【ブドウ品種と産地で、ワインの値段がほぼ決まる!?】 ワイン王国フランスワインの奥深さを学ぼう
こんにちは、シンガポール在住のワインエキスパート・豊田薫です。シンガポールの日本人向け週刊フリーマガジン「シンガライフ」誌面で連載しているこのワイン講座ですが、シンガポール政府による外出制限措置(サーキットブレーカー)の影響で、5月は誌面の発行をストップしました。
そのため今回は5月の4週間分をまとめて記事にいたしました。
今月のテーマは「フランスワインを学ぼう」です。
みなさんはフランスワインに対して、どのような印象をお持ちでしょうか?
“高い”とか“難しい”という印象を持つ方もいらっしゃると思います。実際、フランスワインを理解するには、ただ飲むだけではなく、ぶどうを生産している村の名前や畑の名前をある程度覚える必要があり、少しハードルは高いのかな、と思います。
(ワインエキスパートの試験でも、多く出題されます)
ただ、シンガポールではイタリアワインと同じぐらい様々な種類が手に入りやすいフランスワイン。また、ホームパーティの手土産として持参したときに、最も価格帯が分かりやすいワインでもあるので、学んで損はないと思います。
実は、仕事関係の上司がお客さんへの手土産で安めのフランスワイン買っていて「どうせ価格は分からないでしょう」と言っていました。残念ながら、フランスワインはある程度知識のある人ならば、ラベルを見ただけで大体の価格が簡単に想像ついてしまいます。
是非、この記事を読んでいただき、豆知識をつけて楽しんで飲めるようになりましょう。
ラベルの土地名で値段がほぼ決まる
写真はフランスのワインのラベルを接写したものです。1本はBourgonne(ブルゴーニュ)、もう1本にはGevrey Chambertin(ジュヴレシャンベルタン)と書かれているのがお分かりになりますでしょうか。
フランスワインは、ラベルに一番大きく書かれている土地名が最も重要です。土地名に応じて価格が決まっているといっても間違いではありません。基本的には、土地の指定範囲が狭くなればなるほど高級かつ格付が高いワインになります。
例えば、フランスにはワインの産地の一つにブルゴーニュという地域があります。
ブルゴーニュという地域名のワイン(Bourgonne)よりも、ブルゴーニュ地域にある村の一つであるジュヴレシャンベルタン(Gevrey Chambertin)という村名が付いたワインのほうが高価です。
さらに、ジュヴレシャンベルタンの中にある、シャンベルタンという畑名ワイン(Chambertin)はより高格付で高価となります。
地域→村→畑という順番で範囲が狭まるからです。
フランスにはワイン法という法律があり、「この土地で作られたブドウを使って作るワインは”XX”と名乗っていい」という内容が定められています。つまり、Chambertinという名のワインはChambertinという畑のブドウのみを使って作られたワインということになります。
そして実はこの法律、かなりしっかりしています。というのも、実際のテロワールをしっかりと反映したものになっていて、 Chambertinと名乗っているけれど、低格付のGevrey Chambertinのワインのほうが美味しいor高価格、ということは稀です。
その土地の素晴らしさをしっかりとワイン法上で格付として認めているんですね。(ちなみに、イタリアワインは土地だけでなく生産者もとても大事なので、そういった意味ではラベルからの読み取りが比較的難しいです。つまり、高級な土地で作られていても、安いor美味しくない場合があります。土地の区分がフランスに比べて曖昧・適当なんですね。)
ワインの味に影響を与える最大の要素は?
さてフランスワインとはどんなワイン?と考えるまえに、ワインの味わいに一番影響を与えるのは、以下のうちどれだと思いますか?
①ぶどう品種
②生産国
③年代
答えはなんとなく直感で分かると思いますが、①ぶどう品種です。
ではフランスワインの品種といえば何でしょうか?実は”フランスワイン”といってもエレガントでシルキーなピノノワール(黒ブドウ品種)から、しっかりと渋みとタンニンをかんじるカベルネソーヴィニオン(黒ブドウ品種)まで様々な品種のワインが作られています。
ですので、どんなワインが好き?と聞かれた時に、”フランスワイン!”と答えると、フランスワインの中のどんなワイン??と聞かれるでしょう。”フランス”といってもその国土面積は55万平方キロメートルもあり、日本よりも広く、そのため土地ごとに色々な種類のワインが作られているんですね。
フランスワインを学んでワインの主要品種を制覇しよう!
フランスワインを勉強する場合は、その土地ごとに、ワインを勉強していく必要があります。たくさんあるのか・・・とがっかりしないでくださいね。最低限知っておきたい地域は2つだけ。まずはそこから学んで行きましょう。
また、フランスワインのいいところは、フランスワインを学ぶと、一般的に言われているワインのメイン品種(赤3種、白3種)をすべて制覇できること。
イタリアワインから始めるとなかなか大変ですよ。その土地その土地の独特の品種ばかりで、飲んでも飲んでもなかなか制覇できません。今回はフランスワインの勉強を通じて、ワインのメイン品種を押さえたいなと思います。
その特徴を押さえれば、おのずと自分の好きなワインも明確になってきますよ。
世界最高峰のワイン産地の一つ「ブルゴーニュ」
ブルゴーニュは、フランスのワイン名産地の一つであり、パリから電車で1時間半の距離にあります。頑張れば、パリから日帰りでも行けるので、観光地としても人気です。
みなさんも聞いたことあると思われる超高級ワイン「ロマネ・コンティ」もブルゴーニュにある畑の名前で、ピノノワールから作られるワインです。上の写真はそのロマネコンティの畑です。
せっかくなので、地図で場所を確認してくださいね。グーグルマップでOKです。
ワインの味わいを決定づけるテロワールの一つに”気候”があります。その土地の
・緯度・標高
・海沿いか内陸か
・南向きかどうか
などで気候が変わります。ただ覚えるだけだと苦痛になるので、理解しながら進めると楽しめます。
ブルゴーニュはパリより少し南側にあるものの、緯度が高く冷涼で内陸なので、乾燥している地域となります。ワインが作れる緯度はおおよそ30~50度と言われているので、47度のブルゴーニュがワイン生産の場所としては寒い地域だってことが分かりますよね。
「悪魔が作った品種、ピノノワール」
そんな寒い地域に最適なのが、ピノノワール(黒ブドウ品種)です。
「神がカベルネソーヴィニヨンを作り、悪魔がピノノワールを作った」
と言われるほど、とても魅力がありつつも、病気に弱く早熟で、育てるのが難解で生産者を困らせる高級品種です。
遺伝子が不安定のため変種しやすいのも特徴で、長らくピノノワールはブルゴーニュでしか作れないとされていました。(上記の写真は夏に撮影したものなので、まだ紫色になっていません)
色は淡いルビーで華やかな香りが特徴
ピノノワールの特徴は、やや淡いルビー色。香りは華やかで、イチゴ、ラズベリーのような赤系果実の香りに始まり、木樽からくる、なめし皮、ナツメグ、シナモンの香りが広がります。
味わいはしっかりとした酸味と果実味。タンニンは控えめで流れるような印象のワインです。ピノノワールは、アメリカやニュージーランドでも作られていますが、この複雑な香りを出せるのは、やはりブルゴーニュくらいでしょう。
ブルゴーニュのピノノワールは日本人からもかなり愛されています。その理由として、小梅のような香りがして日本人に馴染みやすいから、ということを言う人もいます。
ボトルの形も全て統一
ブルゴーニュワインは、実はボトルの形も独特です。ワインボトルには、いかり肩のボトルとなで肩のボトルがあるのは何となくご存知でしょうか。実はブルゴーニュワインは全てなで肩のボトルで、この形を「ブルゴーニュ型」というくらいです。
もう一つのボトルは、「ボルドー型」といいます。ボルドーもフランスの地域の名前ですが、また次回以降で勉強しましょう。アメリカやニュージーランドなど、いまや世界中でピノノワールは作られていますが、ピノノワールの場合はなで肩ボトルを使うのが一般的になっています。
ピノノワール専用グラスも
また、ブルゴーニュワインに合わせるグラスの形も独特です。ブルゴーニュ型と言われるワイングラスは、チューリップ型だったり、口の部分が狭くなっていたりします。これは、ピノノワールの高い酸味を抑えるために、飲んだ時に舌の上でワインが広がらず、流れるように飲めるようにするためです。
口の部分が狭いと、飲むときに頭を傾けますよね?そうすると速く舌の上を流れるという仕組みです。・・・とはいえ、この美味しいピノノワール、味わいたいので舌の上に置いてしまいますが。
白ワインの代表格「シャルドネ」
さて、ブルゴーニュで生産されるぶどうのもう一つは、シャルドネ(白ブドウ品種)です。シャルドネは白ブドウの中では珍しく木樽を使って製造するワインです。白ワインは、フレッシュさや果実味を活かすため、ステンレスタンクを使って可能な限り空気に触れさせずに製造することが一般的です。ただ、このシャルドネという品種は、木樽を使うことが多々あります。ブルゴーニュのシャルドネも一般的なものは木樽を使っています。そのため、色は少し黄金色がかっています。
また、香りは洋ナシ・黄桃のような少し熟した果実に、木樽からくるトースト香やヨーグルトのような香りがプラスされ複雑。味わいは、酸味を感じつつも、樽からくる苦みによってまろやかに口の中に広がります。木樽を使いすぎると、シャルドネの特徴であるミネラルさが消えてしまうのですが、ブルゴーニュのシャルドネは、このバランスが素晴らしいのが特徴。
漫画「神の雫」でも、モンラッシェという高級ブルゴーニュのシャルドネを、高くそびえ立つ雪山のマッターホルンとたとえていました。シャルドネのミネラル感の大切さが何となく伝わりますよね。
シンガポールでブルゴーニュを買うならこれ
シンガポールでも買えるブルゴーニュワインのおすすめをご紹介します。
1つ目は、Oaks cellarのオンラインショップで買える”Collection Bellenum Gevrey Chambertin 2000”(サーキットブレーカー以降セールをしていて、通常$135のところが$108)
商品の詳細はこちらのページから。
今回取り上げたのは、2000年のジュヴレシャンベルタン。ブルゴーニュピノノワール飲み頃の熟成期間は30年とも言われますが、それは一部の超高級ワイン。
古くても10年~20年程度がいいかなと思います。こちらのワインは、20年ものでしたが、手頃に買えたので買ってみました。飲んでみると、まだまだ果実味と酸味のフレッシュさが残っていて、さらに熟成からくる、きのこや湿った土、枯葉の香りが広がります。
飲むとまろやかな酸味に、後味にキャラメルのような香ばしさを感じ、とても美味しかったです。是非、ラムチョップなどしっかりとしたお肉料理に合わせてみてください。
2つ目は、Bouchard Pere & Fils Pouilly-Fuisse 2017 のシャルドネです。
商品の詳細はこちらのページから。
1855のオンラインショップで購入可能です。このPouilly-Fuisse(ピュイイ‐フュッセ)は、ブルゴーニュの最高級地帯よりも南にあるマコネ地区にあります。少し南にあるので、いわゆるブルゴーニュのミネラル感を残したシャルドネよりも、もう少しこってりした印象のワインとなります。
ブルゴーニュの最高級地帯のシャルドネはやはり$70以上してしまうので、手頃に飲みたい場合は、この地区のシャルドネをお勧めします。樽の香りもしっかり感じられて、白身魚のムニエルにぴったりのワインですよ。
過去の連載はこちらから
Vol.4「外出制限期間中だからこそ。特価で希少なワインを購入」
Vol.3「街中にあるワインショップとその特徴」
Vol.2「ワインに関する資格あれこれ」
Vol.1「シンガポールのワイン事情」
慶応義塾大学卒業後、外資系コンサルティングファーム勤務。2018年にワインエキスパート取得。2019年4月に夫とともに渡星。シンガポールでは毎月ワイン勉強会をボランティアで開催。その傍ら、ワインバー勤務など多方面での活動を展開中。33歳。好きなワインは、華やかかつスケールの大きさを感じるカリフォルニアのピノノワール。
この記事を書いた人
SingaLife編集部
シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!