世界一の算数力?!「シンガポール算数」とは?その魅力と日本の算数教育との違いを徹底解説
シンガポールの小学校で取り入れられているシンガポール算数。多文化、多国籍な生徒が集まるシンガポールで、子どもたちが無理なく算数を理解し習得できるよう開発された独自の算数カリキュラムと教材は、導入後間もなく子どもたちの成績を急激に伸ばしました。その内容を徹底解説します!
シンガポールの算数教育とは?
世界でもトップクラスを誇るシンガポールの算数(数学)教育。シンガポール算数(シンガポール マス)は、「算数を答案上でとらえるのではなく、生活を充実させるために学ぶ」という理念のもと、多国籍国家の生徒たちが無理なく算数を習得できるように工夫がなされています。
研究が功を奏して、導入後間もなく子どもたちの算数の成績が急激に伸びたことで瞬く間にアメリカの学校やカナダ、イスラエル、オランダ、インドネシア、チリ、ヨルダン、インド、パキスタン、タイ、マレーシア、日本、韓国、フィリピン、イギリスなどの国々で採用され、世界中で知られることになりました。
世界が注目する理由
近年各国で注目を集める教育メソッド「シンガポール算数」は、シンガポール教育省が1980年代に独自に開発しました。多国籍国家であるシンガポールで、母語が異なる生徒たちが無理なく算数を習得できる工夫がされているこの教育法は、文章題が多く「バーモデル」という図を描いてから問題を解くのが特徴です。
シンガポール教育省は算数教育の目標を、全ての子どもが、生活・人生の中で数学的な情報をもとに適切な決定ができるようになること、数学的なスキルを高等教育やキャリアで活かせるようになることとし、「論理的思考力・論理的推理力」そして「自身の数学的思考を、人に伝えるコミュニケーション力」にも重点を置いています。
教育到達度ランキングでの評価
出典:毎日新聞
1995年から始まった、世界中の小学生・中学生の算数/数学と理科の学力調査TIMMSで、初年度からトップを続けているのがまさにシンガポールです。シンガポール算数は、シンガポールの小中学生が高い学力を維持する重要な要因であり、世界的に注目されています。
この教育メソッドはシンガポールや上海に留まらず、アメリカ、カナダ、イギリスの教科書にも採用され、国際的に広がりを見せています。その普及は、この指導法の効果の高さを示しています。アマゾンの創設者であるジェフ・ベゾスが、お子さんをシンガポール算数を学ぶキャンプに参加させたという報道や、米女優のサンドラ・ブロックさんがアメリカのトーク番組でシンガポール算数に触れたことも話題になりました。
シンガポールの算数教育の3つの特徴
「少ない問題数で深く考える」学び方
シンガポール算数は、文章題が中心なことも特徴です。シンガポール教育省は、算数を学ぶ目的を”実生活で数学的な問題に直面した時に解決できること”とし、日々の生活場面などを再現している文章問題が、その演習として重視されています。
1)思考力の育成
シンガポール算数は、小学生を対象に「思考力の育成」を目指し、オリジナルの教科書を開発したことから始まりました。
単純に解法を憶えて式を解いて答えを出すのではなく、算数の概念を理解し、解を導き出す問題解決能力を重視しています。基礎的な学力の徹底と並行して応用的な問題に対する問題解決方法を発見していく「ヒューリスティクス(Heuristics)」という学習プログラムを取り入れており、日常生活の中で起こりうる複雑な問題に対して、どのように考えて試行錯誤をしていくべきかを学び、「思考力(Thinking Skills)」を養っていきます。
「ヒューリスティクス」における算数学習は、日本の中学受験で取り組むような特殊算や論理的思考を問うような応用問題も練習を重ねていき、さまざまな出題パターンに対応できるようになっていきます。シンガポールの小学校では、6年生で受けるPSLEという小学校卒業試験というものがあり、国家統一試験や全国一斉試験にあたります。
この試験結果でどの中学校に行けるのかが決まるため、必然的に「全員が受験生」となるため、小学校高学年では標準カリキュラムの中でも難易度の高い問題にも取り組むことが特徴的で、早いうちから算数の基礎学力、思考力を高めていく必要があるんですね。
CPAアプローチ(具体的→絵的→抽象的)の詳細
立体を使った数字の学習
シンガポール算数では最初から数字を使うのではなく、ブロックやサイコロなど立体を使って立体を並べることから数字を学びます。円錐や球、立方体などの立体から、立体の特徴や体積、表面積などを学ぶこと、具体物を使って物を足したり取り除いたりすることで、足し算や引き算などの基本的な算数を学びます。
10進法や位取りを理解するために、1、10、100を表すブロックを使って繰り返し数の感覚を身につけていきます。
「バー・モデル」を活用した視覚的学習
バー・モデル
シンガポール算数に欠かせないのが「バー・モデル」と呼ばれるものです。シンガポールの小学生は、このバー・モデルを使用して文章問題を解く練習に力を入れており、バー・モデルを描くための専用の定規を持っているのだとか。バー・モデルを描けるようになること自体がシンガポール算数を学ぶ上では特にウェイトが置かれており、問題を自分で図に変換して視覚化して解く方法を徹底して学びます。
バー・モデルは、全体と部分の数量の関係を表したり数量の違いを表したりするだけでなく、分数や割合の百分率の問題解決にも活用されています。掛け算や割り算を含む高度で複雑な問題を解くときにも役立ち、文章問題も図解モデルを描くことで、未知の数量を視覚化し、表現し、関連付けることができます。日本でも小学校の算数でテープ図や線分図を学びますが、図を用いて数を導き出す点は似ていますよね。(バー・モデルを描き出すことは、「絵を描く」ヒューリスティックスに分類されます。)
日本の算数教育との違い
計算練習 vs 思考力重視
出典:KUMON SHOP
日本の小学校の算数が、計算ドリルを使って問題を解き答え合わせをする「計算練習」であるのに対し、シンガポール算数は、具体的な道具や立体(コンクリート)、図形やイラスト(ピクトリアル)、記号や数式(アブストラクト)を段階的に使って、子どもたちに数や計算の概念を理解させる方法です。
バー・モデルを使った学習は立体を使って数字を視覚化する点で、ドリル学習と異なります。この方法は、算数の概念や基礎を思考することで身につけていき、全体の算数力のレベルアップを目指す際にはるかに効率的だと言われています。バー・モデルは、シンガポール式算数の教育法である「コンクリート ビクトリアル アブストラクト(CPA)」の一環として使われます。
問題解決のプロセス
バー・モデルが描けるようになると、高学年になり文章問題が複雑化した際にも、問題を解くプロセスを何パターンも持つことができます。「このようなタイプの問題には、この種類のバーモデルを描いて考えてみよう」という思考は、算数だけに限らず、生活していく上でのさまざまな問題解決のプロセスを考えるのに役立っていくでしょう。
日本でも取り入れられるシンガポール式算数
シンガポール式算数ドリルの紹介
日本でシンガポール算数を学ぶなら、まずはドリルがおすすめです。
出典:平凡社
「世界一の学力がつくシンガポール式算数ドリル」小学1~6年 『バーモデル』で文章題にとことん強くなる!(平凡社) |
シンガポールの小学校低学年生たちは、バー・モデルを活用することで、日本の小学校で方程式を習う前に「解けない」とされる問題も簡単に解いてしまいます。文章題を視覚的に整理し理解することで、解法の手順を自然に見つけ出せる力が養われているのです。
利用可能なオンライン講座や教材アプリ
「Singapore math worksheets」や「Singapore math free test papers」と検索すると、無料のワークシートや解法紹介サイトが見つかります。小学1年生から6年生までのさまざまなワークシートが検索できるので、ぜひお子さまの学年や学習内容に合わせて探してみてください。
また、近日公開予定のサカモト式算数(SAKAMOTO MATH)のオンラインコースも要チェックです!
世界が注目するシンガポール算数に触れてみよう
シンガポール算数は、建国50年余りのシンガポールで開発された独自の算数カリキュラムと教材で、世界中から注目を集めています。多文化・多国籍な生徒が無理なく算数を理解し、成績を向上させることを目的に設計され、導入直後から目覚ましい成果を上げました。現在では各国の学校や国際校でも採用されています。お子さんと一緒にその魅力的な学習法に触れてみませんか?
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この記事を書いた人
SingaLife編集部
シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!