【2023年版】シンガポールの祝日ハリラヤプアサとは?イスラム教徒にとってのお正月をご紹介!

シンガポールの人口の約13%を占めるマレー系の人々のほとんどがイスラム教徒。彼らはイスラムの厳格な教えを守りながら生活しています。そこで今回は、シンガポールに住むマレー系イスラム教徒の神聖なラマダンの断食明けを祝うハリラヤプアサについてお伝えします!




イスラム教の祝日、ハリラヤプアサとは?

「ハリラヤプアサ」は、ラマダン(断食)明けを祝うイスラム教における最大のお祭りです。この日、シンガポールは祝日でお休みになります。(2023年のハリラヤプアサは4月22日です)

イスラム教徒にとってとても大切な宗教行事がラマダンです。ラマダンとはイスラム歴の第9月に約1か月間行う断食のことで、この期間イスラム教徒は日の出から日没まで飲食せず神の恵みに感謝します

この期間は食べ物だけでなく水分の摂取も禁じられていますが、日の出前にしっかり水分を取り脱水症状にならないように気を付けています。日没後は1日分の食事を摂取できるので夜食が盛大になり、食費がかさんだり太ってしまう人も!断食のレベルにも差があり、日中は自分の唾液すら飲み込まない人もいれば、重病人や高齢者、妊婦や乳幼児は断食を免除されることもあるそうです。

ただラマダンの目的は単に食事を断つことだけではなく、この期間にさまざまな欲望を抑え、自身の信仰心を深めることが本来の目的とされています。イスラム教徒にとって断食明けが一番の祝日となり、厳しいラマダンを終えたことを盛大にお祝いする「ハリラヤプアサ」のお祭りが行われるのです。

※各国で呼び方は異なりますがシンガポールでは「ハリラヤプアサ」と呼ばれています。



ナイトマーケットでラマダン明けの準備!

シンガポールのマレー地区として知られるゲイラン地区は、ラマダンの時期にだけ開催されるナイトマーケットで大賑わいです。ラマダン期間中は毎晩開催され、宗教を問わずたくさんの人が立ち寄ります。

昔ながらのマレー風屋台からインド風、トルコ風、おしゃれなスイーツの屋台など多数出店し、その他に絨毯、カーテン、クッションカバー、アクセサリーなど様々な商品も販売されます。ここで衣服を新調したり調度品を揃えたり、お祝いのお菓子を買ったりして、ハリラヤ当日を迎えるための準備をします。

家中の大掃除、飾り付け、贈り物や食料品の買い出しなどを終えてハリラヤを迎える様子は、日本のお正月を迎える準備にも似ています。

またラマダンの開始に伴い、毎年行われているのが「ハリラヤ・ライトアップ」。シンガポール最大、最古のイスラム寺院「サルタン・モスク」のあるアラブストリート周辺やゲイラン・セライ周辺が華やかにライトアップされ、キラキラ光るイルミネーションは見ているだけでワクワクします!

ハリラヤ・ライトアップのセレモニー期間中は、多彩な文化のパフォーマンスも行われます。



ハリラヤプアサ当日は?服装から伝統行事、絶品料理まで!

 

お祝いの正装

ハリラヤプアサ当日、男性は「バジュ・ムラユ」と呼ばれるゆったりとしたシャツにズボンを、女性はロング丈のブラウスとスカートを組み合わせた「バジュ・クロン」と呼ばれるマレーシアの伝統衣装を着ます。

イスラム教徒は肌の露出や体のラインを出すことがよくないとされているため、袖や裾ともに丈が長く全体的にゆったりとしたデザインになっています。シルクやバティックと呼ばれるマレーシアのろうけつ染め布地で仕立てられており、デザインも豊富!何もついていないシンプルなものからビーズなど装飾品があしらわれているもの、カラフルな色合いのものや繊細な刺繍が特徴的なものまで様々です。

シンガポールのマレー系の多くは同系色の衣服を新調して着用します。衣装を新調することも、ハリラヤプアサを迎える楽しみの一つです。



ハリラヤプアサの過ごし方

当日はモスクの訪問から始まり、イスラム教徒はこの日のために新調した伝統衣装を着て、モスク周辺で参拝を行い特別な祈りを復唱します。多くのマレー系シンガポール人はイスラム教を信仰し、シンガポールには様々なモスクがあります。

モスクでの参拝を終えたイスラム教徒は両親を訪問。その年の悪い行いに対して、年長者に許しを求めるのが伝統になっています。さらに親戚や友人宅を訪問し、行く先々でおしゃべりとご馳走を楽しみます。

家族を大切にするマレー系ファミリーは親族が一堂に会する大切な日に、お祝いのお菓子や手作りのご馳走を用意してハリラヤプアサを迎えます。



祝賀の食卓

ハリラヤプアサの食卓には、牛肉をココナッツミルクなどで煮込んだルンダン(rendang)、ココナッツの葉で包んだ餅のようなクトゥパット(ketupat)、スパイシーな野菜カレースープに、ご飯の団子を浮かべたロントン(longtong)などの料理が並びます。

まず、ハリラヤプアサに欠かせないのがクトゥパット。クトゥパットはインドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、フィリピンといった東南アジア島嶼部で広く日常的に食べられています。ヤシの葉やココナッツの葉を編み込んだ入れ物にお米を入れて蒸した、マレー風のちまき。何も味をつけない地方もあればココナッツミルクや塩で味付けをする地方もあり、普段から料理の付け合せとして食べられています。

ルンダンは数種の香辛料や香味野菜、ハーブやココナッツミルクを使ってじっくりと煮込んだ家庭料理。豚肉を禁忌とするイスラム教徒は牛肉を使います。「世界で一番おいしい料理」に選ばれたこともあるルンダンは、スパイスの旨味と長時間煮込んだ柔らかいお肉でご飯が何杯でも食べられそう!

ロントンマレー風スープカレー雑炊。バナナリーフにお米を詰めてつくるロントンと様々な野菜を、カレーパウダーとココナッツミルクで味付けしたスープに入れて煮込みます。唐辛子、にんにく、レモングラスなどの香辛料の香りとココナツミルク多めで甘さが特徴です。



【番外編】SingaLifeスタッフのラマダン明け(イフタール)の食卓をご紹介

上記でも説明した通り、ラマダン中は1カ月飲食をしないわけではありません。日中は飲食をしませんが、日が沈んだ後に食事をします。また、ラマダン中の食事は特別なものであり、食卓には普段は食べないラマダンフードが並びます。そこで、今回はそれぞれの国々で異なるラマダン明けの夕食をご紹介します。

パキスタン編

パキスタンの中でも地域によって食べるものは異なりますが、パコラ(野菜を油で揚げたかき揚げのようなもの)やサモサ・春巻きは定番です。ほうれん草や玉ねぎ、じゃがいもなどをよく使います。

その他に、ひよこ豆と玉ねぎを辛く炒めたものや、フルーツサラダ(フルーツポンチのようなもの)をよく食べます。

また、食事を食べる前に必ず「ナツメヤシ」を食べてラマダン明けの夕食を開始します。

パキスタンならではといえば、写真にもあるように赤い飲み物「ルーアフザ」です。こちらは赤い甘いシロップで、主に水や牛乳で割って飲みます。日本人も好きな味ですね。真夏のラマダンの場合は、このルーアフザを飲むと一気に体が満たされます!!


インドネシア編

インドネシアの断食明けの食事は、まずデーツと熱いインドネシアのジャスミンティーから始まります。

デーツとジャスミンティーで、胃を慣らしてから、まずララップを食べます。ララップとはインドネシアの断食明けの食事に欠かせない一つの食べ物で、新鮮な野菜やサンバル(唐辛子とエビのペーストを混ぜたもの)、ケルプック(インドネシアのせんべい)と一緒に食べるもので、今回はガーリック味のケルプックを用意しました。

そして、メインにはセムルダギン。セムルダギンとは肉じゃがに少し似ていて、大豆の甘みとニンニク、胡椒、コリアンダーの粉、具材は牛肉、ジャガイモ、ニンジン、豆腐で、上に揚げたエシャロットをトッピングします。そして、揚げたエシャロットをのせたご飯と、ミックスベジタブルの炒め物がセットになっています。

最後にデザートはフレッシュなフルーツをいただきます。


シンガポールで息づく古き良きマレー文化

約1か月にもおよぶ断食の終わりを祝うハリラヤプアサですが、ラマダン期間中は飲食だけでなくあらゆる世俗的な私利私欲を捨てなければなりません。自身を清めて信仰心を強める期間がラマダンです。

また貧しい人々への寄付を募ったり、恵まれない人々に日没後の夕食をごちそうしたりします。食のありがたさを知り、感謝の気持ちを仲間とともに再認識します。マレーの文化と習慣を代表するものとして、最も重要な行事であることは間違いありません。

多民族国家であるシンガポール。それゆえに様々な文化や習慣に触れる機会がたくさんありますね。それぞれの民族がお互いの文化を尊重し理解する、とても素敵な国です。イスラム文化を肌で感じながら学ぶことができるハリラヤプアサを、みんなでお祝いしましょう!



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この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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