シンガポールの街で、スーパーのカートが放置される問題はどう解決できる?

シンガポールの道路脇に放置されるショッピングカート

シンガポールの街を歩いていると、時々スーパーマーケットのカートが道路脇に放置されている光景に出会うことはありませんか?これはスーパーにとっても、近隣住民にとっても深刻な問題で、これまで様々な取り組みがなされてきましたが、いまだに解決していません。どうしたら解決できるのでしょうか

シンガポール東北部Sengkang地区のRivervale Crescentの道路沿いでは、近くにあるスーパー・FairPriceのカートが毎日放置されているそうです。
FairpPriceはシンガポール最大のスーパーマーケットですが、放置されたカートに関して2020年の1年間でおよそ3,300件の報告が寄せられたということです。

2015年には1年間で約1,000台のカートがなくなり放置されたカートの回収や交換、修理するための人件費として15万シンガポールドル以上のコストがかかったとプレスリリースで発表。これは1日3台のカートがなくなっている計算となり、2010年と比較するとほぼ20%の増加で、「カート放置問題」は簡単には解決できない状況です。

他の国の状況はどうなっている?

放置カートの問題は、オーストラリアやイギリスでも深刻にとらえられてるようです。オーストラリアでは、大手スーパーのColesが2015年、電子ホイールロックシステムを導入。これはカートがスーパーの外に出されそうになると、車輪をロックして動けなくするというものです。しかし、このシステムはスーパーのレイアウトによって設置が難しいケースもあり、全てのスーパーへの導入にはいたっていません。

イギリスでは2013年、放置されたカートを追跡できるアプリ「Trolleywise」が誕生。このアプリでは、放置カートを街で見かけた際に写真を取ると、GPSで位置情報とともに報告することができるといったもの。報告後は回収チームがカートを回収し、スーパーに返却します。

こうした解決方法は、シンガポールでも活用できるのでしょうか?FairPriceはこれまでに、電子ホイールロックシステムの導入や、カートの利用と引き換えにIDカードを回収するなどの方法を試みたそうですが、多大なコストがかかることと、システムをすり抜けて放置を続ける客がいたために断念。問題の本質的な解決には至っていません。

問題解決の糸口は「教育」

では、放置カートの問題はどうすれば解決できるのでしょうか?

行動学の専門家たちは、問題解決の糸口は「人々への教育」だと考えているようです。

テマセク・ポリテクニック応用行動社会科学センター長であるタン博士は「人々の善意に訴え、自身がカートを放置することでどれだけ他の人に迷惑をかけるのかについて教育すべきだ」と述べています。具体的には「スーパーマーケットのスタッフがカートの回収のために余分に働かねばならないこと、放置カートが住民や他の顧客に迷惑をかけることを自覚させるべき」と語ります。

また、FairPriceの広報担当者も「使用後は必ずカートを返却するよう、地域社会を巻き込んで教育・注意喚起することが放置カート問題への最善のアプローチである」と述べています。

ゴミのポイ捨ては罰金で禁止されており、ゴミひとつない(とされる)シンガポール。しかし一方で別の問題が発生しています。罰金ではない「教育」の形で、人々の意識を変えることはできるのでしょうか。


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この記事を書いた人

SingaLife編集部

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