【歯科医直伝】シンガポールで虫歯知らずの健康な歯をキープする秘訣は?

虫歯を防ぐ為、または白さをキープする為、あなたはどんなことに注意しているだろうか? 色々気を付けている人も多いと思うが、自分が「正しい」と思っていることが実は間違っているケースも多々ある。 今回は、シンガポールの歯科医院「Healthway Japanese Dental」の山本能康(たかやす)医師に「知っているようで知らない、もしくは勘違いしがちな歯のケア方法」などについて聞いた。

超ベーシックな話題から伺います。虫歯を防ぐ基本は歯磨きですよね。ランチ後も含め、最低1日3回磨くべきですかね?

最低限、朝と夜しっかり磨けていればOKですよ。しっかり磨けてさえいれば、回数自体はさほど問題ではないです。例えば、寝る前なら、磨いた後にフロスをするのはお勧めです。歯と歯の間の汚れもしっかり取ってあげましょう。

また日中は唾液がでているので、汚れなどもある程度流れるんです。問題は寝ている時。睡眠中に口が開いている方、結構いますよね。つまり口呼吸の人が多いのですが、こういう方は口の中が乾きやすくなる。そうすると、ある程度磨いていても口の中が乾燥しているから、歯の汚れが乾燥してくっつきやすくなるんです。こうなると、普通に磨いていても、汚れが落ちにくく、虫歯の原因になる可能性が高まります。意識して鼻呼吸に変えましょう。

では、効果的な磨き方を教えて下さい。

(上でも触れましたが)口内の乾燥が良くないので、口内は常に唾液が豊富な状態にしておくことが大事です。唾液を出すためには、頬の裏側もブラシでマッサージしてあげましょう。柔らかめのブラシを使って強すぎない適度な刺激を与えてあげることが重要です。刺激して唾液を出しやすい環境を作りましょう。

歯と歯茎の際に磨き残しが多いんですね。小さめの歯ブラシを使って歯と歯茎の間も入念に磨きましょう。奥歯の頬側にも磨き残しが多くなりがちなので、ここも意識して磨くようにしましょう。

「食べるもののチョイスも重要ですよね」?子育て中の方は、子供の歯の健康についても考えないといけないですよね。

食べ物の影響は非常に大きいですよ。基本的な話ですが、砂糖を含むものは出来る限り避けましょう。本来は3歳までは一切(砂糖を含むものを)あげないのが理想的ではあります。家庭内ではあげないような習慣を作る、もし食べたらすぐ歯磨きするなど、できるだけ砂糖を取らない、もしくは時間をあけず、綺麗にする工夫を習慣にしてしまうといいかもしれませんね。

また、お子さんが小さい時から柔らかいものしかあげない方が多いのも気になります。柔らかいものばかり食べていると、口の周りの筋肉が発達しないので、筋肉を使っていない子が多い。乳児の頃から、母親のおっぱいをしっかり吸わせる、硬いものも少しづつ食べさせていくなどして、口の筋肉を上達させましょう。歯並びも悪くなってしまうので、柔らかいものばかり食べさせる影響は実は思っているよりも大きいんです。

歯並びの矯正で来られる大人の方も多いですが、矯正を始めるなら年齢は低いほどベターです。お子さんで言えば、小学3、4年生から始めるのがいいでしょう

私はホワイトニングを定期的にしていますが、白さを持続させるのにベストな習慣などありますか?

お茶、コーヒー、赤ワイン、カレーなど濃い色のものを摂取すると、歯に着色しやすいというのはあるし、摂取したらすぐに歯磨きすると良いなどの情報もありますが、これらの摂取を避けたり、取ったらすぐに歯磨きというのは、あまり現実的ではないと思います。

それよりも規則正しい食生活や習慣を送ることが大事です。例えば、喫煙や寝る前に歯を磨かない、などは明らかに歯に良くないので、健康的な生活習慣を崩さないように心がけましょう。

またカレーなどを普通に摂取しても、着色しにくい人もいます。実は、ここにも呼吸法が関わってくるんですね。口の中が乾燥すると、歯の着色もより一層進みやすくなってしまいます。鼻呼吸にすると、口内の乾燥が防げて、同時に歯の表面の着色も防ぐことができます。一見、呼吸と歯は無関係に思えるかもしれませんが、呼吸法は、歯の健康や美しさを保つのに非常に重要なのです。

ホワイトニング用の歯みがき粉には効果がありますか?

ドラッグストアなどに置いてある歯みがき粉で効果をうたっているものは、粒子が荒かったり、歯の表面が削れやすい(削って歯を白く見せているだけ)ので、気を付けた方がいいでしょう。
強いて言えば、アパガードは良いですよ。研磨剤の粒子が細かいので、粒子が入り込んで歯の表面をツルツルにしてくれます。「高価なら良質」とは言い切れませんが、歯みがき粉については、その傾向はあります

ただホワイトニングの効果を追求するなら、ドラッグストアよりは、専門店などで良質なものを選ぶことをお勧めします。今はネットでも効果が高い商品は沢山扱っているので、ネットでチェックして購入するのもありですね。

ホワイトニングには興味ないけど、歯の着色に関しては気になるという方もいると思うのですが、着色しやすくなってしまう生活習慣や、逆に歯の美容と健康の為に取り入れるべき習慣などはありますか?

コロナの影響で、マスクをすることが当たり前になっていますよね。マスクをしないときは鼻で呼吸をしていたのが、マスクをすることによって口で息をする機会が以前よりも増えています。先ほども触れたように、口で呼吸をするということは歯の表面の汚れが乾燥しがちになります。

また、コーヒーなど着色性の飲み物を飲んだりタバコを吸う習慣があったりすると、歯の表面が黒く着色することがあります。着色が気になる場合、なるべく歯を黒ずませる習慣を減らすことが重要です。

シンガポールは水道の中にフッ素が含まれており、虫歯予防の観点で言えばプラスです。日ごろから水道水を使っての歯磨きや料理に使用するなどして、ある程度口の中にフッ素を取り込んでいる機会が多いので、それだけで(日本に居るのと比べて)虫歯予防になっていると言えるでしょう。しかし、先にお話したように、もちろん砂糖は控えることが重要です。

なるほど。他にも歯科医師の観点から、シンガポールと日本との違いはありますか?

シンガポールは、日本のように歯の神経の保存をあまり積極的には考えず、割と容易にとってしまう傾向がある印象を受けます。実際、知り合いから「他の歯科医師に神経をとることを勧められたが、この状況で神経を取る必要が本当にありますか」と相談されるケースがあります。

虫歯が進んでつらい症状があるなら仕方ない場合もありますが、基本的にはまず薬を入れて様子を見ます。それでも治らなければ神経を取る必要があるかもしれませんが、セカンドオピニオンを検討する方がいいでしょう。というのも、歯の神経の治療は複雑で、レントゲンではうまくできているように見えても、後々痛みが出る場合もあるので、明らかに症状があるという場合以外、はなるべく避けたほうが良いでしょう。

また詰め物からかぶせ物にする必要があると勧められる場合もありますが、これも一旦検討することをお勧めします。かぶせることできれいに見えたりしてプラス面もある場合もありますが長い目で見た場合に歯にとってよくない場合もあるので、他の先生に相談されて見るのも良いかもしれません。

「歯のために」山本さんがしないようにしているマイルールはありますか?

基本的に甘いものをとらないようにしています。後、フロスは必ずしていますね。お子さんの虫歯対策のところでもお話しましたが、お菓子(砂糖)の影響は明らかに大きいんです。もし食べるなら、食べた時にお茶飲んで砂糖を流すようにする。間違っても甘い飲み物と組み合わせないなど、できるだけ口内に甘いものを残さないことが重要です。

後は、だらだら食べないようにも心掛けています。仕事しながらとか、テレビ見ながら、何かをつまむ方もいらっしゃるかもしれませんが、「ながら食べ」をすると、唾液が中性から酸性に変わりやすくなります。酸性は歯を溶かすので、虫歯になりやすくなるんですね。甘いものでなくても、何となく食べ続ける習慣はやめた方が良いですよ。

ところで山本さんは、シンガポール生活が長いんですよね?

はい。日本では神戸でデンタルクリニックをやっていましたが、縁あって来星し、今年で11年目です。当初は英語が分からなくて、特に材料の仕入れでは苦労しました。材料も自身で全て決めて揃えたのですが、マーケットが小さいので、自分の希望の商品が入手できなかったし、日本で開業するのに比べて大変なことだらけでした。

2年目から慣れてきて、やりやすくなってきました。仕事の面白みは、短時間で沢山の患者を診ないといけない日本に比べて、患者さん個々の希望にそって、ゆったり治療を提供できる点が良いと思います

読者に一言☆

シンガポールは医療費が高いので、来院を後回しにされがちな方もおられるかもしれませんが、結果的に早めに処置した方が安く済みます。今は中々国外に行きにくいので、もし気になる点があれば、デンタルクリニックも「次回の一時帰国で」と後回しにせずに、早目の来院をお勧め致します。日頃から意識して、歯の健康維持に努めて下さいね。

山本能康(たかやす)さん:兵庫県神戸市生まれ
2010年12月に神戸より来星、日本人に特化したクリニックに勤務する傍ら語学向上のため自ら飛び込みでヨーロッパ人のサッカーチームに入って語学力アップと文化交流を図る。
医療に関して日本とローカルでの考え方の違いに驚きを感じながら、歯をできるだけ保存、健康保険適応の範囲での治療、子供に安心して治療を受けてもらえることを心掛けて現在に至る。
クリニックはビジネス街の中心タンジョンパガーにありローカルスタッフとともに働いています。

この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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