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【知っているようで実はよく知らない!?】J.CLAIR Singaporeの活動に迫る☆所長に聞いた、ユニークな“新規取り組み”

「J.CLAIR」と聞いた時、あなたはどんなイメージを浮かべるだろうか?
「自治体と世界を繋ぐお仕事?」「地域事業を国際化させる?」など漠然としたイメージはあるが、“いまいちよく分からない”人も多いのではないだろうか。かく言う筆者も仕事で関わらせて頂く前は、実はよく分かっていなかった人間の一人だ。今回は、J.CLAIR Singaporeの天利和紀所長に、仕事の内容からユニークな新規活動内容の取り組みなどを聞いた。

Q:まずCLAIRの海外拠点は幾つあるんでしょうか?また、所長自身、海外経験は長いのですか?

自治体国際化協会(CLAIR)の海外拠点は7か所あり、そのうちシンガポール事務所では、シンガポールをはじめ、ASEAN諸国、インド、スリランカなど12か国を所管しています。

私は元々総務省出身で、東京・霞が関での勤務のほか、石川県・山口県・秋田県など地方勤務の経験はありますが、海外勤務経験は残念ながらありませんでした。地方自治体で勤務していても国際関係の業務に携わる機会があり、海外事業に興味があったので、希望して2年前にCLAIRに出向し、来星しました。

Q:ベーシックな質問ですが、J.CLAIR Singaporeの活動内容を詳しく教えて下さい。

シンプルに言うと、地方自治体、つまり都道府県や市町村が海外で活動をする際、それを様々な角度から幅広く支援しています。

1:物産販路開拓や観光インバウンドの支援
少子高齢化や人口減少が進む地方では、それぞれの地域の経済を活性化するために、海外での活動を増やしてきています。その中心となるのが、「物産の販路開拓」と「海外観光客の誘致」です。ASEAN地域は経済成長も著しいので、地方自治体からの注目が非常に高まっています。
日本の各地域では、農産物や工芸品など、その地域ならではの産品を売り込みたいところが多く、また、ASEAN地域では「日本の食」をはじめとした日本の産品へ関心が高まっているので、日本の各自治体は競って物産展に出展するなど、地域物産の販路開拓を進めています

観光インバウンドも重要な任務の一つです。「自分たちの地域に海外の方ももっと来てほしい」という希望も非常に多く、また、訪日旅行客のニーズも定番の東京・大阪だけでなく他の魅力ある地方にまで広がっています。地方自治体と一緒に、ASEAN各国で開催される「旅行博」に出展して、観光客の誘致や各地域の魅力のPRを行ったりしています。

2:自治体の行う国際交流や国際協力の活発化
地方自治体の行う国際交流や国際協力を支援する仕事もしています。日本でも海外でも、地方自治体は「環境」、「廃棄物処理」、「消防防災」、「教育」、「福祉」などの住民にとって身近な行政を行っています。こうした分野で、地方自治体の職員同士の意見交換や、技術協力の取り組みを支援しています。
例えば、日本の地方自治体の職員を海外の地方自治体に派遣して、廃棄物の処理や上下水道についての技術支援などの国際協力事業を行っています。また、昨年は、インドネシアの地方自治体の職員に向けたセミナーを開催して、近年両国で多発する災害時に地方自治体が果たすべき役割について、大災害を経験した日本の自治体の職員に講師として来ていただいて、意見交換を行いました。

3:JETプログラムを通じた国際交流の推進
海外の優秀な青年に日本に来てもらい、外国語指導助手や地域の国際交流の担当者として県庁や市役所などで勤務してもらう「JETプログラム」を通じた国際交流の取り組みも進めています。JETプログラムに参加した皆さんは、最大5年間、日本全国様々な地域で国際交流を進めていただいているだけでなく、それぞれの国に帰ってからも日本との懸け橋として活躍してくださっているんです。

Q:この“JETプログラム”参加者の皆さんとの連携にも力を入れているとか?

はい。JETプログラムの参加者は、元々“日本で働きたい”という強い意思のある優秀な方々なので、帰国してからも、日本を第二の故郷と思って、日本とかかわりのある活動を続けていきたいと考えている方がたくさんいらっしゃいます。こうしたOBやOGの皆さんとコラボした取り組みを進めています。

例えば、ジャパン・クリエイティブ・センターでの浴衣の魅力発信イベントや、「旅行博」での日本の各地域の観光PRの手伝いなどをしてもらっています。皆さん、日本が好きで来てくださっている方達なので、日本の知識や経験を生かして積極的に手伝ってくれ、力を発揮してくれています。
シンガポールだけでなく、フィリピン、インドネシア、インドにもJETAAというJETプログラム参加者の同窓会組織があり、それぞれの国で日本をPRするイベントなどに積極的に参加してくださっています

Q:因みに、シンガポールでは民間企業と組んでのイベントもよくされていますが、CLAIR(自治体)サイドと民間企業からの依頼、基本どちらが多いのでしょうか?

ケースバイケースですね。販路開拓を例にとると、地方自治体の側には、特産品を売り込みたいという希望があり、民間企業の側には、例えば日本の食材で売れるものを探しているという事情があります。双方からこうした話を聞くことがありますので、これらを結びつけるために、民間企業と連携した事業を実施して、地方自治体の参加を呼び掛けることもあります。

例えば、ABCクッキングスタジオと連携した料理イベントを行っています。料理体験を通じて日本の魅力を海外の方に知って頂くのが狙いです。各自治体がPRしたい食材を用意して、料理教室の参加者に自ら調理・試食してもらうことで、日本の食材の魅力を感じてもらい、新たな販路拡大や開拓を狙います。地域の観光情報もあわせて提供し、参加者からは「自分でも購入して自宅で調理したい」との問い合わせを多数いただきました。
シンガポールだけでなく、去年はマレーシアでも実施しました。今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響はありますが、少人数でも実施できるので、シンガポールとタイで実施することを予定しています。

我々としては地方自治体を応援するのが目的なので、民間と組んで地方自治体のアピールを出来る機会があれば、積極的に取り組んでいきたいと思っています。

Q:現状は規制が多く中々動きにくいかと思いますが、活動するにあたりどんな状況でしょうか?

今我々の事務所も在宅勤務がメインで、3交代で勤務しています。現段階では、シンガポール国内では多人数でのイベントを実施することができませんし、ASEAN各国等へ国境を越えた移動をすることができませんので、今年度予定していた事業も延期や中止を余儀なくされているものもあります。観光インバウンドも今は直ちに観光客に日本に来ていただける状況ではなく、厳しいです。こうした新型コロナウイルスによる制約はしばらく続くと考えられますし、いつまで続くのか予想することも難しいです。

なので、とにかく“今できること”をということで、オンラインで可能な活動、例えば地方自治体に向けた現地情報の発信などに努めながら、平常化した時に向けて準備している状況ですね。一方で、在宅勤務やオンラインの活用が進むなど、ピンチの中で新たな取り組みのヒントが生まれてきていることも感じています

Q:そんな中でも今後も積極的に取り組んでいきたいユニークなプランもあるそうですね?

近年地方自治体のニーズで特に高いのはやはり「観光インバウンド」です。このため、様々な角度から日本の地域の魅力を発信する取り組みを進めてきました。
例えば、アニメを活用したインバウンド促進事業を一昨年からスタートしました。日本のアニメ・マンガは東南アジアでも非常に人気が高く、このアニメファンをターゲットに観光PRを行います。シンガポールで開催される10万人規模のアニメイベント「C3AFA」に地方自治体に参加してもらい、アニメを通してそれぞれの地域の魅力をアピールして頂きます。

昨年は、東京都豊島区が「池袋PRアニメ」やコスプレイベントの周知、茨城県は県公認Vtuber「茨ひより」による観光PR、宮城県は「石ノ森漫画館」から石巻のヒーロー「シージェッター海斗」が駆けつけるなど、地域自慢のアニメコンテンツで注目を集めました。今年は11月末の開催予定で、現時点では未定ではありますが、例えばオンラインでこうした情報発信ができればと考えています。

新型コロナウイルスの影響で観光インバウンドの現状は厳しいですが、今後再開した時に向けて、こうした観光情報の発信は引き続きオンラインでも取り組んでいきたいと考えています。

また、オンラインセミナーもいくつか企画を考えています。物産の海外販路開拓や観光インバウンドに向けた日本の地方自治体職員向けのセミナーを、今年度はオンラインで開催することで、より多くの自治体の方に参加していただけることを期待しています。また、国際交流・国際協力の観点から行っている海外の地方公務員向けのセミナーについても、今年はフィリピン政府の関係機関と協力して、日本の地方自治体職員にオンラインで日本の先進的な取り組みを紹介してもらって、積極的に意見交換することを検討しています。

Q:読者に一言メッセージを

私は、日本を元気にするためには、まずは地方を元気にしなければという思いで、これまで総務省や地方自治体で勤務してきました。日本の地方自治体は、少子高齢化や人口減少などの課題を抱える中、成長を続けるASEAN諸国の活力を地元経済の活性化に取り込むために積極的に活動しています。J.CLAIR Singaporeでは、これからも日本の魅力ある地方の元気を、シンガポールから応援していきたいと考えています。

天利和紀さん
自治体国際化協会シンガポール事務所(J.CLAIR Singapore)所長。総務省出身で2018年より現職。ASEAN各国・インド・スリランカにおける地方自治体の活動の支援に携わる。主な活動内容は、WEBサイト(http://www.clair.org.sg/j/ https://www.facebook.com/clairsg/)を参照。
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この記事を書いた人
シンガポール在住8年目。ワインと美食をこよなく愛し、日々ワインを楽しむ一方、筋トレも欠かさず行う。“ワインと美活“のスペシャリスト