【最新版】シンガポールのローカル校に日本人が入学するには?入学手続き、学費など重要ポイントを解説

年々入学の基準が厳しくなり、永住権なしには入学の倍率もかなり高くなっているシンガポールのローカル校。この記事では、ローカル校への入学基準や学費面、生活面、進級や外国人の家庭が直面する課題について触れて行きます。実際に通われたお子さんの感想もご紹介します。

シンガポールのローカル小学校とは

シンガポールには、現在約180校のローカル小学校があります。国際的にも高く評価されているシンガポールのローカル小学校ですが、特に算数の学力は世界も注目しており、シンガポール算数が各国のインターナショナル校で取り入れられていることは有名です。

さらには読解力や科学的リテラシーが高く、こちらはPISAの調査でも明らかになっており、住まいが学校に近ければ近いほど入学できる優先順位が上がります。自宅が近いほど入学の優先順位が上がるため、人気校に子どもを入学させるべく学校付近へ引っ越す家庭も多いとか。すでに兄弟が在学中であると、さらに入学が優先されたりもします。

シンガポールの義務教育は、実は6歳から12歳までの小学校6年間で、これはイギリスの植民地時代の影響を大きく受けてのこと。日本の義務教育が小学校6年間と中学校3年間の9年間ですから、比較すると短い期間となっていますよね。

シンガポールで小学校を卒業する際には、Primary School Leaving Examination(PSLE)という全国統一試験を受けることになります。その結果に基づいて中学校の進学先が決まるという能力別教育システム、ストリーミング制度が取り入れられていましたが、政府による教育の見直しがなされ、2024年から2027年にかけて新しい制度「Subject-Based Banding」への段階的な移行を発表しています。

🔶以前までのPSLE結果による進路

出典:シンガポール教育省(MOE)

以前はPSLEの結果によって、生徒は3つのレベル別コースに振り分けられていました。Express,、Normal Academic、Normal Technicalがあり、なんとNormal Technicalへ振り分けられてしまった子どもたちは、中学卒業後の進路が不安定になるというんです。上位の学校への進学率はとても低く、大学を目指すのであれば小学校卒業の時点で受験するPSLEで良い成績を収めることが大変重要になってくるため、シンガポールの子どもたちにとって勉強は必須ですよね。

ですが新しい制度では、生徒は科目ベースによる振り分けが行われ、かつ生徒は自身の強みに基づいて、より高いレベルまたはより低いレベルの科目を受講することになるそうです。ちなみにPSLEは、中学1年生の初めに各生徒がどの科目のレベルに最も適しているかを判断するための有用な初期基準として、今でも機能しています。そんなシンガポールのローカル校事情を知った上で、小学校への入学には、今後の進路を見据えた選択ができるといいですね。

シンガポール政府の教育省MOE(Ministry of Education)のWEBサイトには、外国人の為の入学手続きについて記載されているページがあり、申請方法など必要事項はすべて明記されています。
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入学者の優先順位

小学校への外国人入学者の優先順位については、MOE 公式サイトにも明記されていますが、最優先はシンガポール国民、続いて永住権保持者(PR)、続いて外国人という順になっています。外国人は、他のグループの応募が終了した後に残席がある場合にのみ応募可能です。このため、外国人が入学できる可能性は非常に低く、特に人気校では競争が激しいです。

入学は、第1次募集(Phase1)と第2次募集(Phase2)で申し込みが可能です。生徒数が定員割れしている学校があれば、第3次募集 (Phase3)で外国人が申請できるという仕組みになっており、外国人への入学の機会が希少であることがわかります。

ちなみに、外国人がローカル校に入学するための一つの方法として、永住権を取得することがあります。シンガポールの永住権は競争が激しく、特に外国人に対しては厳しい基準が設けられていますが、取得によりローカル校入学への優先順位はぐっと上がります。

ここからは余談になりますが、トップスクールと呼ばれている、いわゆるローカルのエリート校への入学はバトルであり、当然のことながら外国人が入れる隙は皆無です。また、トップスクールに入るためには、優先順位があります。その順位は、

①親が卒業生であること
②兄弟がすでに入学していること
③自宅から学校までの距離がより近い生徒
④学校でのボランティア活動に親が参加しているか

などが挙げられます。ボランティア活動に関して言えば、ボランティアとして参加するのにも、その学校の面接があります。面接に合格後、1年間に一定の決められた時間数のボランティアをこなすことが条件となっています。しかしながら、これらの奉仕をしたからと言って、入学許可が下りるとは決まってはいないようです。

シンガポールの学年推移

MOEの規定により、外国人生徒は学年を下げて入学することは認められていますが、同学年の生徒より2歳以上の年齢差が生じることは認められていません。

外国人生徒は、学生証(STP)の取得が必要であり、12歳以下の生徒については、規定のワクチンの接種を行っている証明書が必要です。また、21歳以上のシンガポール国民・永住権保持者、又はシンガポールで働いている保護者の連絡先が必要となります。
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中国語・マレー語・タミール語のいずれかを選択せずに、生徒の母国語を選択することは例外のケースとして考慮されますが、その場合は学校への申請後、MOE内のThe Languages and Literature の部門で審査されます。

子どもの将来を思い、ベストの教育を受けさせてあげたいという気持ちは、親が誰しも考えること。教育システムの選択肢は多岐にわたります。子どもをシンガポールのローカル校に入れたいかどうかは、親の一存ではいかないシステム的なところもあります。それを踏まえたうえで、検討の一助になればと思います。

入学申し込みを検討される方は、最新の情報を各自で確認してください。

🔶シンガポールの学年推移

 年齢  日本の学齢に合わせた場合
P1 (Primary 1)6, 6+小学1年
P2 (Primary 2)7, 7+小学2年
P3 (Primary 3)8, 8+小学3年
P4 (Primary 4)9, 9+小学4年
P5 (Primary 5)10, 10+小学5年
P6 (Primary 6)11, 11+小学6年
S1 (Secondary 1)12, 12+中学1年
S2 (Secondary 2)13, 13+中学2年
S3 (Secondary 3)14, 14+中学3年
S4 (Secondary 4)15, 15+高校1年
***Pre-University 116, 16+高校2年
Pre-University 217, 17+高校3年
Pre-University 318, 18+ 

 

中国語の授業は必須?

シンガポールのローカル小学校において、中国語の授業は外国人にとって必須ではありませんが、いくつかの条件があります。

まずは「母国語」の選択です。シンガポールの教育制度におけるバイリンガル教育の一環であり、主な授業言語は英語にて行われる中で、母国語の授業を受けることが全ての生徒に義務付けられています。ここでの母国語は、中国語、マレー語、またはタミル語のいずれかになり、中国系の生徒は通常中国語を選択しますが、他の民族の生徒はそれぞれの母国語を選ぶことができるのが特徴です。

その他の外国人で、母国語がこれらの言語でない場合(例えば、海外からの帰国子女や、特別な教育的ニーズを持つ子ども)は、MOEにて免除を申請すると、母国語の授業を免除される可能性があるようです。中国語の授業は必須ではないものの、シンガポールの教育システムにおいては、母国語の学習が重要視されていることがわかりますね。
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入学試験はあるの?

シンガポールのローカル小学校には入学試験はありませんが、P2,P3,P4,P5(P6での編入は認められていない)での編入には、英語と算数のテストがあります。この試験はAEIS(Admission exercise for international students)と呼ばれており、MOEのサイトには、十分な準備をして試験に臨むようにと明記されています。
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学費はいくらかかるの?

外国人学生の学費は、シンガポール市民や永住権保持者に比べて高額です。これは外国人にとって大きな負担となります。月々の費用には、学費と諸費用が含まれますが、金額は子どもの国籍や通う学校の種類によって異なっています。

シンガポール国民およびシンガポール永住者の場合、適用されるGSTはMOEによって補助されるため、月額料金にGSTは含まれませんが、外国人の料金にはGSTが含まれます。

<シンガポールの公立小学校の学費例>

全て月額料金
▪シンガポール国民:S$13
▪永住者:S$293〜S$343
▪留学生(ASEAN):S$559.17〜S$609.17
▪留学生(ASEAN以外):S$949.17〜S$1,049.17

 

入学応募方法とスケジュール

ここまでお伝えしたように、外国人の生徒がローカル小学校へ合格をするにはいくつもの条件や優先順位がありますが、入学申請手続きの流れや、応募の時期、必要書類などは事前に確認しておきましょう。

申し込み可能な第1次募集と第2次募集。毎年、第1次募集が始まるのが6月前後ですので、登録はその頃となります。(シンガポールでは、新学年が翌年の1月にスタートします)。定員割れした場合の第3次募集は7月から8月にかけてとなり、入学試験が9月中旬に行われ、結果が出るのは10月頃になります。

第3次募集の結果を待っている間に、インターナショナル校が8月中旬や、9月から新学年が始まってしまうので、第2のバックアッププランが必然となります。

9月中旬ごろに行われる第3次募集の試験を逃してしまっても、翌年新学年が始まってからの2月ごろに、S-AEIS (Supplementary admission exercise for international students) を受けることは可能です。募集は1月にあります。しかしながら、敗者復活戦と呼ばれても過言ではないこの時期の試験での入学へのキップの獲得は、そう簡単にはいかないようです。
▶S-AEIS(外国人のための追加入学試験)についてはこちら
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提出すべき個人情報や必要書類は大変多くなっていますので、漏れのないようご注意ください。
▶詳しくはこちらをご確認ください。

公立学校のメリットとデメリット

→ ローカル校の利点と不安点、外国人の親として知っておくべきポイント

もしローカル校への入学が許可されたとしても、定員割れしている学校に入ることになるので、居住している近隣の学校に通える保証がないのが不安点ですが、全く望みがないわけではありません。第3次募集が始まる際に申請可能な学校のリストが公表されるため、申請書には第3希望校までを記載できることになっています。少しでも近い学校を申請できる点はありがたいですね。

言語に関しては、やはり日本語が通じない点はデメリットになるでしょうか。高い教育水準と英語教育を目的にシンガポールのローカル校に入学させたい場合、中国語のハードルはかなり高いと認識しておいたほうが良いでしょう。

もしもお子さんが「中国語が難しすぎて無理!」となった場合、中国語を放棄することは許可されているようです。その場合は、「母国語」を自習する形になります。他の生徒との兼ね合いもあるので、一人で図書室に行くということは認められず、同級生たちが中国語を勉強している同じクラスルームで、コツコツ母国語の勉強をすることになるようです。

外国人としての入学は学費も高く設定されているため、メリット、デメリットのバランスを見てご判断の上、決定されるといいと思います。

実際、ローカル校で教育を受けた/受けている感想は?

シンガポールの教育システムを修了した20代のシンガポール人女性Hさんと、現在ローカル校に通っているP5(小学5年)の日本人男子T君・お母様に感想を伺いました。

Hさんの感想

Q:ローカル校の特徴は?
ローカル校は、「自由さ」を尊重してくれていると思います。成績だけではなく、生活態度や*CCAを含め評価されます。例えば、私は生徒会のリーダーをしていたので、成績の総合評価に反映されました。ローカル校では、この様にCCAのリーダーを務めたり、キャンプのリーダーなどいろいろな方法で生徒が活躍できる場を作っていると思います。

Q:外国人生徒の割合は?
私が通っていた学校では、外国人は少なく、20人に1人位だったと思います。外国人生徒であっても、皆と同じという認識でした。

Q:ローカル教育を受けて感じたポジティブな点は?
シンガポール人として、インター校に通うことは通常認められていませんが、もし認められていたとしても、ローカル校を選ぶと思うくらい、学生生活はとても楽しく充実していました。沢山の貴重な体験ができ、親友たちができたからです。また、他校の生徒の前でスピーチをしたり、リーダーとしてキャンプの計画を立てたりしていました。この様な経験を通して、今の自分があると思っています。

Q:反対にネガティブな点は?
「自由さ」があるという点で、勉強をおろそかにしている生徒達もいましたが、自分のしたいことを理解していて、良い仲間がいれば大丈夫だと思います。

Tくんの感想

Q:学校は好きですか?どんなところが楽しいですか?
ローカルの学校は楽しくて、友達と遊べる休み時間が好きです。いろいろなスポーツができるスポーツデーが楽しみで、勝ってメダルが貰えたときはとても嬉しかったです。算数は詳しく教えてくれるので好きです。

Q:難しいなと思ったことは?
中国語の発音が難しく勉強が大変でした。

T君のお母様の感想

Q:ローカル校に通わせようと思った理由は何でしょうか?
永住権を取得できた時期が、ちょうど息子の小学校入学手続きの時期だったので、シンガポールに住み、永住権があることを最大限に活かしていきたいと思ったこと。また、子どもにはどんな人種の人たちとも仲良くなれる人に育って欲しく、ローカル校はその環境を与えてくれると思ったことです。

Q:入学させるまでに苦労した点はありますか?
ローカル校について下調べしていたわけではなかったので、情報がなかったことや、どこの学校がどんな校風なのか、そもそもローカル校の制度を殆ど知らなかったこと。入れてみて驚くことや戸惑うことも多かったけれど、学校からの連絡や学級の親たちのチャットグループがあったので、徐々になれていきました。

Q:中国語に関してどう思われますか?
P3(小学3年)より中国語の内容が難しくなり、日本語の勉強もしていたことから、本人の負担も大きくなってきました。第二外国語として日本語を選択していたこともあり、日本語自習に切り替えました。本人は日本語が好きで、家庭でも日本語を優先していきたかったので、親子共々納得して決めました。日本語の自習は、漢字の練習や問題集をしています。

Q:ローカル校では体育・音楽・図画工作の時間はありますか?
体育はありますが、日本よりも簡単にできる内容が多い印象です。日本のように縄跳びやドッジボールなど、もっと取り入れてほしい感じもあります。音楽・アートのクラスもありますが、カリキュラム的には少なめだと思います。興味のある生徒は、CCAで選択することができます。国民としての道徳教育はしっかり行われていて、麻薬の危険性・テロの脅威・サイバーセキュリティ・性教育など、幅広く教えてくれている印象があります。

Q:ローカル校に通わせて良かったと思いますか?
はい、ローカル校の選択は良かったと思っています。多人種の子ども達と友達になり、文化や宗教の多様性に小さな頃から触れられるのは、視野を広げるのに役立つと思っています。シンガポールの『教育』にかける真剣さ、柔軟さ、予算の大きさ、大臣の質の高さに安心感もあります。

*CCA(Co-Curricular activity)とは、ローカル校が行っている、ダンス・アート・スポーツ・グループ活動などの課外活動のこと。

 

外国人のローカル小学校入学への課題

外国人がシンガポールのローカル小学校に入学する際は、シンガポール国民や永住権保持者に比べて非常に低い優先順位に位置付けられています。入学は残席があることが前提で、人気のある学校の競争率も激しいため、他の選択肢(インターナショナルスクールや日本人学校など)も考慮する必要があります。中国語の授業は必須ではなく選択肢として提供されますが、学校により特色もさまざま。是非、希望する学校のリサーチを入念に進めてみてくださいね。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。


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この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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