海外生活のメリットとは?グローバル教育メッセージ<第2回>

「せっかくシンガポールに住んでいるのだから、国際的な感覚と実力を子供に身につけさせたい」そう願うご家庭も多いと思います。シンガポールを拠点に、国際教育についてコンサルテーションを行なっている日本人女性の連載がスタート!シンガポールで受けることが出来る教育とは、国際的な子供を育てるためには……?様々な角度からお伺いします。

今回お話を伺ったのは…康子モラティーユさん

青山学院大学卒業。外資系金融で東京、ロンドンで働く。フランス人夫の転勤に伴い、ロンドン、東京、シンガポールで2人の息子を育て、イギリスボーディングスクールへ送った経験を元に、その受験、対策、アドバイスも行う。
執筆記事 クーリエジャポン 日経プレジデントファミリー |
これまでの海外経歴について
――お子さんはおいくつですか?
19歳と16歳です。二人とも男の子です。
――これまでの海外経歴について教えてください
ロンドン8年、東京5年、現在シンガポール10年目。
長男はロンドンで男子校に5歳まで通い、東京、シンガポールではインターナショナルスクールに、13歳からイギリスのボーディングスクールに。現在はアメリカの大学に通っています。次男も同じく13歳から、イギリスの学校に在籍中です。
――子育てをする上で心がけていることなどはありますか?そのことによって成長したエピソードなどがありましたらお願い致します。
いつでも「こんにちは」と「ありがとう」を忘れないことですね。これは、長男が4歳半から通っていたイギリスのプレプレップスクールの校長が一番大事なこととして挙げていました。そのおかげでどこでも礼儀正しい(Polite)と言われます。私はいつでもどこでも日本語で話します。
子供と一緒に過ごすロングホリデーの行き先は
――息子さんは、本当に礼儀正しく感じのいい男の子ですよね。ところで、海外の学校はお休みが長いですよね。どんな風に過ごされていたのでしょうか。子連れの旅で印象的だった思い出について教えてください。
男の子2人なので、静かな観光は難しく、いつもアクティブな旅行を計画していました。エリア別にご紹介します。
<アジア>
長男が6歳前に父親とマウントキナバルに登頂。まだ小さかった次男と私は、コタキナバルのホテルでオランウーターサンクチュアリー、そのあとシバダンの離島でウミガメの産卵を見に行きました。
テレビもインターネットもなく、温水もでるかでないかのシンプルな宿でしたが、海の綺麗さと自然に魅了され、忘れられない思い出です。
カンボジア、ラオスーアンコールワットの遺跡よりも、現地の貧しさにショックを受けたようです。内戦のエピソードを聞いたり、ドキュメンタリーをみたり、まだ小さい時でしたがショッキングな歴史を垣間見ることは、本だけでは学べない体験だったと思います。同様に、広島の原爆資料館、ホーチミンのベトナム戦争資料館も連れて行きました。
<アメリカ>
ハワイは日本から年に2回、私が一人で連れて行っていました。オアフの西、コオリナにいつも滞在。朝は浅瀬の人工ビーチ、午後はプール。一日中外でハッピーな時代です。
<ヨーロッパ>
大人になると、海よりも山派に。モンブラン麓のシャモニーでガイドをお願いし、1泊2日の山登りに。安全ロープでつないで夏のアルプスを登りました。夏でも万年雪。小さなクレバスに次男が片足を取られたり、山小屋で他の登山客と一緒に寝泊りしたり、辛かったけれど貴重な体験です。
――お休みも有意義でしたね。ハワイでコオリナを選ばれた理由は何ですか?
ワイキキよりも人が少なくて、美しい人工ビーチがラグーンになっているので安全だったからですね。
貴重な経験になった習い事について
――お休み中の習い事などはいかがでしたか?
息子は二人ともテニスをしていたので、夏休みは5年続けて南フランス・ニースにあるモラトグル・アカデミーに通いました。寮もありますが、私達は近くに家を借り、子供達がトレーニングをしている間にアダルトレッスンを受講。トレーニングに来ているモナコ在住のプロテニス選手をよく見かけました。
――さすがのセレブ感です。モラトグル・アカデミーはいかがでしたか?
アカデミー内での練習以外に、申し込むとアカデミーが周りで行われているジュニアトーナメントに申し込んでコーチが帯同してくれるのはよかったです。
――旅は情操教育にもプラスになりますね。他にはどのような場所に行かれましたか?
子供がティーンになって訪れてよかったのが、ギリシャ。昔からリックリオダンのオリンポス小説に夢中だった息子達。ギリシャ神話、哲学、歴史、などに探究心が再発しました。食べ物も美味しく、観光客に慣れていてサービスもスムーズな印象です。
サントリーニ島は海も風景も美しく、次回は違う島にも行ってみたいと話しています。
そして、毎年訪れているのがロンドン。他ヨーロッパ都市にバカンスに行く時に必ず寄っていました。
小さい時はケンジントンガーデンのプリンセスダイアナ記念公園に1日おきに行っていました。子供同伴でないと入場できません。
――子供同伴でないと入場出来ないのですね。子供のためのアクティビティなどもあるのでしょうか?
園内には海賊船の砂場や、音を楽しむギャラリーなどがありましたが、子供が大きくなり10年近く入ってないので最近はわかりません。
子供の安全面でロンドンは一歩進んでいます。住んでいたのでここでは書ききれませんが、ロンドンは1週間いても子供は全然飽きないくらい沢山やることがあります。
冬は大抵スキーで、もっぱらニセコですが、東京に住んでいた子供が小さい時はクラブメイドサホロによく行きました。イギリスのボーディングに行ってからは2月のお休みにフランス、イタリア、スイスなどのスキーリゾートにも行きますが、子供達はそれでもニセコが一番好きだといいます。
――ニセコは外国人にとってもとても人気の場所ですよね。どういったところが良いですか?
なんといっても雪の質。北海道のパウダースノーを経験してしまうと、ヨーロッパ、アメリカのスキーリゾートにいっても、ニセコがいいと言っているうちの息子達です。
また予約は大変ですが、ゲレンデ周りの美味しいレストランも楽しみの一つです。
親子にとって宝物になった経験とは?
――教育に関して「これにトライして良かった」といった経験談を教えてください
小さい時はいろいろなスポーツをさせてよかったと思います。そして本人がやりたいと選んだスポーツ、(うちの場合はテニス)を真剣にやらせました。一つのことに打ち込んだ経験は、自信と耐える力を養います。また楽器は頑張ってやらせていましたが、2人ともあまり興味がなくやめてしまいました。残念。
――これからの時代を生き抜いていく為に、子供が鍛えるべき部分があるとしたら何だと思いますか?
メンタル。精神的な強さ。新しい発想でしょうか。
――親の立場からの、その取り組みへのサポートとは何でしょうか
自分がサポートできないことは、アウトソースする、よい影響を及ぼしそうな人物、物、事を検索するのは両親でもいいと思います。
――Yasukoさんは、子供に良い影響を与えることに関してのアンテナが研ぎ澄まされていますね。
ところで、読者の方の中には、日本に帰国する予定の方もいらっしゃるかと思います。日本でするべき教育についてはどう思われますか?
英語が話せる事も大事ですが、それより大事なのは母国語、自分の国の文化をよく知る事。あとはシンガポールでの経験を忘れずに。
――海外に出ることへのメリット、アクセスするべき場所はどちらだと思われますか?
数年間でも海外での教育を受けることは真の国際人になる一歩です。さまざまな学校があるイギリス。扉を叩いてみる事をお勧めします。
読んで良かった本について
――教育をする上で、役に立った本と、その理由を教えてください
●「自分の中に毒をもて」(岡本太郎著)
長男のミドルネーム、太郎は彼から取りました。生きることの本質を問う名著です。
●Carol A.Strip ‘Helping Gifted Children Soar”
なぜ宿題をしないのか?この本を読んで救われました。
Amy Chua
●“Batthe Hymn of the Tiger Mother”
参考程度に。到底真似はできないので。アジア人の子供に厳しく勉強させる意味を肯定的に書いています。
――最後に、皆さんが知りたい英語上達へのアドバイスやメッセージなどございましたらお願い致します。
英語上達の近道。海外テレビシリーズを英語のサブタイトルで見ることが一番ですね。
――貴重なお話をどうも有難うございました!次回もどうぞよろしくお願い致します。
〜康子さんのお話から〜
「英語が話せる事も大事ですが、それより大事なのは母国語、自分の国の文化をよく知る事。あとはシンガポールでの経験を忘れずに」という康子さんの言葉が印象的でした。フランス人のご主人とシンガポールの自宅に友人を招き、三島由紀夫をはじめ日本の作家の本を読む読書会をしているというお話もされていました。何事もバランス、幅広く見聞を広めていくことが大事ですね。

この記事を書いた人
YUKI KAMIO
singaporeが好きすぎ、散歩ばかりしているライター。趣味は建築見学。一番好きなローカルフードはローミー。ボタニックガーデンで深呼吸。