ソムリエコラム Vol.2 ~そのお酒は本当に辛口?~
家飲みもいいですが、日本酒はやっぱりお店で飲みたいですね。私の周りには辛口派が断然多いのですが、でもそれって実はワインの世界では甘い方かもしれません。
私たちの舌は甘味・酸味・辛味・苦味・塩味・旨味を認識するとされていますが、この場合の辛味はSpicyの辛さであり、お酒の辛口とは意味が異なります。じゃぁ辛口って何を指しているんでしょうか。
例えばワインで言うDry、これは“ワイン中に糖はほぼ残っていませんよ”と言う意味になり、含まれる糖はおよそ2g/ℓ未満。普段皆さんが飲まれるワインは概ねDryのワインにあたるはずです。このDryさを意識してみると面白いと思います。“いやいや甘いよ”と感じるという方もいるかもしれませんが、そのほとんどはアルコールの持つ甘味や甘い香りからくる勘違いの場合が多いです。
日本酒を購入する時、ラベルやメニューに記載されている日本酒度を目安にされる方も多いと思います。これは+は辛口・-は甘口として数字で表し、数字が大きいほど度合いも大きくなるというものですが、これが逆に皆さんを混乱させてしまっています。
例えば日本酒度+4だと辛口になるはずですよね?ところが含まれている糖だけに着目すると、平均してワインではちょい甘(Off-dry)とされる大体17g/ℓ程度含まれていると言われます。ここに細かい要素が絡むため単純に“甘~い!”とはならないのですが、数字だけ見ると驚いてしまいます。
このようにワインよりも遥かに複雑な日本酒の甘辛は数値で表すことが難しく、日本酒度はただの目安にしかなりません。お店で注文するときは暗に数字にとらわれず、お店の方に相談してみましょう。
だだ辛口と言わずに、“フルーツの香りが好き”“飲んだ後口に残らないやつ”など少し我儘になってみて下さい。その方が私たちも皆さんの好みを知ることが出来ます。
体型の為に私も気にしている糖ですが、勉強や仕事で良い結果を出すのには不可欠です。お子様には節度を持って純黒糖など質の良い糖を、大人は飲み過ぎない程度に日本酒を摂り、ストレスのない生活を送りましょう!
Sake Tasting
富翁 吟の司
純米大吟醸・日本酒度+4
今回は灘の男酒・伏見の女酒とも謳われる、京都府伏見のお酒です。
さてさて日本酒度+4は本当に甘いのか?ということでこちらを選んでみました。
ちなみに日本酒も試飲の時にはワイングラスを使用します。最近では日本酒鑑評会や試験ではワイングラスがよく使用されるのですが、その理由は、ワイングラスの方が香りをより捉えられるからです。
グラスメーカーからも日本酒専用のグラスが発売されていますが、まるでワイングラスのようです。
外観:
濁りのない透明で、ほんのり黄色味を帯びているように見えますが、我が家のライトのせいかもしれません…。
香り:
香りの強弱は中程度で、グラスからふわっと可愛らしい香りが立ち昇ってきます。いわゆる吟醸香と呼ばれるバナナや赤いリンゴに加え、ローズマリーの刺激的な香りや米粉のような砕いたお米感などが混じりますが、比較的シンプルかなという印象です。
味:
とても柔らかい女性的なお酒です。
期待通りOff-dry(ワインで言うちょい甘)と感じられるのですが、中程度の酸味とバランスが取れている為、冷たい温度だと甘いと感じられにくいです。
旨味は弱めですが、ゆっくりと口の中で広がりを見せます。甘みと酸味が程よくまとまる、とても華奢で繊細な味わいです。余韻も中程度と、全体的に軽めな印象です。
総評:
アルコールも14%と日本酒にしては比較的低めの為、どうしても軽く感じられてしまいますが、甘みと酸味のバランスの良さとほのかに広がる旨味で全体的にギュッと小さくまとめ上げられ、飲み飽きない造りになっていますね。
推奨温度は8℃~12℃といったところ。このようなタイプはシンプルなお料理がよいです。
ヒラメの昆布〆、イカソーメン、故郷の料理だと氷頭(ひず)なますなんかと一緒に飲みたいです。ヒンヤリとルイベもありかも。
京都のお酒なのに故郷の味が恋しくなってきました…
お酒って不思議ですね。
次回はプロのワインテイスティングに焦点を当ててみたいと思います。
< プロフィール >
渋谷 大輔
Daisuke Shibuya
<略歴>
北海道札幌市出身。現在、Suntory F&B Internationalが展開するSUN with MOON Japanese Dining & Caféと串カツ田中でシニアマネージャーを務める。
2020年には インターナショナルワインチャレンジ酒部門 准審査員に抜擢。
<ワイン資格等>
Certified Sommelier by Court of Master Sommelier
WSET Advanced Certified in Wine
インターナショナルワインチャレンジ酒部門 准審査員
WSET Advanced Certified in Sake
<受賞歴>
2019年 シンガポール – フランスワイン ベストソムリエコンクール優勝/アジア大会シンガポール代表
2019年 シンガポール – アメリカワイン ベストソムリエコンクール優勝
この記事を書いた人
SingaLife編集部
シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!