありますか
田丸さん)
常識のヘルメットやブレーキを外すという意味で、ショートショートを続けて欲しいです。細く長く、思い出した時でいいので、またふとした時に書いてもらえたら嬉しいです。
書くということだけでない可能性を広げてくれるものだと思っています。ショートショートは表面上は「楽しい小説を書きましょう」「不思議な変な話を書きましょう」としていますが、文章力はもちろんのこと、アイディア力・発想力・論理的に考えそれをまとめる力・相手に伝わるかということから相手の気持ちを想像する力に繋がります。
今回は表現することが教育の側面に出ましたが、様々な可能性に繋がると信じています。

 

プロフィール

氏名:田丸雅智(たまる・まさとも)
1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。現代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務める。
また、全国各地で創作講座を開催するなど幅広く活動している。2017年には400字作品の投稿サイト「ショートショートガーデン」を立ち上げ、さらなる普及に努めている。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など多数。
公式サイト:http://masatomotamaru.com/
ウェブ上で創作にチャレンジできるサイトはこちらから

※テレビ番組「情熱大陸」に出演

4月26日23時(日本時間)〜TBS系列で放映予定。シンガポール日本人学校の様子も放映される予定です。
情熱大陸(https://www.mbs.jp/jounetsu/

入江さくら
この記事を書いた人
シンガポールで中学生の娘と小学生の息子を子育て中。子どもたちは日本で、自閉症の子どもたちと一緒に学ぶ混合教育の小学校に通わせて、それぞれ個性があること、人と違いがあることはいいことだということを感じてもらいました。モンテッソーリ教育、フォニックスも勉強し、シンガポールならではの教育事情にフォーカスして書いています。