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シンガポールの就労ビザ、傾向と対策!

2011年の総選挙以降、取得することが難しくなっているシンガポールの就労ビザ。新型コロナ禍の2020年は5月に約2年ぶりに基準が改定され、その後、9月に再度の改定が行われました。

同一年、しかも半年以内に複数回の改定が行われるのは極めて異例なため、多くのメディアや口コミで様々な情報が飛び交っています。今年も残すところ約2か月ですので、来年以降に向けて、いちど現状を整理し、今後の対策を考えていきたいと思います。

そもそもシンガポールで外国人が合法的に「就労」するには?

一口に「シンガポールで働く」と言っても、幾つかのパターンがあります。一般的な日本人の場合、大別すると、

①シンガポール国外に本社を持つ企業から駐在員として派遣
②在シンガポール企業への直接応募での勤務
③自分自身での起業

の3つに分けられます。

先ずは基本情報として、「シンガポールの就労ビザには、どのようなものがあるか」を簡単にご紹介したいと思います。

一般的に、「外国人が会社に雇用されて就労する」場合、通常は下記2種類のいずれかを、就労開始前に取得することが必須です。

エンプロイメント・パス(通称EP)駐在員、現地企業からの直接採用を問わず、最も一般的な就労ビザ。十分な学歴・職歴を有する専門職または管理職向けとされており、2020年5月に、新規取得に際しては、月額固定給与の下限がSGD3,600からSGD3,900に引き上げられ、9月の再改定時に更に引き上げられSGD4,500(金融業界はSGD5,000)になりました。これは、日本円換算で約35万円です。有効期間は最長で5年ですが、1~3年程度で許可されるケースが多いようです。更新は可能です。
Sパス: EPについで、一般的な就労ビザ。EPが十分な職歴・学歴を有するプロフェッショナル向けビザなのに対して、Sパスは中程度の技能を持つ外国人向けとされており、2020年10月現在、新規取得の月額固定給与の下限はSGD2,500(日本円換算で約19万5,000円)、有効期間は最長で2年。更新は可能です。なおEPと異なり、会社ごとに「発給枠」上限があります。サービス業では全従業員数の13%、それ以外の業種では20%が条件です。雇用主が「Levy(外国人雇用税)」を支払う必要があるのも、EPと異なる点です。

一方、現地企業に直接応募・勤務の場合は、下記2種類のビザを取得する方も少なくありません。

パーソナライズド・エンプロイメント・パス(通称PEP):文字通り「個人付帯の就労ビザ」で、月額固定給与が高めのプロフェッショナル向け就労ビザ。取得条件を満たせば、EPと異なる利点が幾つかあります。まず申請時に雇用主が決まっている必要はありません。また特定の雇用主に紐づく就労ビザでは無いため、複数の会社から収入を得ることができ、メインの雇用先を退職後も6カ月間は無職でもシンガポール国内にとどまることが出来ます。EPから切り替えて取得する場合の月額固定給与の下限はSGD12,000(日本円換算で約93万円)、海外から新規で取得する場合はSGD18,000(約140万円)。有効期限は3年で、更新は出来ません
ワーキングホリデービザ年齢層18~25歳向けのビザ。日本を含む10ヵ国の学生が対象です。1回につき最長6ヵ月まで就労できます。申請時に特定の会社からのオファーを必要としないため、承認を得てから就労先を探し、雇用主が見つかった時点でビザ期間を開始することができます。意外に知られていない点として、更新は出来ないものの、25歳未満であれば、前回の就労最終日から1年後に再度申請することが出来ます

なお、自分自身で起業する場合は、新設した会社から前述のEPを出す方法に加えて、業種によっては「アントレパス」を取得するケースもあります。

アントレパスシンガポール政府認定のインキュベーター・アクセラレーターへの合格者、もしくは指定条件を満たす起業家に発行されるビザ。初回は一律、有効期限1年間での発行のため、資金調達や売り上げによって、指定されたローカル社員を雇用できる場合のみ、2年目以降の更新が可能になります。

最後に、在シンガポールの日本人の皆様の中には、学生パス、DP(ディペンデントパス)、PR(永住権)をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。学生パスとDPは条件を満たした場合、PRは特に制約無くシンガポールでの就労が可能ですが、これらのビザは「就労ビザ」では無いため、本稿では説明を割愛いたします。

月額固定給与以外の就労ビザ取得条件は? 事前に診断出来るツールを政府が提供!

就労ビザ取得には、「月給固定給与の下限」以外に、幾つかの条件を加えて総合的に判断すると言われています。

学歴最終学歴が高く、専門性が高いほど有利とされています。例えば、専門学校や短期大学よりは、大学や大学院卒。また卒業校のランキングが高いほど良いとされています。特に職歴の浅い方の場合、高学歴かつ就く職種に直結した専攻がビザ取得にあたり有利と言えます。

職歴就く職種に直結した職歴が望ましいとされています。また、シンガポール人で代替が難しい仕事に就く人ほど有利です。例えば、データサイエンティスト等、シンガポールで不足している職種はビザが取得しやすい傾向にあります。

シンガポール人材開発省(通称MOM)では、月給他の情報を入力すると、取得可能なビザが事前にある程度判断できる「SAT」というツールを提供しています。ただし、これでEPもしくはSパスが取得できるという判定が出たとしても、取得を確約するものでは無りません。逆に、ここで「取得できるビザが無い」と判定された場合は、そのままの条件で申請した場合、ほぼ確実に却下されます。

出典:https://www.mom.gov.sg/eservices/services/employment-s-pass-self-assessment-tool

ここまで、申請する個人について述べてきましたが、EP・Sパスといった「雇用主に紐づく就労ビザ」に関しては、会社側という観点も重要です。例えば、近年シンガポール政府が強く推奨している「シンガポーリアン・コア」に沿った体制となっているか等、幾つかの重要なポイントがあります。仮に個人がEPやSパス基準を満たしていたとしても、雇用主側が政府の方針を十分に理解した事業計画と体制創りを行っていない場合、却下されてしまうことが多々ありますので、個人・会社両方の側面での対策を講じる必要があると言えるでしょう。

今後の対策は?

近年の取得難化にコロナ禍が拍車をかけて、厳格化の傾向が強まるシンガポール就労ビザですが、この背景にあるシンガポール政府の方針を十分に理解し対策を講じれば、むやみに恐れる必要はありません。以下に属性別の対策を記します。

駐在員以外の25歳以下の層

ワーキングホリデービザが取得できるかどうか調べることを強くお勧めします。もし取得できる場合は、まずその6ヵ月間をフルに活用し、現地で就活し、EPもしくはSパスをスポンサー可能な企業に応募していくことで、日本からの就活と比較して採用確率があがる可能性が高まると思います。

駐在員以外の26歳以上の層

PEP取得条件を満たす場合:シンガポール国外での就労先の給与が条件を満たす場合、PEP取得が出来ることを利点として、現地企業に直接応募。異業種では無く、同業種・同職種で専門性と実績を強く打ち出すことで採用の可能性が高まる傾向があるようです。

PEP取得条件を満たさない場合:シンガポール人では代替できない専門性と実績をアピールして、EPもしくはSパスをスポンサー可能な企業に応募していく。

駐在員の場合

トレーニングが主目的の場合:トレーニング目的の短期就労の場合は、トレーニングエンプロイメントパス(通常TEP)※1もしくはトレーニングワークパーミット(TWP)※2の活用を検討する。従来は短期であってもEPを取得するケースが多かったようですが、今後は短期の場合は、下記2種類の就労ビザも検討に値するでしょう。

※1トレーニングエンプロイメントパス(通常TEP)「トレーニング」を目的とする就労を希望する外国人の学生、もしくは会社員向けの就労ビザ。学生の場合は、そのトレーニングが卒業の必須条件であること、会社員の場合は在シンガポールの企業からスポンサーされていることが必要です。基本月給の下限はSGD3,000。有効期間は最長3ヵ月で、更新は出来ません。

※2トレーニングワークパーミット(通称TWP)未経験もしくは中程度の技能を持つ外国人の学生、もしくは会社員向けのビザ。TEPと異なり、基本月給に下限は無く、有効期間は6ヵ月です。更新は出来ません。雇用する会社側は、「Levy」と発給枠の制約を個別に事前に確認する必要があります。

もし申請したビザが保留や却下になってしまった場合でも、追加資料の提出、もしくはアピール(再申請)によって、取得が可能になる場合は少なくありません。個々のケースで対策が異なると思いますので、そのような場合は、専門家の支援を得ることをお勧めいたします。

就労ビザ取得が難化していることが事実ですが、シンガポールの場合、例えばアメリカのように駐在員以外の就労ビザの年間発給数の上限が決まっているわけではありません。従って、個別の状況に応じて対策を講じることが出来るという意味では、まだまだチャンスは少なく無いと言えるのではないでしょうか?シンガポールで働く目的を明確にした上で、誰にも負けない自分だけの強みを高めて、ぜひともチャレンジして下さい! 

 

※本稿は、2020年10月現在のMOM(人材開発省)公開情報、また一部、弊社調査をもとに作成しています
※就労ビザの要件は頻繁に変わる傾向にあります。申請にあたっては、MOM(人財開発省)また状況に応じて専門家から常に最新情報を得ることをお勧めいたします


記事寄稿:ExpertConnect Asia
Web:https://expertconnect.asia/

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