国際バカロレアで満点取得者の半数以上がシンガポールの生徒。高得点者を輩出するその理由は。

シンガポールは、国際バカレロア(IB)の直近のディプロマ認定試験において、またしても首位に輝きました。昨年11月の試験で45点満点を取った生徒は世界で99人いましたが、そのうち半数以上の55人が、シンガポールの学生でした。

2005年に大学入学前2年間のディプロマプログラムに加入してからというもの、シンガポールの生徒は、常に世界中の高得点者の半数以上を輩出しています。2019年11月の試験では、世界での満点取得者69人のうち35人、2018年は68人中38人が、シンガポールの学生でした。

なぜシンガポールの学生は、国際バカロレア試験で高得点を出せるのか

一つの理由として、そもそもシンガポールにある国際バカロレア認定校が良い成績の生徒を受け入れているからだ、という関係者もいます。

シンガポール国立教育研究所のジェイソン・タン氏は以下のように語っています。「シンガポールには、より良い成績を求める根強い文化があります。生徒は皆、プログラムが最終的に大学への切符へと繋がることを意識しているため、皆それに重点を置き、結果的に好成績がもたらされているのです。」

聖ジョセフ校のエイドリアン・アンカー校長は、国際バカロレアプログラムを受講する生徒は、同校の統合プログラムまたはOレベルプログラムのどちら出身であっても、高い学力を備えていると言います。「生徒たちは良いスタートを切り、他の教科について深堀り学習することができている」と語りました。

教育業界の成長も、国際バカロレアでの好成績の一要素となっているかもしれません。国際バカロレアの教育センターの一つ、スーパー・センターでは、地元校から学びに来る生徒数は過去4年間で30%増加し、マインドラボ・センターでは、過去5年間において前年比20%の割合で増加しました。マインドラボのディレクターであるマシュー・リー氏は、「ほとんどの生徒が、試験の準備のための指導を受けに来て、重要科目について磨きをかけています」と話します。

一方で、スーパー・センターの創立者ベル・フワン氏は、シンガポールのローカルの認定校においても十分なプログラムが提供されていると語ります。彼女によると、ACSインターナショナルスクールでは国際バカロレアの4年間コースが提供されていますが、ローカル校ソタでも同様のプログラムが実施されているそうです。

国際バカロレアは勉強だけではだめ

しかし、国際バカロレアのプログラムは、単純にひたすら勉強すればよいということではなく、良い成績を取るためには、深く鋭い思考が必要とされています。

聖ジョセフ校で国際バカロレアのコーディネーターを務めるタン・ウォ・ウン氏は、以下のように語ります。「国際バカロレアの試験は暗記は役に立ちません。解決策を導くために、理論を応用することが必要なのです。

口頭試問を伴う研究調査は、2年間にわたるプログラムの重要な一面であり、試験全体の20~40%の得点を占めます。そして、最終試験で残りの得点を競うこととなるのです。プログラムの過程で、生徒達は自身の選択に基づく関心事項を探求するという経験を積みます。

タン氏によると、4,000字の小論文作成を通じて、生徒達は科目を超えて学問を追究することができるそうです。カン氏は、「研究調査のテーマを選ぶのは生徒自身ですので、モチベーションも高いです。例えば、昨年には、『1970年代にシンガポールの出生率が低かった理由』や『2003年に米国がイラク戦争を起こした理由』といったテーマを選択した生徒がいました」と語りました。

成績の先へ

エイドリアン氏は、「シンガポールにおける満点への執着は、生徒やその両親に極端なまでのプレッシャーを与えているため、心配です」と語っています。「国際バカロレアが目指しているのは、良い人間を育てるということであり、それこそが教育というものなのですから。」

人生のスキルを学ぶ

国際バカロレアの自律的な学習スタイルに最初は苦しむ生徒もいますが、大抵がすぐに馴染みます。聖ジョセフ校の卒業生ポルシア・リムさん(18)は、以下のように語ります。「最初はすごく困難な場所に投げ込まれたように感じたし、授業はとても難しかった。常に何かしらの締切に追われていました。でも、上級生から大学受験に役立つと聞いて、カリキュラムを進めることに決めたのです。」

生徒も教師も、国際バカロレアプログラムで学ぶ自律的学習や調査能力は、大学でも役に立つと口にしました。カン氏は、どんな科目でも調査能力は必要であり、それこそが学問の性質を表している、と述べます。

ACS校の卒業生ローレン・ツェさん(18)は、「自分で疑問を導き出し、異なる観点から考えるには、コンフォート・ゾーンを抜け出さなければいけなくなります」と語ります。

例えば、文学作品を学ぶ際に、生徒は同時に歴史上の文脈や、経済状況についても考えを巡らせる必要があるかもしれません。

学問上のスキルとは別に、生徒達はタイムマネジメントについても学びます。シンガポール・スポーツ・スクールの卒業生ニコラス・ラクマディさん(19)は、授業や試験と、彼が打ち込んでいたトライアスロンとを両立させなければなりませんでした。彼は、通常2年間のところ、3年間かけて国際バカロレアプログラムを修了しました。シンガポール・スポーツ・スクール副校長のリム・ハン・ヨン氏は、長く時間をかけることにより、選手であり生徒でもある彼らは、スポーツと勉強の両立について上手く時間をやりくりすることができるようになり、自立心と自己規律の精神が根付くといいます。

国際バカロレアは、さらに、学問を超えてより深く考える力を育てることを推奨しているといいます。エイドリアン氏は、「2年間で、生徒達は自分自身の道を見つけます。彼らは皆何かに情熱的になりますが、知識やスキルについてばかりではありません。大学にそのまま進学するのではなく、海外でボランティア活動をするために留年する生徒もいます」と語っています。

プログラムの一部として、生徒達は、人間力向上の糧となる想像力、行動力を鍛えなければなりません。この要件を満たすために、ローレンさんは中国で子ども達にピアノ・レッスンをしたり、フリスビーを教えるための企画を立案し、実行しました。彼女は、恵まれない家族のことを思いながら、将来リベラルアーツを学び、政策立案に携わりたいと考えています。「国際バカロレアプログラムを通じて、学生としての立場にとらわれることなく、学校の外のコミュニティについて考えるようになりました」と彼女は語りました。


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この記事を書いた人

SingaLife編集部

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