一級食材を極上の鮓へと昇華させる職人技。シンガポールの「鮓煌」の作田氏の仕事とは。

シンガポール随一の繁華街・オーチャードに2020年6月に開店した鮓煌。これまでシンガポールにはなかった極上の鮓を堪能できると評判になり、連日予約で満席が続く。

鮓煌のディナーメニューは2種類のコース。一品料理を数品と握りという組み合わせ。コースで提供されるのは、北海道産の塩水うに特大車海老千葉県房総産の天然アワビといった、日本各地からの食材で、どれも一級品。一流と呼ばれる日本の寿司店でもここまで揃うのは珍しいという。
※その日の仕入れによって産地が変わります

この一級の食材を極上へと昇華させるのが、ヘッドシェフの作田氏。

ミシュラン二つ星シェフの挑戦

鮓煌のツケ場に立つのは、作田至生(さくた・よしお)氏。6月に鮓煌をオープンさせるまでは、シンガポールミシュラン二つ星の寿司店でトップシェフを務めていた。

小康和から独立することを考えていた時に、のちの鮓煌のオーナーとなる鮓好きの男性から「あなたとなら世界一の鮓屋を目指せる」と誘われ、鮓煌として独立するに至る。

その理由を「これまであったミシュラン二つ星という看板が無くなった時に、自分の腕がどれだけ通用するのか、挑戦したい」と語る。

食材の到着で始まる1日

作田氏の1日は、食材の到着と同時に始まる。
まずは、届いた食材の状態をチェック。鮓煌の看板メニューでもある特大車海老は、鮮度が何よりも大切。日本からおがくずに入れられて届くエビは、輸送中に死んでしまうことも。輸送中に死んでしまったエビは提供しない。
魚は鮮度を保つために、エラや内臓処理をして仕込みを始める

妥協なき技で食材を活かす

取材した時間帯に仕込みをしていた魚は、北海道産のマツカワカレイやコハダ、カスゴダイ。マツカワカレイは、その味と漁獲量の少なさから「幻の高級魚」とも呼ばれる。約1.8kgあるマツカワカレイに、包丁を入れて骨に身が残らないように捌く。切り身に塩を軽く振り、しばらくの間置いておくことで、臭みを抜く。

次にコハダ。小骨が残らないように捌いていく。捌き終えると、次はシメる。酢で締めることが一般的だが、鮓煌のコハダは酢ではない。何でシメるのかは「企業秘密」だそう。コハダは仕込みに手間がかかるものの、江戸前鮓には欠かせないネタ。この日のサイズでは、半身で一貫。

シャリの炊き上げ時間も予約に合わせて

鮓煌では、お客さんの予約時間に合わせてシャリを炊き上げる。例えば、6時半に予約したお客さんと8時に予約したお客さんとで発生する時間差が90分。この時間差でシャリの状態が変わるためだ。

お客さんによって食べるスピードも異なるので、最適のタイミングを見計って鮓を握る。

極上の鮓を提供するためにできることを

すべては、お客様にこれまでにない鮓を食べていただきたいから」と話す作田氏。一つひとつの仕込みを丁寧に行い、最高の状態のネタを最適なタイミングで提供するために。今日も食材と向き合う。

予約困難

2020年10月末現在で、次に予約が取れるのは21年2月。その理由は、来店したお客さんがその場で次の予約、さらにその次の予約までしていくから。鮓煌は、現在シンガポールで最も予約が困難な鮓店としても知られる。

また、酒の持ち込みができることが多いシンガポールの高級寿司店で、鮓煌は唯一酒の持ち込みをお断りしている。
日本でも入手困難なレアな日本酒をはじめ、ワインからシャンパンまで幅広く取りそろえており、「鮓煌の最高の鮓には、それに見合う最高の酒でペアリングして欲しい」。そう考える

<店舗情報>

店名:鮓煌(すしこう Sushi-kou)
住所:11 Cavenagh Rd, #01-13/14, Holiday Inn Singapore Orchard City Centre, S229616
予約方法:8591-1933 (WhatsApp)
営業時間:水〜月 12:00-15:00 18:00-22:30
定休日:火
※多くのお客様にご予約いただき、満席の状態が続いております。 ご連絡を頂戴しましたら、折り返し予約可能な日時をご連絡いたします。

この記事を書いた人

SingaLife編集部

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