【日本からシンガポールへの入国体験レポート】14日間の隔離中、専用アプリで所在地確認とほぼ毎日電話

シンガポールから日本への一時帰国のレポートはこれまでにお伝えしていましたが、今回は日本からシンガポールに戻ってきた女性の体験をレポートです。シンガポールでは、2020年7月現在、入国後14日間の隔離期間を過ごさなくてはなりません。

その過ごし方が気になっている方も多いことと思います。これからシンガポールに入国しようとしている人は必見の記事です。

シンガポール政府の入国制限措置の変遷

3月

16日

23時59分から、過去14日以内に日本などに渡航した旅行者にSHN措置を実施。
 20日23時59分から、全ての旅行者(市民・永住者・長期滞在ビザ所持者・短期滞在者)にSHN措置を実施。
 23日23時59分から、全ての短期滞在者はシンガポールへの入国とトランジットが不可に。労働ビザや帯同ビザ保持者も、保健,運輸などの業種をのぞいて入国不可能に。
 27日シンガポールを出国した渡航者(シンガポール市民、永住者をのぞく)は,再入国時のSHN施設での滞在費用を自費負担に。
 28日日本政府がシンガポールからの渡航者に入国後14日間の隔離措置を開始
4月7日サーキットブレーカーを開始
 9日23時59分から、シンガポールに入国するシンガポール国籍者、永住者、長期滞在ビザ保持者は、政府指定のSHN施設で14日間の隔離に。
 21日サーキットブレーカーの延長を発表
6月1日サーキットブレーカーが終了
 2日フェーズ1がスタート
 17日23時59分から、SHNの規制が一部緩和。日本などから入国するシンガポール国籍者、永住者、長期滞在ビザ保持者は、SHNの期間中、政府指定施設ではなく自宅で過ごすことが可能に。
 18日23時59分から、フェーズ2がスタート
7月19日23時59分から、SHNの規制が再強化。日本などから入国する長期滞在ビザ保持者は、政府指定の施設に収容。自宅でのSHN期間を過ごすことは不可能に。

 

※SHNーStay Home Noticeの略。新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、14日間、一切の外出を禁止される措置。違反すると国外退去などの厳しい処分に科されることも。

会社経営の蒼井さん(仮名、30代女性)

3月中旬、葬儀に参列するため日本へ一時帰国した蒼井さん。シンガポールを出発した直後にシンガポール政府が入国規制を強化し、一部の人をのぞいて入国禁止となった。そのため、シンガポールに戻れぬまま3カ月間を日本で過ごすことに。

蒼井さんの状況

一時帰国の期間:3月中旬から6月下旬まで
一時帰国の理由:葬儀に出席するため
シンガポール入国日:6月30日
SHNの期間:6月30日〜7月14日正午
SHN期間中の滞在場所:自宅

出国翌日に入国が禁止に

蒼井さんが日本行きのフライトに乗ったのは3月22日。シンガポール政府は翌日の23日23時59分以降、運輸や医療などに携わる人以外の入国を禁止した。蒼井さんがこのニュースを知ったのはチャンギ空港の出発ロビー。

ただ、蒼井さんは冷静だった。「日本に行くと決めたときに、シンガポールに戻れなくなるかもなと思っていたので、冷蔵庫の中身などは整理していました。ただ、3ヶ月間の長期になるとは思わなかった」と振り返る。
日本がシンガポールからの渡航者に入国後14日間の隔離措置を開始したのは3月28日。蒼井さんが日本に到着した時期は、まだ検査も行われていなかった。

日本からシンガポールの仕事を

日本滞在中は、シンガポールの仕事は日本からある程度行い、家族が東京に住んでいるため、滞在場所に困ることもなかった。
もちろん、不安が頭をよぎったことも。「3カ月って結構長いですよ。いつシンガポールに戻れるだろうと不安になったこともありますが、新しい仕事を始めるなどしていたら、その不安も少し和らぎました」と話す。

入国申請は一度リジェクト

シンガポールに再入国するには、日本に滞在している間にMOM(シンガポール人材開発省)に入国していいかどうかの許可を取得しなければなりません。蒼井さんは、シンガポール政府が4月7日から6月1日まで実施した外出制限期間「サーキット・ブレーカー(CB)」が終わった直後に申請をしたものの、あえなくリジェクトされた。

6月17日に再度申請したところ、その日の深夜にアプルーバル(承認)メールが届き、メールには「6月29日〜7月1日の間に入国するように」と書かれていた
蒼井さんがシンガポールに戻ってきたのは、6月30日。当時は、日本からシンガポールへ渡るフライトの便数が限られていたため、実質的には6月30日以外に帰国できる日の選択肢はなかった。

3月とは一変していたチャンギ空港

日本からシンガポールに向かう飛行機の機内の客の数はまばら。到着したチャンギ空港の光景は、出発時とは一変していた。いつもは到着客やトランジット客で賑わうチャンギ空港だったが、蒼井さんが到着した時は「空港内に人の姿がほとんどなく、見慣れたチャンギ空港ではありませんでした」。

人の姿がないチャンギ空港

入国審査の前でSHNの説明

入国審査の前の広場でSHNの説明が行われる。係員が手元にあるリストに入国する人の名前が記載されているかどうかを照会。入国が許可されているかどうかを1人ずつ調べていたという。
SHNの期間中は一切の外出が禁止される。近所のスーパーに買い物に行くといったことも許されず、違反すると労働ビザの取り消しや国外退去、再入国禁止といった厳しいペナルティが科されることがある
SHNの説明が一通り終わると、入国審査を受けて手荷物の受け取りとなる。

滞在場所へは専用のタクシーで移動

蒼井さんは自宅が滞在場所となっていたので、タクシーで自宅に向かった。自宅以外の場所となっている場合、滞在する施設はシンガポール到着後に初めて分かる

アプリで体温などを1日3回報告

シンガポール入国時に、Homerというアプリをダウンロードするように求められる。そのアプリは、SHNなどの隔離措置を受ける人向けのもので、セルフィーで写真撮影し、さらに体温や体調について記入して、シンガポール政府にレポート。
レポートする時間帯は
(1)8〜10時
(2)13〜15時
(3)18〜20時

となっている。
蒼井さんは報告を忘れないように、とアラームをセットし、時間になったらすぐに送るようにしていた。

アプリの画面。SHNの残り期間などが表示される

毎日の電話

アプリでの報告とは別に、2日目以降はMOMのスタッフから毎日連絡が来るように。連絡は、シンガポールで広く使われている通信アプリ「What’sApp(ワッツアップ)」や電話に掛かってくる。発信元の番号は毎回異なり、電話口の声も毎回違ったという。

聞かれる内容は日によって異なるものの、必ず聞かれるものとして
・FINナンバーと所持するビザの種類
・住所
・体調(咳があるかどうか、気になる点はあるか)
・アプリをダウンロードしたかどうか

そして、これら以外には、
・入国日
・同居者の人数
・会社の名前や業種

などがあった。

「本人確認は必ずあり、定型の質問を5つほどされます。人によってはとてもきさくで、全然関係ない会話をすることもありました。日が経つに連れてその電話連絡が楽しみになりましたよ」と蒼井さん。
What’sApp(ワッツアップ)の位置情報も常にONにしておくようにと、言われたという。

アプリは常に起動状態をキープ

Homerは起動状態をキープさせておかねばならず、ついうっかり終了させてしまうと、すぐに「起動させるように」と通知が来る仕組みになっているという。
Homerは位置情報も収集し、入国者が予めシンガポール政府に提出した滞在場所から離れた場合に、そのことが政府に分かるようになっているという。

国外退去の夢にうなされる

14日間のSHNに突入した蒼井さん。自宅なので、普段と変わらない日常を過ごした。食料品はレッドマートなど宅配で注文でき、フードはデリバリーをオーダーすれば熱々の料理を食べることができる。
外出したい欲求に駆られたこともあったというが「それはもう絶対にしないように特に気をつけていました。外出して、それが発覚して、国外退去になる夢を見たくらいです」と振り返った。

PCR検査の費用は日本出発前にカードで支払い

蒼井さんのような入国者は、SHNの期間中にPCR検査を受けることが義務化されている。
その検査費用は$200。日本円で1万6,000円ほど。
入国許可のメールの後に請求メールが届き、支払い専用のウェブサイトにクレジットカード情報を入力し、支払いが完了する。

元小学校?の体育館でPCR検査

入国後のPCR検査を受ける時間と場所は、入国時には決まっておらず、後日スマートフォンに届くSMSに日時と場所が書かれている。
蒼井さんのケースでは、受診する2〜3日前にSMSが届いたという。蒼井さんがPCR検査を受けたのは、かつて小学校だったと思われる敷地にある体育館。10個ほどのブースが特設され、検査を受ける人で列ができていた。写真撮影は禁止だったという。
鼻に綿棒のようなものを差し込んで行うPCR検査。蒼井さんは「超痛かったです」と苦笑する。
検査から2日後、SMSで陰性の連絡が届いた。

シンガポールの整然としたシステムに驚嘆

日本とシンガポールのどちらの国のコロナ禍も経験した蒼井さん。シンガポールに戻ってきて驚いたのは、そのしっかり管理されたシステムだという。

「1日3回の報告はアプリで行い、PCR検査の場所や結果は電話ではなくSMSで届きます。そして、位置情報はアプリで収集されています。アプリの開発もそうですし、物事の大半がシステマチックに進んで行くことに改めて驚きました」

同調圧力が強い日本

「日本では『コロナにかかったら終わり』というような意識を強く感じました」と話す蒼井さん。シンガポールのように罰則付きの外出制限は行わない緩さがある一方で、緊急自体宣言が出されている間は、日本での自宅がある都心も人影がまばらになった。「『周囲がしているから自分も自粛しよう』というある種の同調圧力の強さを感じましたね」。

この記事を書いた人

Alcoholic Spy

好きな言葉はハッピーアワー。シンガポールでも、安く美味しく飲める場所を日々探求。

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