シンガポールで児童書が“人種差別的”との指摘 いじめっ子を色黒で描写、国立図書館は大人向け図書コーナーに移動

シンガポール国立図書館局(NLB)は10月19日、図書館利用者から「人種差別的なメッセージを含んでいる」と指摘があった中国語の7~9歳児向け絵本“Who Wins?(勝つのは誰?)”について、「一般市民で構成される第3者諮問委員会とともに検討した結果、管轄下の図書館において、大人向け図書の家族・育児書コーナーに移した」と発表しました。

“勝つのは誰?”は、シンガポールの教育出版社が2018年、5冊から成るシリーズ“Amazing Adventures of Pi Pi(ピピの大冒険)”の1冊として、出版。
中国語で“毛むくじゃら”を意味するカーリーヘアのいじめっ子の少年“マオマオ”を主人公として描いたものです。

“勝つのは誰?”をめぐっては、8歳の息子に読み聞かせるため、ベドック図書館から同書を借りた40代の女性が7月、自身のフェイスブック上において、他の登場人物が色白に描写されている一方、いじめっ子の“マオマオ”だけが、あらすじとは無関係であるにもかかわらず、色黒である点に言及

女性が「極めて人種差別的だ」と書いたことを受け、“勝つのは誰?”は各図書館で7月19日以降、一時閲覧停止になっていました。

その後、出版社側は7月21日、「当社は、多様性が尊重・称賛される全面的にインクルーシブ(包摂的)な社会に向け、書籍を発行しており、差別を助長する内容を作る意図は一切なかった」と謝罪。“ピピの大冒険”シリーズの今後の販売を中止するとともに、店頭から同シリーズの本を回収する方針を示しました。

また、NLBは、大人向けコーナーに移して閲覧を再開するにあたり「“勝つのは誰?”は、子どもたちがどのように学校内におけるいじめに対応し、子どもたちが抱きうる誤解を正していくのかについて話し合ううえで保護者の役に立つはずだ」としています。

多様な民族が暮らすシンガポール社会。人種問題には、やはり日本以上に敏感なようです。

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SingaLife編集部

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