「コロナ禍のヒーロー」がレストラン開く ホーカーで無料食事提供した2人の若者

※写真はfacebookより

新型コロナウイルスの感染拡大に伴って行われたシンガポールの外出制限措置「サーキットブレーカー」。この最中に、ホーカーで無料で食事を提供した2人の若者が11月、新たにレストランをオープンさせました。「コロナ禍のヒーロー」とも称される2人の名はジェイソン・チュアとハン・ジェン・ロン。新たな挑戦のスタートです。

ジェン・ロンは27歳のムエタイ選手。ジェイソンも27歳。全身にタトゥーを入れています。過去にボクシングのシンガポールのナショナルチームに所属していましたがそれから転身、2人はやりたいことにエネルギーを集中させることを選びました。それが彼らの新しいレストラン、タンジョン・パガーにある「ベン・フー・クックス(Beng Who Cooks)」です。

11月上旬オープンしたこのレストラン。メニューはちょっと変わった名前です。

クラブス・ウェル…カニ、醤油イクラ、パルメザンチーズチップス、トマトスープ
バク・チョア・ライス…酢などで香りをつけたご飯、温泉たまご
ハッピー・エンディング…お楽しみ!シェフお任せ

2人の若者はかつて、チャイナタウンにあるホン・リム・フード・センター(Hong Lim Complex Hawker Centre)で、小さなお店(ホ―カー)を営んでいました。そのお店もBeng Who Cooksという名前でした。

彼らは「サーキットブレーカー」中に、人びとに無料で食事を提供し、そのことで「コロナ禍のヒーロー」とたたえられ、「the President’s Volunteerism and Philanthropy Awards 2020(ボランティア精神と慈善活動アワード2020)」で特別賞に選ばれました。10月には大統領官邸に招待され、シンガポールのハリマ・ヤコブ大統領と面会しました。

この2人は一体何者なのでしょうか?

ジェイソンは飲食ビジネスに関わる両親のもとに生まれました。12歳ごろから「人のために働くのは嫌。自分でビジネスをしたい」という気持ちがありました。15歳のときにタトゥーを入れたことで、母親に家から追い出されました。彼の背中には大きなスカルのタトゥーがあります。友人も頼れず、祖母のもとでかくまってもらい、食事も出してもらったといいます。これらの経験がジェイソンの人格を形成してきました。ボクシングをするジェイソンは「自分が勝つ喜びも負けた悔しさも誰にもわからない」と話します。スポーツ科学も学びました。パーソナルトレーナーを目指したこともありましたが、スポーツジムでのインターンを通して中毒などの重大さに気付きました。

ジェン・ロンの方もエピソードには事欠きません。絵描きの父親と、日本食レストランでパートとして働く母親の間に生まれました。かつてはケンカも多く、周囲の人が起こした事件で、関わっていないのに逮捕されてしまったこともあります。そのため、友人も信用できませんでしたが、家族に泣かれたとき「目を覚ませ!」と自分に言い聞かせ、更生。それからは不安をふりはらうようにムエタイに没頭学校で電子工学と心理学を学びました。

そんな二人の出会いは、共通して取り組んでいた格闘技でした。

2年前、友人に「飯がうまい」と褒められたジェイソンは、貯金をはたいてホン・リム・マーケットの一角に仲間何人かと小さなホーカー店Beng Who Cooksを開店。このときすでに90のレシピがあったそうです。オープンの8カ月後、ジェン・ロンが仲間に加わります。最初は手伝い程度でしたが、オープン時の仲間が去ったところで、ジェン・ロンが経営に関わるようになりました。お互い何でも言い合いながらビジネスを進めています。子ども向けの料理のワークショップも開いてきました。このころすでに、いつかはレストランを開くというプランがありました。

その後、2020年の春頃から起きた新型コロナウイルスの感染拡大。2人は基金を立ち上げ、食事がほしいと言ってきた人びとに無料で振る舞いました。ジェイソンは「自分たちがヒーローだとは思わない。店じまいも考えたし、デリバリーも難しい状態だった」と振り返ります。無料振る舞いのきっかけは、初老の男性が食べ物を買うためにお金がほしいと言ってきたと知ったことでした。このことで心に火が付いたと言います。これまで振る舞った食事は15,000シンガポールドル分にもなります。

ところで、新しいお店のコンセプトは?

2人は声をそろえます「革新的な食事。高い値段でなくても良い食事があるということを伝えたい」。生活費のための貯金を新事業につぎ込むことは恐くないのかと尋ねられても「不安どころかエキサイティング!」

Bemg Who Cooks のFacebookページはこちら。
https://www.facebook.com/BengWhoCooks/

この記事を書いた人

SingaLife編集部

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