日本クオリティのいちごを東南アジアでも ゼロからの栽培、販路開拓

ちとせいちご

美味しい日本のいちごを東南アジアでも。こんな思いでいちご栽培を始めたバイオベンチャー企業CHITOSEグループ

シンガポールにある日本人パティシエの洋菓子店で使われる真っ赤ないちご。鮮やかな赤色は私たちをわくわくさせ、そして一口かじれば甘さが口いっぱいに広がります。実はこのいちご、マレーシアで作られていることをご存知でしょうか。美味しい日本のいちごを東南アジアでもー。こんな思いでいちご栽培を始めたバイオベンチャー企業CHITOSEグループの小池亮介GMに聞きました。

小池亮介GM

SingaLife編集部
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いちごを作ろうと思ったきっかけを教えてください

僕はいちごが大好きで、日本のいちごは世界一美味しいと思っています。過去にマレーシアのボルネオ島に駐在していましたが、もちろんいちごを食べられるような環境ではなく、ずっと食べたいな、と思って過ごしていました。
あるときボルネオ島でいちごを作っている日本人の話を聞きつけ、実際にお会いしてその人が作ったいちごを食べてみると、日本のものと遜色ない美味しさで感激しました。東南アジアでも美味しいいちごを作れるんだということを実感して、このクオリティのいちごならきっと売れるだろうと考えて社内に提案、承認されたのでいちごの栽培を始めました。2013年のことですね。

SingaLife編集部
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いちごの事業で苦労された点はどこでしょうか

日本からマレーシアにいちごの種苗を持ち込むときの検疫に途方も無い時間がかかりました。いちごの苗はもともとマレーシアにはないので、細菌の検査や苗の栽培方法などに問題がないということを証明する手続きが難航し、マレーシア政府からOKが出るまでに14カ月もかかりました。これは想定外でしたね。2014年に栽培を始めようとしたものの、実際に収穫できたのは2016年です。
いまは、キャメロンハイランドというシンガポールとクアラルンプールの中間点にある標高約1400mの高地でハウス栽培を行っています。

いちご栽培

SingaLife編集部
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販路の拡大もゼロからでしょうか

そうです。いくら美味しいいちごを作っても食べてくれる人がいないと事業になりません。レストランやホテルに対して売り込みをしましたが、当然実績がないのでなかなか取り扱ってくれません。根気よく質の良さをアピールして、ようやく取り扱ってくれるという状況で、その繰り返しです。
また、ショッピングセンターに来るお客さんにいちごの食べ比べをしてもらって、どんな味のいちごが好みなのかをモニター調査もしました。すこしでも酸味があるとこちらの人は敬遠してしまうということが分かりました。
あと、苦労したのは物流です。日本のように整った物流網はなくいちごを痛まないように届けるためにはどうしたらいいのかを物流会社と交渉を重ねます。いまは週に3回、トラックでキャメロンハイランドから届けられるようになっています。

SingaLife編集部
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もともとはどのような企業なのでしょうか

神奈川県川崎市に研究拠点があるバイオベンチャーです。微生物や藻類を培養する技術で食品やエナルギーなどの領域で新たな価値を生み出すことを目指しています。今回のいちご生産でも、苗を培養する場面などで本業の技術を生かすことができました。CHITOSEは千年先を見据えた事業を、という意味が由来になっており、よく勘違いされますが北海道の千歳エリアとは関係ありません。

SingaLife編集部
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CHITOSEならではのこだわりはありますか

直接食べる分には大きさをそこまで揃える必要はありませんが、例えば洋菓子店が使う場合は、サイズが大きすぎるとかえってケーキをデコレーションする際に使いづらくなってしまいます。そのため、小さめのサイズで揃えてほしいという要望も受けます。収穫してサイズごとに仕分けしてといった対応を取れるのも近場で栽培しているからだと思います

SingaLife編集部
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どんなビジョンをお持ちでしょうか

持続可能な農業を東南アジアで確立できるようなればと考えています。東南アジアの農業は残念ながら化学肥料や農薬を多く使っているケースが多く、その方法だと農地がどんどんやせ細ってしまいます。日本の高い農業技術と弊社のバイオ技術、さらにいちご栽培で得た経験を駆使して、環境にやさしく持続可能な農業をマレーシア以外でも展開できるようになればと思っています。

SingaLife編集部
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シンガポールではどこで購入できるのでしょうか

小売では伊勢丹や明治屋で販売させてもらっております。そのほかラッフルズホテルやPantler、FLORといったパティスリーでも弊社のいちごをお使いいただいております。ぜひお召し上がり下さい。

この記事を書いた人

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