【大人の社会科見学】
シンガポールで楽しむイベントその301
-カトン地区-

プラナカン文化が色濃く残る カトン地区

シンガポールの象徴といえば、マーライオンやマリーナベイサンズ、オーチャードロードなどがまず思い浮かぶでしょう。これらは中央商業地域(CBD)に集まっていますが、その他の地域にはあまり馴染みがないかもしれません。観光地は多いものの、シンガポールの伝統文化に触れる機会は少ないのではないでしょうか。しかし、そんなシンガポールにも「プラナカン文化」という独自の歴史が存在しています。この文化が色濃く残る場所が、東部にあるカトン地区です。

プラナカンとは、主に海峡植民地時代(19世紀~20世紀初頭)に、マレーシアやオランダ領ジャワなどで定住した中国系移民の子孫を指します。彼らは現地文化に溶け込み、地域コミュニティーに同化しながら独自のアイデンティティを築いてきました。シンガポールでは、彼らはエリート層として発展し、中国本土との関係よりも、英国との結びつきを重視していたことが特徴です。

カトン地区は、かつて椰子などのプランテーションが広がり、シンガポール中心部に住む富裕層が別荘地として利用していた場所です。20世紀初頭から郊外住宅地として発展し、プラナカンをはじめとする中産階級がこの地に移り住むようになりました。

特に有名なのが、チュウ・ジョー・チャットという地主の名にちなむ「ジョー・チャット地区」で、ここにはプラナカン独特のショップハウス(長屋形式の商店兼住宅)が立ち並んでいます。これらの建物は、京都の町屋を思わせるような細長い造りで、隣接して建てられているのが特徴です。

プラナカン建築の最大の特徴は、カラフルで華やかなパステルカラーの外観。3色に塗り分けられた建物群は、ネオ ゴシック様式やバロック様式といった西洋建築の影響を受け、精緻な装飾が施されています。窓や柱が美しく彩られ、ファサードには花や蔦模様のレリーフが施され、まるで宝石のような輝きを放っています。さらに、中国やインドのデザインも取り入れられており、東西文化の融合が感じられる場所です。カトン地区は、今やインスタ映えスポットとしても人気を集めています。

このエリアは、美食の街としても知られており、シンガポールを代表するラクサやプラナカン料理を堪能できるレストランが数多くあります。地元の人々も足繁く通うこの場所は、観光客にとっても訪れる価値があるスポット。散策を楽しむにはぴったりのエリアです。シンガポールの新たな魅力を発見できることでしょう。

【プラナカンに関するおすすめ書籍】

『プラナカン 東南アジアを動かす謎の民』(日本経済新聞出版社、2018年)

この本は、プラナカン文化の奥深さを余すところなく伝えてくれる一冊です。シンガポール、マラッカ、ペナン、プーケットといった東南アジアの魅力的な場所に点在するプラナカンの歴史が、鮮やかに描かれています。シンガポールに住んでいた著者が現地取材を重ねて書き上げたこの本は、プラナカン文化の理解をさらに深めてくれることでしょう。シンガポールを訪れる際にぜひ手に取ってみてください。


大人の社会科見学 筆者

森山 正明
大人の社会科見学シンガポール版は、シンガポールで生活している方々へ、シンガポールの奥深さを知ってもらいたい思いで活動を始めました。「3カ月も住んでいればシンガポールは飽きてしまう」と巷では言われますが、なかなかどうして、この地ならではの楽しみは、尽きることはありません。

2013年11月からこのサークル活動を始めて約11年。行ったイベントは、200回を超え、その中から読者の方にもシンガポールの文化や習俗について年中行事を軸に紹介をして参ります。
 
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●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。



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この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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