ミレニアル世代は、曽祖父から続くホーカーストールを活性化できる?

チャイナタウンにあるHong Lim Food Centre内のにある「Tang Kay Kee Fish Head Bee Hoon」。伝統的な広東料理を提供するこの店を30歳のデビ―・ヤムさんは、継ぐことを決意し、この店の主である大叔母タン・ヨック・チェンさんを支えています。

この店は、1946年にヤムさんの曽祖父Tang PakKayさんが始めたチャイナタウンの露店が発祥です。彼が1970年代に老齢で亡くなった後、大叔母のタンさんが引き継ぎ、その後、シンガポール政府の政策の一環で国内の屋台がホーカーセンターに再配置されるときに現在の場所へ移動しました。

2016年、タンさんが人手不足のためにお店を売却しようとしてたところ、当時ニュージーランドにいたヤムさんが、自分が戻るまでなんとか売却を延期するように説得。マンチェスター大学と並行してシンガポール経営大学グローバル教育の学位を取得しているヤムさんは、この時ホーカーの行商人となることをためらわなかったといいます。

写真はイメージです

変化への抵抗

建設業に従事しているヤムさんの両親は、ホーカーの店を引き継ぐという彼女の決意を支持しましたが、飲食店ならではの長い拘束時間と体力について心配していました。しかし、2017年に彼女が実際にそこで働き始めると、苦労したのはまったく別の部分でした。

それは、75歳のタンさんと、同じホーカーで働く年配の人たちが変化に対して強い抵抗を示すということでした。たとえば、提供時間を短くするために紙箱ではなくプラスチック製の持ち帰り用容器を導入しようとしたところ、タンさんはそれを拒否し、お客さんにとって余計な費用を負担させることになると反論しました。

ランチメニューを刷新し、さまざまな種類の丼メニューを始めようとしたとき、年配の人たちは刷新することに抵抗し、これまで提供してきたメニューだけを維持することを望みました。

しかし、タンさんは「若い世代に何がヒットするか、それは若い世代だからこそ私には分かる」と強い意志でメニューを刷新。丼メニューはお客さんからは好評を得て、ランチ営業ビジネスは成功しました。

また、ヤムさんはタンさんを説得して、調理の手間がかかるフィッシュヘッドビーフンに代わって、チャーハンとホーファンの2つの料理の販売を開始し、集客のためにソーシャルメディアでの告知も始めました。

ポスターとInstagramに該当の写真を載せ、それが多くの人に知ってもらうきっかけとなった。」と、ヤムさんは話します。結果的にこれらのメニューはお客さんからは好評で、ランチ営業は成功しました。

彼女の提案のもう1つは、注文プロセスをより効率的にするためのPOS(point-of-sale)システムでした。 しかし、これに対しても大叔母は、誰かがPOS端末を盗んで、持ち帰りをするのではないかとの心配から導入を拒否しました。

燃え尽き症候群

ヤンさんが最も大変だったと話すのは新型コロナ感染拡大防止のための外出制限措置「サーキットブレーカー」が始まった最初の週だったそうです。彼女はこの緊急事態に対処するためデリバリーサービスを導入しましたが、料理に加え、配達注文、ルート、ドライバーを管理する必要があり、その調整で睡眠時間は2時間未満に。疲労のあまりに倒れてしまったこともあったと言います。

新型コロナのパンデミックにより、タンさんが営むようなホーカーのお店は、社会情勢に迅速に適応することを余儀なくされましたが、「タンさんのような高齢者は古いやり方を変えようとはしていない」とヤムさんは言います。

ヤムさんは「今も大叔母のホーカーストールに変わりはありません。彼女が自分のやり方でやりたいのなら、私はサポート役としてここにいるので、彼女のやり方を支持します。」と述べています。

今月、ホーカー文化がユネスコ無形文化遺産へ認定されたことが発表されたばかり。何世代にもわたりホーカー文化を受け継いできた人々には、さまざまな苦労があったんですね。


<店舗情報>
Tang Kay Kee Fish Head Bee Hoon

インスタグラム:https://www.instagram.com/tangkaykee/
フェイスブック:https://www.facebook.com/tangkaykee/

この記事を書いた人

SingaLife編集部

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