【第92回】[ヘルスケア×シンガポール]3人に1人以上が高血圧。食塩の摂り過ぎとローカルフードの不都合な関係

元外交官 × エコノミスト 川端 隆史のアジア新機軸

以前からシンガポールの報道を見ていて、時々、気になっていたのが高血圧についての内容だ。高血圧と言えば、塩分の取り過ぎが原因として有名であり、塩分は塩化ナトリウムが主な成分である。

最近の当地報道では、9月29日のThe Straits Timesで、健康増進局(Health Promotion Board)による「ナトリウム消費削減キャンペーン」に応じて約150のケータリング会社が低ナトリウム食塩に切り替えたと報じられた。そして半年ほど前の今年3月9日のChannel News Asiaは、2019年から2020年のシンガポールでは、18歳から74歳の3人に1人以上が高血圧だと報じた。

世界保健機構(WHO)が推奨するナトリウムの摂取量は1日当たり2000ミリグラムだが、シンガポールはその1.8倍にあたる3600ミリグラムが消費されていることが報じられた。

高血圧といえば、様々な病気の原因として有名だ。日本の国立循環器病研究センターのホームページによれば、高血圧は、脳出血や脳梗塞、大動脈瘤、腎硬化症、心筋梗塞、眼底出血を誘発しやすいと挙げられている。

こうした病気が増えれば、政府による医療補助などのコストが増大し、シンガポールは日本と争う世界一の長寿国となりつつあるなか、医療費をできるだけ増やさないことが重要な課題だ。

シンガポールでの塩分取り過ぎの原因は何か。過去の報道を紐解くと2021年12月22日のThe Straits Timesで、ホーカーセンターでお馴染みの料理に含まれているナトリウムの量が掲載されていた。読者の中にもホーカーの食事や、シンガポールのローカル料理が好きな方も多いだろう。

日本のラーメンと同じか、スープものはナトリウムが多い傾向にある。たとえば、フィッシュボールヌードルは、一食だけでWHO推奨値の1.5倍近い2913ミリグラムのナトリウムが含まれている。この報道には、ナトリウム摂取をできるだけ少なくする方法も記載されており、フィッシュボールヌードルの場合はスープを飲み干さないこと、醤油などの調味料を足さないことが記載されている。

そのほかの料理も表にまとめてみたが、お馴染みのローカルフードは、ナトリウムの含有量がかなり多いことが分かる。読者の皆さんも塩分の取り過ぎには気をつけながら、シンガポール料理を楽しんで欲しい。

ナトリウム量一覧

出所)The Straits Times, C1, 22 December 2021


*2022年10月11日脱稿

プロフィール

川端 隆史 かわばたたかし

クロールアソシエイツ・シンガポール シニアバイスプレジデント

外交官×エコノミストの経験を活かし、現地・現場主義にこだわった情報発信が特徴。主な研究テーマは東南アジアや新興国を軸としたマクロ政治経済、財閥ビジネスのグローバル化、医療・ヘルスケア・ビューティー産業、スタートアップエコシステム、ソーシャルメディア事情、危機管理など。

1999年に東京外国語大学東南アジア課程を卒業後、外務省で在マレーシア日本国大使館や国際情報統括官組織等に勤務し、東南アジア情勢の分析を中心に外交実務を担当。2010年、SMBC日興証券に転じ、金融経済調査部ASEAN担当シニアエコノミストとして国内外の機関投資家、事業会社への情報提供に従事。

2015年、ユーザベースグループのNewsPicks編集部に参画し、2016年からユーザベースのシンガポール拠点に出向、チーフアジアエコノミスト。2020年12月より現職。

共著書に「東南アジア文化事典」(2019年、丸善出版)、「ポスト・マハティール時代のマレーシア-政治と経済はどうかわったか」(2018年、アジア経済研究所)、「東南アジアのイスラーム」(2012年、東京外国語大学出版会)、「マハティール政権下のマレーシア-イスラーム先進国を目指した22年」(2006年、アジア経済研究所)。

東京外国語大学アジアアフリカ言語文化研究所共同研究員、同志社大学委嘱研究員を兼務。栃木県足利市出身。




この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!