【インドネシア×アフガニスタン】知られざるインドネシアのアフガン難民

元外交官 × エコノミスト 川端 隆史のアジア新機軸

国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)のデータによれば、2020年時点でインドネシアには7600人のアフガン難民が住んでいる。図表にあるように、インドネシアは遠い割には一定数を受け入れていて、異色の存在だ。しかも、インドネシアは「難民の地位に関する条約」、いわゆる「難民条約」を批准していない。

本来ならば、米国や豪州に行きたいが、政府関係者や大手企業関係者とのつながりがある人であれば、直接行く方法もあるかもしれない。また突然、逃れなければならないとなったときに、友人や知人をたよってつてを探す暇もない。そうした需要に対して特別なルートがいくつか存在しており、外国へ難民として行くためにブローカーが存在している。

インドネシアのアフガン難民について日本語でよく書かれているのはジャカルタ新聞2018年11月22日付けの『「弟がタリバンに殺された」 アフガン難民アフマドさん』という記事だ。アフガン難民のアフマド氏の話が掲載されている。

同氏はタリバンによる捜索から逃れるために、叔父にカブールのブローカーに連れて行かれ、インド、マレーシアを経て、インドネシアにたどり着いたという。かかった費用は叔父が支払ったので分からないとしつつも、8000米ドルほどだったのではないかと話している。渡航先を選ぶという立場にある人はごく少数であり、このアフマド氏のように行き先も分からずにブローカーに身を委ねるというパターンが多いのだろう。

インドネシアのアフガン難民の立場は不安定だ。インドネシア政府は難民条約を批准していないため、難民の受け入れは一時的で第三国定住が前提という立場をとっている。アフガン難民のなかには、10年以上にわたりインドネシアに滞在している人たちもおり、地域の人々と共存している場合もある。

一方で警察当局は監視対象としており、怯えて暮らしている人たちも少なくない。今回のアフガン情勢の急転をうけて、インドネシアにはさらにアフガン難民が渡航してきている。

アフガン難民および亡命希望者の受け入れが多い国

出所)国連高等難民弁務官事務所発表データより筆者作成

*2021年9月26日脱稿

プロフィール

川端 隆史 かわばたたかし

クロールアソシエイツ・シンガポール シニアバイスプレジデント

外交官×エコノミストの経験を活かし、現地・現場主義にこだわった情報発信が特徴。主な研究テーマは東南アジアや新興国を軸としたマクロ政治経済、財閥ビジネスのグローバル化、医療・ヘルスケア・ビューティー産業、スタートアップエコシステム、ソーシャルメディア事情、危機管理など。

1999年に東京外国語大学東南アジア課程を卒業後、外務省で在マレーシア日本国大使館や国際情報統括官組織等に勤務し、東南アジア情勢の分析を中心に外交実務を担当。2010年、SMBC日興証券に転じ、金融経済調査部ASEAN担当シニアエコノミストとして国内外の機関投資家、事業会社への情報提供に従事。2015年、ユーザベースグループのNewsPicks編集部に参画し、2016年からユーザベースのシンガポール拠点に出向、チーフアジアエコノミスト。2020年12月より現職。共著書に「東南アジア文化事典」(2019年、丸善出版)、「ポスト・マハティール時代のマレーシア-政治と経済はどうかわったか」(2018年、アジア経済研究所)、「東南アジアのイスラーム」(2012年、東京外国語大学出版会)、「マハティール政権下のマレーシア-イスラーム先進国を目指した22年」(2006年、アジア経済研究所)。東京外国語大学アジアアフリカ言語文化研究所共同研究員、同志社大学委嘱研究員を兼務。栃木県足利市出身。



この記事を書いた人

SingaLife編集部

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