シンガポールのドラッグストア「Unity」店員、家庭内暴力見抜く訓練受ける

ドラッグストア店員が家庭内暴力発見へ?

シンガポールでは近年、家庭内暴力が問題視されています。このほど、ドラッグストアや薬局の店員も家庭内暴力発見に貢献できるよう訓練を受けることになりました。訓練を受けるのはシンガポール国内に71の店舗があるドラッグストア「Unity(ユニティー)」の店員です。総人数は数百人にのぼります。家庭内暴力の被害に遭っている人や、助けを求めている人をより発見しやすくなるよう、2021年4月までに訓練を受けます。

これは、Unityがシンガポール社会家庭振興省(MSF)と協力して進めるプロジェクトの一環で、家庭内暴力を早期発見できるようにすることを目的としています。実は一部の訓練は昨年までに既に実施されており、Unityの薬剤師40人以上が受講しました。

Unityを運営するNTUC FairPrice社は、シンガポールに拠点を置きスーパーなどの小売店舗も展開しています。NTUC Fairprice社の健康部門マネージャー、アン・ソー・テン氏は3月11日、国と協力し、同社が展開するスーパーマーケットチェーン「FairPrice(フェアプライス)」にポスターやパンフレットを設置する検討をしていると述べました。

シンガポール社会家庭振興省のサン・スーリン大臣は、MRTハーバーフロント駅近くのショッピングモールVivoCity(ビボ・シティ)内にあるUnityの店舗を訪れ、家庭内暴力早期発見のための訓練を受けている薬剤師と実際に会い、会話する機会を持ちました。サン大臣は「我々は常に、家庭内暴力に遭っている人と接する『目や耳』になれるようなチャンネルを求めている。Unityの店員はその重要なチャンネルの一つだ」と述べました。

▽暴力の背景理解を
サン大臣は、1月に行われた家庭内暴力に関する検討会の議論内容に言及しました。家庭内暴力を考える際には、暴力を加えた側がなぜ暴力という手段に訴えてしまったのかの原因を慎重に見極めることが重要とされます。例えば、暴力を振るった側が経済的にストレスを感じる状態にあるのであれば、経済的支援をすることが重要となります。

家庭内暴力はしばしば、生活上の問題と関連づけて考えられてきました。貧困、不安定な雇用、結婚や子の養育をめぐるストレス、家庭内コミュニケーション不足、薬物やアルコール中毒―など問題は多岐にわたります。

検討会の参加者は家庭内暴力に関し、総合的なアプローチをとることが大切だと指摘しました。例えば、暴力を加える側が感情をうまくコントロールできず、経済的知識や困難を切り抜けるスキルが十分ではない―などといった状況が暴力につながっている場合もあるというのです。暴力を振るう側を対象にしたカウンセリングの場を設けることも提案されました。

公的部門と、社会サービスを提供する事業者が情報を共有し、暴力を振るう側が直面している困難や必要を明確化した上で、集中的介入をすべきとの提案もされました。

検討会の参加者からは、暴力そのものは容認できないと理解を促すことが大切であるとの指摘もありました。そのために、家庭内暴力そのものや、家庭の状況などについて当事者と一緒になって理解を深めなければなりません。

サン大臣は「暴力に訴えてしまう人の個別の状況を理解したベストの対処をすることが大切だ。困難を乗り切り、家庭内の調和をつくっていくことを我々が進めなければならない」と話します。

ドラッグストアの店員や薬剤師までもが家庭内暴力の改善に訓練を受けることになりました。このことからもシンガポールでの家庭内暴力の深刻さが伺えます。日用品の買い出しなどで普段から足を運ぶことが多いドラッグストアは、今後こうした国内の状況改善にどのように役割を果たしていくか、注目されます。

この記事を書いた人

SingaLife編集部

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