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[特別レポート]日本人はシンガポールのローカル校に入れるの?

世界でも一、二を争うシンガポールの教育水準の高さは、誰もが認める事実だと思います。2018年に実施されたOECDによる世界的な学習到達度調査(PISA通称ピザ)でも、シンガポールは読解力、科学的リテラシー、数学的リテラシーのいずれの分野でも2位でした。

教育の為なら、親子で日本を飛び出し、海外留学も視野に入れている家族もかなりあると聞きます。または、駐在でシンガポールに住んでいるから、若しくは現地採用でこれからもシンガポールに長期滞在予定で、シンガポールの教育を受けさせたいと思っている家庭もあるでしょう。

そこで、頭に浮かぶのは、『日本人でもシンガポールのローカル校に入れるの?』という、シンプルな疑問。そこで今回、この漠然とした疑問に答えるべく調査をしてみました。

そして、答えは『YES』日本人でも入学できます
だけれども、ここに『BUT』の一言がかなり大きく入ります
簡単に入れないということを、重々認識しておかなければいけません。
10年前よりも5年前、そして5年前よりも今、ローカル校に入れる確率は確実に少なくなってきているのが現状です。

ある、ウェブサイトの情報によると、シンガポール全体のローカル校における外国人生徒数の割合は約5%と言われています。(政府が発表している数字ではありません。)

ここからは、子どもをローカル校へ入学させたいと検討している方々に読んで頂きたい情報を書いていきます。

申請をする前に知っておかなければいけないこと

シンガポール政府の教育省MOE(Ministry of Education)のウェブサイトには、外国人の為の入学手続きについて記載されているページがあり、申請方法など必要事項はすべて明記されています。
入学方法についての説明
https://www.moe.gov.sg/admissions/international-students/general-info#preparation
MOEの規定により、外国人生徒は、学年を下げて入学することは認められていますが、同学年の生徒より2歳以上の年齢差が生じることは認められていません。

外国人生徒は、学生証(STP)の取得が必要であり、12歳以下の生徒については、規定のワクチンの接種を行っている証明書が必要です。

また、21歳以上のシンガポール国民・永住権保持者、又はシンガポールで働いている保護者の連絡先が必要となります。詳しくは上記のウェブサイトを参照してください。

中国語・マレー語・タミール語のいずれかを選択せずに、生徒の母国語を選択することは例外のケースとして考慮されますが、その場合は学校への申請後、MOE内のThe Languages and Literature の部門で審査されます。

学校とは思えないモダンなデザイン

外国人の授業料(non ASEAN)

プライマリースクールの場合 $763/月 (2020年現在)
セカンダリースクールの場合 $1420/月 (2020年現在)

 

入学者の優先順位については、ウェブサイトにも明記されています。
シンガポール国民・永住権保持者が第一次募集(Phase1)と第二次募集(Phase2)で申請が可能。その後、生徒数が定員割れしている学校があれば、第三次募集 (Phase3)で外国人が申請できるという仕組みになっています。

例年、第一次募集が始まるのが6月頃(シンガポールでは、新学年がスタートするのは、翌年の1月になります)。第三次募集は、7月から8月にかけてとなり、入学試験が9月中旬に行われ、結果が出るのは10月ごろになります。第三次募集の結果を待っている間に、インターナショナル校が8月中旬や、9月から新学年が始まってしまうので、第二のバックアッププランが必然となります。

シンガポールでは、P1(Primary 1)小学1年での入学時には、入学試験はありませんが、P2,P3,P4,P5(P6での編入は認められていない)での編入には、英語と算数のテストがあります。MOEのサイトには、十分な準備をして試験に臨むようにと明記されています。
この試験を、AEIS(Admission exercise for international students)と言います。
https://www.moe.gov.sg/admissions/international-students/admissions-exercise

9月中旬ごろに行われる第三次募集の試験を逃してしまっても、翌年新学年が始まってからの2月ごろに、S-AEIS (Supplementary admission exercise for international students) を受けることは可能です。募集は1月にあります。しかしながら、敗者復活戦と呼ばれても過言ではないこの時期の試験での入学へのキップの獲得は、そう簡単にはいかないようです。

S-AEIS (Supplementary AEIS)
https://www.moe.gov.sg/admissions/international-students/supplementary-admissions-exercise

申請方法
https://www.moe.gov.sg/admissions/international-students/admissions-exercise/application-process

もし、入学が許可されたら?

もしローカル校への入学が許可されたとしても、定員割れしている学校に入ることになるので、居住している近隣の学校に通える保証はありません。しかしながら、第三次募集が始まる際に、学校のリストが公表されるので、申請時に第3希望校まで記載できることになっています。

ここからは余談になりますが、トップスクールと呼ばれている、いわゆるローカルのエリート校への入学はバトルであり、当然のことながら外国人が入れる隙は皆無です。また、トップスクールに入るためには、優先順位があります。その順位は、

①親が卒業生であること
②兄弟がすでに入学していること
③自宅から学校までの距離がより近い生徒
④学校でのボランティア活動に親が参加しているか

などが挙げられます。ボランティア活動に関して言えば、ボランティアとして参加するのにも、その学校の面接があります。面接に合格後、一年間に一定の決められた時間数のボランティアをこなすことが条件となっています。しかしながら、これらの奉仕をしたからと言って、入学許可が下りるとは決まってはいないようです。

入学後に待ち受ける難関?

シンガポールのローカル校に入学させたい理由は、十人十色であると思いますが、概して「高い教育水準」「英語も中国語もマスターできる」というのが多いのではないでしょうか。しかしながら、現実はそんなに甘くはないかもしれないです。中国語のハードルはかなり高いと認識しておいたほうが良いでしょう。

もし、中国語が難しすぎて無理!となった場合、中国語を放棄することは許可されているようです。その場合は、「母国語」を自習する形になります。他の生徒との兼ね合いもあるので、一人図書室に行くということは認められず、同級生たちが中国語を勉強している同じクラスルームで、コツコツ母国語の勉強をすることになるようです。

そこで、中国語なしで*小学校卒業試験 (PSLE)はどうなるの?となる。

*PSLE (The Primary School Leaving Examination) とは、P6(小学6年生)で実施される、卒業試験のこと。

中国語で点が取れない場合、英語・算数・理科、この3教科の平均点を中国語とするというのが以前のやり方でした。しかし、それでは不公平ではないかという声が上がり、現在は3教科の平均点がいくら高くても、一定以上の点数はもらえない仕組みに変更となりました。こうなると、やはり中国語を勉強したほうが得ですよとなるわけだが、こればかりは中国語との相性にもよるのではないでしょうか。

はたして、日本人は有利なのかどうか?と言うと、あまり有利とも言えないかもしれない。なぜなら、日本人はいずれ本国に帰ってしまう可能性が高く、シンガポールの国にとって有益かどうか?と問われると疑問が残るのである。

ここで、ちょっと立ち止まって、シンガポールのローカル校で教育を受けさせたい理由を今一度考えてみることも必要かもしれません。

子どもにとってのメリットは?
子どもにとってのデメリットは?
期間は?(例えば、高校を卒業するまで?)
途中で日本に帰った場合はどうするのか?
日本語学習はどうするのか?
 など

実際、ローカル校で教育を受けた/受けている感想は?

シンガポールの教育システムを修了した20代のシンガポール人女性H さんと、現在ローカル校に通っているP5(小学5年)の日本人男子T君・お母様に感想を聞かせて頂きました。

Hさんの感想

Q:ローカル校の特徴は?

ローカル校は、「自由さ」を尊重してくれていると思います。成績だけではなく、生活態度や*CCAを含め評価されます。例えば、私は生徒会のリーダーをしていたので、成績の総合評価に反映されました。ローカル校では、この様にCCAのリーダーを務めたり、キャンプのリーダーなどいろいろな方法で生徒が活躍できる場を作っていると思います。

Q:外国人生徒の割合は?

私が通っていた学校では、外国人は少なく、20人に1人位だったと思います。外国人生徒であっても、皆と同じという認識でした。

Q:ローカル教育を受けて感じたポジティブな点は?

シンガポール人として、インター校に通うことは通常認められていませんが、もし認められていたとしても、ローカル校を選ぶと思うくらい、学生生活はとても楽しく充実していました。沢山の貴重な体験ができ、親友たちができたからです。また、他校の生徒の前でスピーチをしたり、リーダーとしてキャンプの計画を立てたりしていました。この様な経験を通して、今の自分があると思っています。

Q:反対にネガティブな点は?

「自由さ」があるという点で、勉強をおろそかにしている生徒達もいましたが、自分のしたいことを理解していて、良い仲間がいれば大丈夫だと思います。


Tくんの感想

Q:学校は好きですか?どんなところが楽しいですか?

ローカルの学校は楽しくて、友達と遊べる休み時間が好きです。いろいろなスポーツができるスポーツデーが楽しみで、勝ってメダルが貰えたときはとても嬉しかったです。算数は詳しく教えてくれるので好きです。

Q:難しいなと思ったことは?

中国語の発音が難しく勉強が大変でした。


T君のお母様の感想
T君のお母様の感想

Q: ローカル校に通わせようと思った理由は何でしょうか?

永住権を取得できた時期が、ちょうど息子の小学校入学手続きの時期だったので、シンガポールに住み、永住権があることを最大限に活かしていきたいと思ったこと。また、子どもにはどんな人種の人たちとも仲良くなれる人に育って欲しく、ローカル校はその環境を与えてくれると思ったことです。

Q: 入学させるまでに苦労した点はありますか?

ローカル校について下調べしていたわけではなかったので、情報がなかったことや、どこの学校がどんな校風なのか、そもそもローカル校の制度を殆ど知らなかったこと。入れてみて驚くことや戸惑うことも多かったけれど、学校からの連絡や学級の親たちのチャットグループがあったので、徐々になれていきました。

Q:中国語に関してどう思われますか?

P3(小学3年)より中国語の内容が難しくなり、日本語の勉強もしていたことから、本人の負担も大きくなってきました。第二外国語として日本語を選択していたこともあり、日本語自習に切り替えました。本人は日本語が好きで、家庭でも日本語を優先していきたかったので、親子共々納得して決めました。日本語の自習は、漢字の練習や問題集をしています。

Q:ローカル校では体育・音楽・図画工作の時間はありますか?

体育はありますが、日本よりも簡単にできる内容が多い印象です。日本のように縄跳びやドッジボールなど、もっと取り入れてほしい感じもあります。音楽・アートのクラスもありますが、カリキュラム的には少なめだと思います。興味のある生徒は、CCAで選択することができます。国民としての道徳教育はしっかり行われていて、麻薬の危険性・テロの脅威・サイバーセキュリティ・性教育など、幅広く教えてくれている印象があります。

Q:ローカル校に通わせて良かったと思いますか?

はい、ローカル校の選択は良かったと思っています。多人種の子ども達と友達になり、文化や宗教の多様性に小さな頃から触れられるのは、視野を広げるのに役立つと思っています。シンガポールの『教育』にかける真剣さ、柔軟さ、予算の大きさ、大臣の質の高さに安心感もあります。

*CCA(Co-Curricular activity)とは、ローカル校が行っている、ダンス・アート・スポーツ・グループ活動などの課外活動のこと。


子どもの将来を思い、ベストの教育を受けさせてあげたいという気持ちは、親が誰しも考えること。教育システムの選択肢は多岐にわたります。子どもをシンガポールのローカル校に入れたいかどうかは、親の一存ではいかないシステム的なところもあります。それを踏まえたうえで、検討の一助になればと思います。

入学申し込みを検討される方は、最新の情報を各自で確認して下さい。

シンガポールの学年推移

 

年齢  

日本の学齢に合わせた場合

P1 (Primary 1)

6, 6+

小学1年

P2 (Primary 2)

7, 7+

小学2年

P3 (Primary 3)

8, 8+

小学3年

P4 (Primary 4) 9, 9+ 小学4年
P5 (Primary 5) 10, 10+ 小学5年
P6 (Primary 6) 11, 11+ 小学6年
S1 (Secondary 1) 12, 12+ 中学1年
S2 (Secondary 2) 13, 13+ 中学2年
S3 (Secondary 3) 14, 14+ 中学3年
S4 (Secondary 4) 15, 15+ 高校1年
S5 (Secondary 5) **  
***Pre-University 1 16, 16+ 高校2年
Pre-University 2 17, 17+ 高校3年
Pre-University 3 18, 18+  

 

** セカンダリーは、4つのプログラムに分かれ、プログラムにより4年間で修了の場合と 5年間で修了する場合に分かれますが、通常は4年間で修了するケースが大多数であり、2025には、S5は廃止される予定です。

*** セカンダリー卒業後は、高等教育へのいくつかの選択肢があります。

きりん
この記事を書いた人
長年住み慣れたヨーロッパを離れ2016年アジアデビュー。いろんな発見を読者さんにシェアーしていきます。