<21年7月版ビザ関連まとめ>観光では要らないけれど、シンガポールで働くにはビザの取得が必要です

外国人が日本で働いたり留学するためにはビザが必要なように、日本人がシンガポールで働く場合には就労ビザ、留学する場合には学生ビザが必要になります。

駐在員として赴任する場合でも、現地採用で働く場合でもそれは同じ。永住権などがない場合は、基本的に就労ビザや滞在ビザを取得しなければなりません。観光でシンガポールを訪れるときは、日本のパスポートを所持していればビザを改めて取得する必要はありません

この記事では、2021年7月現在のシンガポールにおける就労ビザや学生ビザの状況をまとめました。ただ、ビザのシステムや発給条件は政府が頻繁に更新するので、必ずご自身で所管官庁のウェブサイトで確認するようにしてください。



ビザの種類で官庁が異なる

シンガポール政府は、さまざま種類のビザを発行しており、ビザによって所管官庁が異なります。

就労ビザを発給しているのは、人材開発省(Ministry of Manpower=MOM)で、学生ビザやワーキングホリデーパスは、シンガポール入国管理庁(Immigration & Checkpoints Authority=ICA)が発給しています。

MOMウェブサイト
ICAウェブサイト


ビザの種類

シンガポールを訪れる日本人に関係するビザは下記の6種類です。可能性が高いものを抜粋しています。

① 観光ビザ

名前の通り観光客を対象にしたビザ。日本のパスポートを所持している人であれば、基本的に新たに取得する必要はありません。ただし、パスポートの残存期間が6カ月以上でなければなりません。観光ビザがあれば、シンガポール国内に30日間まで滞在が許可されます。このビザで働くことは認められておりません。

② 就労ビザ

シンガポールで働くために必要なビザで、日本人が取得するケースが多い就労ビザは以下の通りです。


・エンプロイメントパス(Employment Pass=EP)
・エスパス(Spass=SP)
・Personalized Employment Pass(PEP)
・起業家ビザ(Entre Pass)
・ワークホリデー(Work Holiday Programme)
・Training Employment Pass


これ以外にも、外国人メイドや港湾労働者などに発給されるワークパーミット(Work Permit=WP)や高度技術者向けのテックパス(Tech Pass)などがありますが、今回の記事では説明を割愛します。

③ 配偶者ビザ(Dependent Pass=DP)

EPやSpassといった就労ビザを保持している労働者の配偶者及び21歳以下の未婚で法律上の子どもに対して発行されます。

ただし、就労ビザ(EPやDP)保持者の月額給与が6,000ドル以上でなければ、DPは発行されません。

有効期限は最長2年間で更新もできますが、就労ビザ(EPやDP)保持者に紐づくため、EPやSpassが失効すると直ちにDPも失効します。

④ 学生ビザ(Student Pass)

シンガポールにある全日制の学校に入学する生徒が申請できるビザです。ただし学生ビザを発行することが認められているのは政府が認定した学校に限定されるので、詳細は入学を希望する学校に問い合わせを。

⑤ 永住権(Permanent Residence=PR)

原則としてシンガポールに無期限で滞在することができ、さらに就労に際しても別途ビザを取得する必要がなく、自由にできます。

PRを取得するためには政府機関に必要書類を整えて申請。審査を経て政府機関が承認すると晴れて付与されるという形です。

PRを申請できる条件

・シンガポール国民または永住権(PR)保持者の配偶者または21歳以下の子供
・シンガポール国民の両親
・就労ビザの保持者
・投資家

となっています。

申請したら必ず取得できるというものではなく、むしろ近年ではシンガポール国民やPRとの結婚以外で、日本人がPRを取得するのが難しくなっているといわれています。

⑥ 長期滞在ビザ(Long Term Visit Pass=LTVP)

長期滞在ビザを取得できる可能性があるのは、


・シンガポール国民もしくは永住権(PR)保持者の配偶者
・シンガポール国民もしくは永住権(PR)保持者の両親
・大学や大学院の学生で就職活動をする人
・学生ビザ保持者の母親もしくは祖母(父親と祖父が可能かどうかの記載はなし)
・シンガポールで子どもを産もうをしている女性
・月額給与が12,000ドル以上のEPやSpass保持者の両親、内縁の妻、継子、障害のある子ども


最長2年間の滞在が許可されるビザ。LOC(Letter of Concent)という書類を企業に発行してもらえれば、就労も可能。


就労ビザの詳細

シンガポールで働こうと考えている人にとって、もっとも気になる就労ビザ。シンガポール政府はここ数年、EPの発給基準を引き上げており、外国人がシンガポールで働くことが以前よりも難しくなっています。

EP(Employment Pass)

専門職や経営層、管理職を対象に発行される就労ビザ。日本からの駐在員の多くが、このEPを取得してシンガポールに赴任する。有効期間は初回は2年間、更新の場合は3年間。

EPには最低月額給与の基準が設定されており、国籍や年齢、学歴などによってその基準額が異なります。シンガポール政府は2020年にEPの取得に必要な最低月額給与を4500ドル(金融関係は5000ドル以上)と設定しています。

ただし、配偶者や21歳以下の子どもをシンガポールに連れてくれるには、6000ドル以上の月給が必要。

Spass

中技能熟練労働者に発給される就労ビザ。雇用しているシンガポール人やPRの人数に応じて、政府から企業にSpassの発行枠が付与されます。いわば、シンガポール人やPRを多く雇っていることに対する恩恵という位置付けとも言えます。そのため外国人ばかり採用している企業や小規模な事業所では、Spassを申請することができません。

有効期限は初回、更新時ともに2年間。Spassにも最低月給が定められており、月額2500ドル以上です。さらに、企業はSpassの従業員を雇用した場合、Levy(外国人雇用税)を支払わなければなりません。Spassが発給されたその日から停止・失効する日まで支払い義務が生じます。

Spassであっても、月額給与が6000ドル以上ならば、配偶者や21歳以下の子どもをシンガポールに帯同できます。

ビザ発給に必要な月給計算ツール
シンガポール人材開発省(MOM)は、 応募者自身で学歴や職歴、国籍など入力すると、EPやSパスの発給に必要な月額給与を計算できるツールSAT(Self-Assessment Tool)を提供しています。

SAT(Self-Assessment Tool)英文

Personalized Employment Pass(PEP)

月額固定給料が12,000ドル以上のEPパス所持者、もしくはシンガポール国外に在住で、過去半年間の月額固定給料が18,000ドル以上の高額所得者が申請できるビザです。有効期間は3年間で、延長不可。PEPを所持していれば、就労ビザがなく就労でき、さらに最大6カ月間は無職であってもシンガポールに滞在することができます。

配偶者や21歳以下の子ども、さらに両親をシンガポールに帯同できます。

詳細はこちらから(英文)

ワークホリデー(Work Holiday Programme)

4年生大学に在学中もしくは卒業生で、18歳から25歳までが対象。有効期限は6カ月で更新は不可。シンガポールのワーキングホリデーには学歴制限も設けられており、日本やオーストラリア、フランス、アメリカ、イギリスなどの有力大学の在学者、卒業生に限られます。

詳細はこちらから(英文)

⑤ Training Employment Pass(TEP)

同じグループ企業内の研修などでシンガポールに派遣する場合に取得できるビザ。シンガポールに現地法人がある場合に限り可能となる。有効期限は3カ月で、延長は不可。最低月額給与は3000ドル。

※起業家ビザ(Entre Pass)についての説明は割愛いたします。


申請するのは雇用主

EPやSpassといった就労ビザの申請を行うのは、雇用先(内定先)の企業です。ビザ取得者(=労働者)は雇用先企業と書類のやり取りを行うことになります。

必要書類

・英文の最終学歴証明書
・パスポート


さらに申請料です。内定先企業が負担するケースが多いですが、対応は企業によってまちまちです。


ビザを受け取るまでの流れ

ここではEPの場合の申請から受け取りまでの流れを記載します。申請作業をするのは内定先企業なので、ここでは流れだけ簡単に記載いたします。

① MOMのウェブサイトにアクセスして申請作業
② IPAレターの発行

申請したEPが承認されると、In-Principle Approval (IPA) レターと呼ばれる書類が発行されます。いわば仮ビザのようなもので、EPを受け取る際に必要となります。

IPAレターの有効期限は、EPでは6カ月、Spassでは60日間です。

ここまでは就労者がシンガポール国外にいても手続きできますが、これ以降の手続きはシンガポールに入国していなければなりません。

③ 仮ビザの発行

就労者がシンガポールに入国してから、企業はMOMのウェブサイトで、申請者のパスポート情報や滞在先住所、入国カードのコピーなどを申請します。すると、仮ビザとも言えるNotification Letterが発行されます。

Notification Letterの有効期限は1カ月。この間に正式なEPを受領しなければなりません。

④ 写真撮影と指紋の登録

シンガポールの就労ビザには、所持者の顔写真と指紋が載ります。その指紋と顔写真を政府機関に出向いて撮影しなければなりません。

登録場所

<Employment Pass Services Centre(EPSC)>
住所:The Riverwalk 20 Upper Circular Road, #04-01/02 Singapore 058416
ウェブサイトhttps://www.mom.gov.sg/contact-us/locations#Tab-EP

完全予約制となっており、訪問日をウェブサイトで予約する必要があります。



必要書類

・申請者のパスポート
・予約確認書(Appointment letter)
・通知レター(Notification Letter)
・PAと通知レターに記載のある書類


⑤ 受け取り

写真撮影と指紋の登録場所でEPが発行されることはありません。登録からおよそ2週間以内に、指定した住所へ郵送されます。受取人は2〜3人を指定することができ、受け渡しの際は身分証を見せるという厳格な方法で行われます。

こうして就労ビザの発行手続きは完了します。


ビザの申請から受け取りまで煩雑な手続きが待ち構えています。それもそのはず。シンガポール政府にとってみれば日本人は外国人労働者なので、管理を厳しくする必要があるのでしょう。

ビザを受け取ったからといって安心できるかと言えば、そうではありません。法律を違反するなどした場合には、EPを剥奪されるという可能性もあるので、しっかりした振る舞いが求められます。





この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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