シンガポールの緊急通報「999」6割がいたずらや無言電話、「ピザほしい」実は重大訴えの例も

緊急通報「ピザください」

日本の「110番」に当たるシンガポール警察への緊急通報「999番」。このオペレーターを務める男性モハマド・スハイミ・アミさんは、あるとき「ピザを注文したい」という女性の電話を受けました。モハマドさんは女性に対して「あなたが今電話を掛けているのはピザ屋ではなく警察ですよ」と伝えましたが、その女性は不安そうに「ピザをください」と繰り返しました

モハマドさんは、オペレーション指令センターでの勤務歴が7年あります。電話のむこうの女性が切羽詰まった状態にあり、助けを求めているとすぐに気付きました。女性は自由に話せない状況にあったのです。

状況を知るため、モハマドさんはまず「『はい』か『いいえ』で答えるように」と伝えました。「ピザを注文しているような会話を装って居場所などの情報を聞き出し警察官を向かわせました」と振り返ります。警察は捜査上の秘密としてこれ以上事案の詳細を明らかにしていませんが、適切に対処されたとしています。

モハマドさんは「置かれた状況や問題をストレートに話せない状況の人もおり、オペレーター側がサインに気付いてあげないといけない」と話します。

現場状況を理解

シンガポールで通報を受けるオペレーターは、制限された状況にある通報者からの隠れたメッセージを読み取ることができるよう訓練されます。内部試験にもパスしなければなりません。

通報を処理するオペレーション司令センターは、2015年はシンガポール警察の中枢で、犯罪捜査に積極的に乗り出しています。徐々に拡大し複数の組織とも連携しています。

オペレーション司令センターは3グループに分かれます。

1、緊急通報グループ…電話やテキストで寄せられた緊急通報の窓口対応にあたる。
2、事件ウォッチグループ…通報から得た情報を分析し、現場に適切な人材を派遣する。現場とも密にやりとりする。
3、「センスメイキング」グループ…国内の監視カメラやSNSなどを活用して、事案の状況をわかりやすくとりまとめる。

センスメイキングの手法により、999番通報がされた瞬間から事案の情報整理を始めることで、担当者が状況をよく理解した上で現場対応にあたることができるといいます。

6割がいたずら

シンガポール警察が1年に受ける999番通報の数は100万件を超えています。例えば昨年の通報は119万件でした。1日にすると3000件以上です。このうち60%以上が子どものいたずらや無言電話です。

いたずらなどの通報はシンガポール警察を悩ませています。前出のモハマドさんは市民に向け、緊急時に限って999番通報をするよう注意を呼び掛けます。「本当に必要な人がいる時、いたずら電話のせいで警察の対応が遅れるような事態はあってはならない。通報窓口は緊急時のためにあるということが広く知られてほしい」と話します。

日本では1月10日が「110番の日」とされています。日本の警察庁は今年1月10日、全体の約2割が不要不急の通報に当たるなどのまとめを明らかにしました。シンガポールも日本も、緊急性のない通報が警察の悩みのタネになっていることは同じようです。


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この記事を書いた人

SingaLife編集部

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