【第94回】[シンガポール×観光]大幅に回復してきた観光客、コロナ禍前に戻るホテル稼働率

元外交官 × エコノミスト 川端 隆史のアジア新機軸

シンガポールの街中を歩いていると、観光客らしき人々がずいぶん増えたと感じる。特にF1シンガポールグランプリのときは、オーチャードやチャイナタウン、リトルインディアといった定番の観光地では観光客らしき人々を多く見かけた。

コロナ禍前の賑わいが戻り始めていることが肌感覚で感じられる。読者の皆さんも、そう感じている人は多いだろう。では、実際にどのぐらいまで戻りつつあるのだろうか。統計で確認したいと思う。

まず、コロナ禍前の状況を確認したい。2018年は1851万人、2019年は1912万人と人口の3倍以上の観光客が毎年訪れていたことになる。ひと月あたり、おおよそ150〜170万人ほどが来ていた。ビジネスビザが不要な範囲でのビジネス活動をする客も多く入っていると思われる。

コロナ禍を迎えると、2020年は274万人、2021年は33万人まで落ち込む。月単位でみると一番少なかったのは、2020年4月でわずか750人となった。2020年10月以降は1万人台に回復した。そこからしばらく1万〜2万人前後の状況が続いたが、2021年11月に4万人、同年12月には9万人へと急カーブを描き始める。そして、2022年3月には12万人と10万人台まで回復した。

コロナ前の水準に比べると、まだ10分の1にも満たないが、これまでのさみしい状況に比べると光が差してきたタイミングだ。そして、2022年7月に入ると70万人台に到達した。7月の入国制限の大幅な緩和が効いているだろう。これでも、コロナ禍前の半分以下だが、100万人、150万人と例年に戻るのは時間の問題とみられる。

ホテルの稼働率をみると、最も低かったのが2020年3月と4月であり40%であった。思ったよりも低く感じないのは、国内でのコロナウイルス感染者の隔離に使われていたことが影響しているだろう。コロナ前は80〜90%程度で推移しており、コロナ期間中でも2021年11月は78%、12月は74%とかなり高水準まで回復した。

スクールホリデーの期間中に、ステイケーションにでかけた人も多いだろう。そして、2022年9月になると83%まで回復する。これは、コロナ前の稼働率が低めの月と同等である。ホテル稼働率については、コロナ禍前の状況に回復したと言えるだろう。

観光客数とホテル稼働率から見てきたが、シンガポールの観光業は数ヶ月もすれば完全に復活という段階と評価できそうだ。


出所)Singapore Tourism Analysis Network, Tourism Statisticsより筆者作成


*2022年10月31日脱稿

プロフィール

川端 隆史 かわばたたかし

クロールアソシエイツ・シンガポール シニアバイスプレジデント

外交官×エコノミストの経験を活かし、現地・現場主義にこだわった情報発信が特徴。主な研究テーマは東南アジアや新興国を軸としたマクロ政治経済、財閥ビジネスのグローバル化、医療・ヘルスケア・ビューティー産業、スタートアップエコシステム、ソーシャルメディア事情、危機管理など。

1999年に東京外国語大学東南アジア課程を卒業後、外務省で在マレーシア日本国大使館や国際情報統括官組織等に勤務し、東南アジア情勢の分析を中心に外交実務を担当。2010年、SMBC日興証券に転じ、金融経済調査部ASEAN担当シニアエコノミストとして国内外の機関投資家、事業会社への情報提供に従事。2015年、ユーザベースグループのNewsPicks編集部に参画し、2016年からユーザベースのシンガポール拠点に出向、チーフアジアエコノミスト。2020年12月より現職。共著書に「東南アジア文化事典」(2019年、丸善出版)、「ポスト・マハティール時代のマレーシア-政治と経済はどうかわったか」(2018年、アジア経済研究所)、「東南アジアのイスラーム」(2012年、東京外国語大学出版会)、「マハティール政権下のマレーシア-イスラーム先進国を目指した22年」(2006年、アジア経済研究所)。東京外国語大学アジアアフリカ言語文化研究所共同研究員、同志社大学委嘱研究員を兼務。栃木県足利市出身。




この記事を書いた人

SingaLife編集部

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