【シンガポールで就職も渡航できない24歳女性にインタビュー】コロナの影響でシンガポールの「鎖国状態」解除を願う

世界に人的、経済的に大きなダメージを与えている新型コロナウイルスの影響は、「就職」という人生の大きな節目を迎える20代の若者にも及んでいる。日本でもこの4月に就職した新社会人が一度も出社しないまま在宅勤務になっているケースがあるが、海外での就職を目指す若者にとっては、そもそも生活する国に渡ることができない。「渡航制限」という大きな壁に直面している。

渡航禁止解除を待つ日々

林まどかさん(仮名、24歳)は、シンガポールの企業に就職したものの、日本に滞在することを余儀なくされている。シンガポールが一部の例外をのぞいて日本からの入国を禁止しているためだ(2020年6月上旬現在)。そんな状況の林さんは鹿児島県にある実家で、シンガポールで新社会人として第一歩を踏み出せるようになる日を待ちわびる。

シンガポールで半年間のインターン

大阪にある外語大に在学中、1年間の海外留学をしていた林さん。大学4年生の前期で卒業に必要な単位を取得し終えたため、2019年9月から今年2月までの約半年間、シンガポールにある日系コンサルティング会社でインターンをしていた。
その期間中の仕事ぶりがコンサルティング会社の取引先企業にも伝わったのか、いくつかの企業から「卒業後にうちの会社で仕事をしないか」と声を掛けられたものの、「その時はインターンが忙しくて、考える余裕がなかった」と返事を保留にしていた。

求人情報が蒸発

約半年間のインターンを終え、卒業式に出席するために日本に一時的に帰国した林さん。シンガポールでの就職を希望していたため、4月にはシンガポールに戻ってくる予定だった
3月にあった卒業式は新型コロナウイルスの影響で中止に。いよいよ新社会人として踏み出そうとした時には、これまでとは状況が一転していた。
「それまでシンガポールでは多くの求人情報がありましたが、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めてから求人が蒸発するように一気に無くなってしまいました」。
20年3月に卒業する学生を対象とした日本の企業の就職活動はとっくに終わっており、日本の企業への就職は望めそうもなかった。「ニートになっちゃうかも」。不安が頭をよぎった

心機一転、就活にのぞむ

シンガポールで初めて新型コロナウイルスの感染が確認されたのは、1月23日。林さんが一時帰国した2月は、シンガポール国内での感染は抑えられていたものの、アメリカやヨーロッパでも新型コロナウイルスの感染が確認確認されるなど、世界に感染が拡大していった時期だった。
「今となっては、あの時のオファーを受けていればよかったな、と思います」と少しの後悔はあったというが、気持ちを切り替えて、シンガポールにある人材紹介会社に登録。厳しい状況でも求人を出している企業を探して、就職活動を始めた。

オンラインで選考が完結

シンガポールの人材紹介会社に紹介してもらった企業に応募。2回ほどあった面接は全てオンラインで実施され、1カ月もかからずに選考は終了。林さんはその企業と雇用契約書を交わし、就職となった。
「日本の企業ではなかなかないと思う選考のスピード感と、この状況では他に手段はありませんが、最初から最後までオンラインで採用が決まったことにも少し驚きました」と振り返る。

企業とは雇用契約書を結んだものの、まだ実際には働いていないため初任給はもらえていない。ただ「この状況下でも労働ビザの発行をしてくれようとする企業には感謝です」と林さん。
現在は仲介した人材紹介会社の担当者と定期的に連絡を取り、シンガポールの生の情報を仕入れている。

渡航制限の解除を見通せず

林さんがシンガポールで働くためには、渡航制限の解除と労働ビザが必要になる。
シンガポールでは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出制限措置が4月7日から6月1日までの約2カ月続き、6月2日から段階的に解除された。
ただ、シンガポール政府は海外からの入国禁止措置は6月中旬時点でも継続させており、林さんの渡航ももちろん不可能な状況だ。


ビザの発給を管理するシンガポール人材省(MOM)は、外出制限措置の段階的解除を受けてビザ申請の受付を再開した。
林さんのビザも6月上旬に承認され、発給されることになった。

「早く社会人をスタートさせたい」

今は日本で、アメリカの大学が無料開放しているオンライン授業を受けたり、得意の語学力を生かしてオンライン英会話の講師をしたりして過ごしている。
日本を離れて海外で生活するには、市役所での住民票の手続きや、税務署での税金の支払い手続きなど様々な準備が必要になる。
林さんは渡航制限が解除され次第、すぐにでもシンガポールに渡れるように、準備をしている。
「スタートが遅れてしまっている社会人生活だけど、早く第一歩を踏み出したい」。林さんはその日を待ち焦がれている。

この記事を書いた人

SingaLife編集部

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