第30回シンガポール国際映画祭に三池監督来星!
11月21日から12月1日まで開催されたシンガポール国際映画祭。30周年の節目を迎えた今年は40カ国から90作以上が参加しました。日本からは特別上映作品として是枝裕和監督作「The Truth」の他、7作のインデペンデントフィルムが公開されて好評を博しました。そして今回栄誉賞を受賞された三池崇史監督は、アメリカの100館以上で先行上映された新作「初恋(英題 First Love」を携えて映画祭に降臨!29日には本作が上映され熱い指示を受けました。
そんな三池監督にお話を伺いました。
まずは映画の主演である窪田正孝さんですが、テレビドラマから10年後再びタッグを組まれた訳ですが、変わったところとか…。
三池監督(以下敬称略):
テレビドラマではオーデションの時とクランクアップの時とで、別人のように変化した役者です。。でも人間性は全く変わっていません。そこで満足して変わってしまうと成長しなくなる。彼は今では演技派として若手でトップクラスの俳優であり、独特ないい芝居をすると言われていますが、本人はそう思ってはいない。変わらない。
それって貴重な事ですよね?
三池:そうですね、皆慣れてくるというか、守ろうとするというか満足する人が多くなる。そうするとそこで成長はストップします。
今回は窪田さん念願のボクサー役ということですが、脚本も窪田さんをイメージして当て書き(その役を演じる俳優をあらかじめ決めておいてから脚本を書くこと)した感じですか?
三池:最初に窪田でいけたらいいなという話はありましたが、当て書きではありません。脚本家の中村雅さんは独自の世界観の中で描いたものです。ただ今までとは違う彼の姿を見せたいというのはあるかもしれません。
監督は演出する際には、ガイドラインだけ引いて後は自由にという感じでしょうか?
三池:実は俳優の持つ自由度は余りなく、例えばカメラの位置や照明など動ける範囲は決まっています。またセットや共演者の演技など自分のイメージと違った場合もあるかもしれない。その中で演技をしていく、ある意味フラストレーションをどう演技にぶつけるかは役者です。
いい役者は主演助演に関わらず、一度説明すれば把握します。次は自分がやらなければいけないので集中力が高いわけです。全てを説明してわかり合ってというのは気持ち悪いですね。
思うのは、人生の一時を使ってやっている訳ですから、役者は元より撮影部、助手に至るまで、仕事を終えた時にこの仕事をやって良かったと思って欲しいですね。満足感までいかなくても、少なくとも後悔しないように。
色々伺っていてやはり監督は柔軟な方だと思います。多彩な作品を撮れるのも柔軟でアイデア豊富だからでしょうか?
三池:どんな所にも隙間はあって、例えば昔、Vシネマの頃だとこの隙間に入れる作品を作ろうとなると「じゃヤクザ物で哀川翔主演で」となります。そこでもっと豪華にやってみろよ、と言われれば、竹内力とのW主演でとなります。そんな事可能何ですか、と周りから言われたら予算を増やして貰ってやってみましょうかと。
そのアイデアだけでビデオ屋からはどこでもOKが出る。そこから物好きのプロデューサーがいて、ビデオ棚から引っ張り出して映画祭などに出して。そこからまた派生して。
自然に変化していける感じですね。監督のしなやかさを感じます。
最後に「初恋」について聞かせてください。監督初のラブストーリーということですが。
三池:ラブストーリーというよりも、ヤクザで暴れてどうしようもない奴らが新宿にはまだゴロゴロいる。だけど誰にも振り向かれず気配として存在するような。
そんな取るに足りないような奴らが生きてあがくという行為が、彼らも知らない内に誰かと誰かを結びつけ恋が生まれる。そんな奴らがピュアな恋を生む、そんな話です。
三池監督メッセージ(ビデオ映像をご覧下さい)
追記:同日行われたシルバースクリーンアワードでは、栄誉賞で三池監督が呼ばれ壇上にあがると歓声と共に参加者達が席から立ち上がり、またステージ近くまで駆け寄る人あり、監督の人気を実感!多くの業界人が一ファンに戻った瞬間でした。
三池監督のイメージはシャープで強面なイメージでしたが、実際にお会いしてみると、柔らかくきちんと向き合って話してくださる方でした。多くの俳優が監督と共に作品を作りあげたいと考えるのが納得でした。まだまだ新しい映画を見せていただけそうです!
「初恋」
天才ボクサー葛城レオ(窪田正孝)は格下相手に敗北し、担ぎ込まれた病院で余命を知る。あてもなく歌舞伎町を歩くレオはふとした事からモニカ(小西桜子)を助け、ヤクザから追われる羽目に。その濃密な一夜を描いた作品。笑って泣けてグッとくる、三池監督ならではの新しいラブストーリーに注目。日本では2020年2月28日公開。
監督: 三池崇史
脚本:中村雅
出演:窪田正孝 大森南朋 染谷将太 小西桜子 ほか。
シンガポールフイルムフェスティバル
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この記事を書いた人
SingaLife編集部
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