「小さな命を守りたい」その気持ちはシンガポールでも同じ。子猫を保護する「Kitten Sanctuary」を取材しました

シンガポール動物虐待防止協会(The Society for thePrevention of Cruelty to Animals Singapore=SPCA)の年間レポートによると、2018年7月1日〜2019年6月31日までの間に猫が保護されたり、飼い主から処分を求められたケースは合計977件

その中で引き取り手が見つかったのは398件。他は迷い猫で飼い主の元に戻ったり、去勢後地域猫になったりが279件。その他は病気などで殺処分しかなかったケースが104件(3件は生後間も無くから3週間の子猫)。
残りは不幸にも保護先のシンガポール動物虐待防止協会で病気などで亡くなったケースです。

SPCAが関わっていないケースでも他に大量遺棄(16匹)や多頭飼育崩壊(2017年97頭)などもありました。虐待ケースも報告されています。

人間として色々考えさせられることもあります。でも捨てる神あれば拾う神もある。ひどい人間もいれば、優しい人間もいます。動物を守るために立ち上がる人たちもいます。それは日本でもシンガポールでも同じこと。お金も根気もそして溢れる愛情が必要な保護活動をする人たちには頭が下がります

本当に大変な子猫の保護と世話

生まれてから4週までの赤ちゃん猫は、人間と同じように3〜4時間ごとに授乳します。排泄に至っては人間の赤ちゃんよりも大変。本来母猫が刺激して排泄させるので、世話する人が濡れたコットンなどで刺激を与え排泄させます。
諸々の事情が重なり授乳期の赤ちゃん猫は安楽死させる場合が多くなるのも事実です。ボランティアも数が限られ1匹に人手が割けないから、泣く泣く…。

そんな困難を物ともせず、進んで子猫のレスキューを行っているのが、今回訪れた‘Kitten Sanctuary’です。

創始者のジェシカ・シートさんは2015年にCat Museumとして、世界から集めた猫のアートや猫テーマの製品の展示と、猫についての教育&保護猫施設をオープン。
最初の1年で120匹もの猫達に新しい終の住処を見つけるという素晴らしい成果を上げました。2018年のレンタルの問題で施設が閉鎖になるまで、多くの猫と人のご縁を紡いでいました。

人と猫との繋ぐKitten Sanctuary

その後、Cat Museumが閉鎖してから苦節1年、80件もの物件を周り、やっと出会ったのが現在のKitten Sanctuary。
場所はシンガポールの中心エリア・アラブストリートに程近い、ノースブリッジロードのショップハウスです。

かわいい看板がかかったドアのベルを鳴らすと、満面の笑みでドアを開けてくれたジェシカさん。階段を上りドアを開けると、明るい室内に沢山の猫達がいます。入り口すぐのリビングにいるのはにゃんこ幼稚園の猫さん達。でも夕食前で訪問者には関心なし(笑)。

まず驚いたのは、猫トイレの臭いがない事です。
猫は可愛いですが、正直猫トイレの臭いは強烈。20匹いて無臭というのは、本当にケアが行き届いている証拠です。60人のボランティアの方々が交代でお世話してくれているからでしょうね。ボランティアは2部交代制で、この日は3人の方がいました

リビングにいるのは、元保護猫で現在ではKitten Sanctuaryの永住者であり、にゃんこ幼稚園で大使(先生?)としてお客様の接待&エデュケーションのお手伝いをしている子たち。

「たった1度の出会いが生涯を変える出会いになる。そういう場所を作りたい」

熱く語るのは、ジェシカさん自体がそんな出会いをしてしまったから。彼女がグランパと呼ぶブラッディ(エキゾチックショートヘア 17歳)と運命的な出会いを果たしたのが、ジェシカさん38歳の時。当時の男友達が「君は気まぐれで猫みたいだから、猫飼ったらいいよ」と無理矢理毎週ペットショップへ。

嫌々行っていたのに、ある週末ブラッディを抱いた瞬間恋に落ちた。そこからジェシカさんの運命は大転換!

ブラッディ まだまだ可愛い17歳(人間だと84歳)

ラジオDJだったジェシカさんが、17年後の今では特定非営利活動法人動物福祉団体(長い!)を運営しているという、仰天チェンジの幕開けでした。

こんな感じで猫たちがはしゃいでいます

Cat Museumを作ったきっかけ

Kitten Sanctuaryの前身となるCat Museumを作るきっかけになったのは、DJを辞めてスピーチコーチング会社を起業し、何気なく聞いた話から。10人ほどいた生徒(実業家など)の中、猫に触れたことがある人はたった1人だったという事実。皆、ジェシカさんと同じように猫に触れた事もなく、猫について何も知らない。だからこそ、イメージだけで怖いとかひっかくとか敬遠してしまう。

だったらとてもいい出会いの場を見つけてあげたら、自分のように世界が変わる出会いになるかもと思い、私財を投げ打って始めたそう。

モールで開催される譲渡会に疑問

ジェシカさんが疑問に思ったのが、なぜ譲渡会をショッピングモールの一角でやるのかということ。慣れない環境や音の洪水、他の動物の臭いなどがある場所で、ケージに入ったままの怯えた猫を見て、彼らの性格や可愛さや何もわからない。触ることも出来ずにどうやってマッチングするのか…でした。

だからここKitten Sanctuaryでは、猫に関して基礎知識や扱い方を知った上で里親を探している猫ちゃん達に会わせます。そしてその子達の性格や相性を見て考える。時には猫自体が新しい飼い主を選ぶ時もあるでしょう。何故だがすりすりしてくるとか、じっと顔を見て瞬きするとか、好意を示してきたり。
甘えん坊が好きな人もおっとりした優しい子が好きな人も好みは様々です。自然な形で決められるのはとても素晴らしいですね。

Kitten Sanctuaryには色々な猫ちゃんがいます

Singalifeが伺った日も色々な子がいました。10日前に保護されたFatty、Fussy兄妹は個人のお宅の庭で見つかりました。お宅の持ち主からビニール袋に入れられて物のようにゴミのようにポイっと。

白黒の3兄弟は工事現場で保護。大型トラックが行き交うので危ないからと心配してくれた工事現場のおじさんが連れて来ました。みんな生まれたてで目も空いてない状態で保護されました。

今では目も開き、旺盛な食欲を見せて順調に育っています。優しいボランティアさん達に愛されて健やかに育っています。
日本人ボランティアの1人みすずさん(愛称ミミさん)は「自宅で猫を多頭飼いしていましたが、シンガポールでは飼えないので代わりにここの子達のお世話をして、彼らから温もりをもらっています」と笑顔で語ります。ミルクを上げる姿は正に聖母。

里子候補の子達がいるのは奥のお部屋。ママと一緒に保護された子達もいます。ママさん達もノラちゃんだったとは思えない、素直な目をした猫ばかり。生きるために闘う日々は終わり、人を信じる気持ちが芽生えたのでしょう。まだまだ若いママ猫達は落ち着きもあり、初心者にもぴったりです。

水頭症の子や骨盤を踏まれて後ろ脚が不自由になった子も

この中に気になるのが水頭症の男の子。体が小さすぎて手術が出来ないのでなんとか大人になるまで頑張って欲しい!指を入れたらすり寄ってくる、とても人懐っこい子です。

ジェシカさんが忘れられない子、パンダちゃんも水頭症でした。タキシード模様の白黒の可愛い子でしたが、闘病の甲斐もなく突然頭の腫れが悪化したため、この世を去りました。その時は涙が止まらなかったと言います。だから無事大人になれるように祈るしかないとジェシカさん。

今までで400匹以上が幸せになりました。心ない人に骨盤を踏まれて後ろ足が不自由になったタイガーリリーもその1匹。ある保護団体はタイガーリリーと同じような子を安楽死させました。楽しい人生が送れないからというのが理由だったそうです。でもビデオの中のタイガーリリーは前脚だけで猛スピードで走り、生き生きと遊んでいました。それを見ると楽しい人生が送れないというのは誰が決めることなんだろうと考えさせられます。

タイガーリリー。2019年6月に保護され、12月には優しい方のおうちに行きました


車椅子も用意しましたが、嫌いだとか。前足で猛スピードで走り回っているそうです♡
タイガーリリーの様子は動画からどうぞ。

ふれあいセッションのお知らせ

Kitten Sanctuary では毎週土日にふれあいセッションがあります。外出制限措置期間中は中止していましたが、フェーズ2に入って再開しました。
ぜひ行ってみてください。お子さんにもおすすめです。飼うことができなくても、行って触れ合うだけでお子さんの心の成長にはきっとプラスになります。
そしてふれあいに必要なS$20は動物病院の費用などに使われますので、Wハッピーになりますね

◆ふれあいセッションの詳細
開催日:毎週土曜と日曜
時間:
1)10:30〜11:30
2)12:00〜13:00
3)14:30〜15:30
4)16:00〜17:00
 (※7月、8月は、土日以外にも、火、水、木の11:00〜12:00も追加で開催。8月以降は直接ご確認ください)

定員:5人まで(通常より人数を減らしています)
参加費:$20
場所:737A North Bridge Rd, S198705
連絡先:https://kittensanctuarysg.org/shop/ こちらからご予約ください

よく訪問者から、他のキャットカフェとかだと猫が寄って来ないけど、ここは違う。みんなフレンドリーと驚かれるとか。確かに皆フレンドリー。黒猫ママさんと保護されたチビっこ黒ちゃんは髪の毛やスカートにじゃれつき、可愛い!

写真 ママさんに瓜二つ。お茶目な可愛い子です。

写真 こちらはキャティオ(パティオ)奥の部屋から出ることが出来ます。

左からボランティアのリーピンさん、責任者のジェシカさん、ジャシンダさん、みすずさん

現在、収入源がなく、Kitten Sanctuary も賃料や医療費で厳しい状況です。それでも救いを求める猫達は頼ってきます。

QRコードやPayNowなどで簡単に寄付することができます。宜しかったらウエブやインスタグラムをご覧ください。詳しい支援の方法も書いてありますので、皆様の支援をお願いします


Kitten sanctuary https://kittensanctuarysg.org
寄付の詳細ページはこちらから

ジェシカ・シートさん
シンガポール国立大学卒業後、90.5FMやClass95FM DJ/ディレクターとして活躍。Art of Voiceを起業しボーカルスピーチトレーニングやスピーチライター業に従事。現在はセミリタイヤ。

この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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