遠隔決済、回転式手すり?!シンガポールの大学生たちがデザインした「パンデミック対策バス」が世界的コンテストで優勝
写真提供:Northwestern University
2020年6月に開催された、公共交通機関のパンデミック対策のアイデアを競うコンテストで、23歳のシンガポール人で米国ノースウェスタン大学出身のライアン・テオさんを含むチームが、「未来のバス」のアイデアで、優勝を果たしました。
このバスの最大の特徴は、バスの乗降口が車両のサイドすべてにあり、運賃の支払いもカードリーダーなどの機器を使用せずに行える他、紫外線(UV)で殺菌された回転式の手すりがある点です。さらに、これまでのバスの乗車定員を減らさずに、ウイルスなどの感染対策を取れるようになっています。
テオさん以外のメンバーは、香港理工大学のヤン・シュンリーさん、ハーバード大学のウィリアム・マーさん、上海交通大学のリー・シンさん。テオさんはZoomミーティングで、たった1日で「未来のバス」のアイデアを作りました。
「シンガポールが世界で最も優れた公共交通システムの一つであることは、明らかです。とはいえ、世界のどの国も交通機関の感染症対策を徹底できていません」とテオさんは言います。
このコンテストは、上海交通大学が主催し、世界から52の大学、200人以上の学生が、24時間限定の「デザインスプリント」で競い合いました。
チームはランダムに形成され、打ち合わせなどはリモートのみ。優勝したテオ氏のチームは賞金5万元(1万シンガポールドル)を獲得。その作品は、アメリカや中国、スペインなど各国のメディアから注目を集めました。
このアイデアの優れた部分は、独創的でありつつも、すでに利用可能な技術を応用ている点です。さらに、コスト面と実現可能性においても、現実的なものとなっています。
例えば、「未来バス」の回転する手すりは、米国シカゴ・オヘア空港のトイレににある、使用後にカバーが回転する便座にヒントを得ています。この回転する手すりは、車両がバス停に着くたびに360度回転して清潔さを保ちます。遠隔決済システムもすでに存在しているものを応用。
テオさんは、通勤者がビーコン付きリストバンドやカード、キータグを携帯してバリアフリーのエリアを歩くだけで、カードをタップしたり、ゲートが開くのを待つ必要がなく、運賃が自動的に引き落とされる仕組みを利用しました。「私達は乗客の接触・接近を最小にするためにバスのフロアプランを設計しました」とテオさん。
また、他の問題は比較的ローテクな方法で解決。テオさんのチームは、普段バスを使っている労働者にインタビューを行い、公共交通機関にプライベートな空間を求める声があることを掴みます。これを実現するため、未来のバスの座席の向きを交互に変え、隣り合う二人が同じ方向を向くことがないようにすることで、それぞれの乗客に「半プライベート空間」を作り出しました。
「今後数十年にわたって定期的なインフラの改善が行われる中で、感染症対策は将来の設計基準の一部として考慮されるべきだと思います」とテオさんは付け加えました。
この記事を書いた人
SingaLife編集部
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