シンガポール開運ウォーク|第二回「並ぶ摩天楼と野外美術館」

シンガポールを歩いていると、不思議なデザインのビルに出逢います。

「これは、風水を考慮して造られたものなのだろうか」

そう思いながら見上げることも多く、好奇心をかきたてられます。中華系の人々は開運習慣を自然に生活に取り入れているそうなので、その事とも関係がありそう…。

そんな疑問を掘り下げるべく、世界的に活躍をされ、シンガポールにも多くのビルを手がけられた建築デザイナー藤堂高直(とうどう・たかなお)さんにお話を伺う企画、2回目です。


シンガポールの建築事務所にて(右端が藤堂さん)


シンガポールを代表する景観を思い浮かべると、シンガポール川の河口に林立する高層ビル群の景色が思い浮かぶ人もいると思います。そこはCBD(セントラル・ビジネス・ディストリクト)と呼ばれており、英国統治時代から続くシンガポール経済の中心地です。

今、訪れると英国統治時代の名残は開発で壊された為に皆無に近いですが、代わりに日本人建築家が設計したユニークな現代的ビルと世界的な芸術家の作品が沢山あります。更にCBDにも隠れた風水が随所に散見されております。

今回はCBD地区の風水建築と芸術作品を散策して参りたいと思います。

右側に見えるのが漢字の「貝」を表すOCBCセンター 1976年完成 設計イオ・ミン・ペイ

今回はチュリア通りに面したOCBCセンターからウォーキングを始めましょう。この建物の立面はお金を表す漢字「貝」の字が刻まれております。設計はルーブル美術館のガラスのピラミッドで知られるIMペイが行いました。1976年に完成した際は東南アジアで最高層の建物でした。

この建物の麓にはヘンリー・モーアの代表作かつ最大の作品であるブロンズ製の彫刻作品「Reclining figure 1938」があります。横たわった抽象化された人物のモティーフにした作品で見る角度により姿が変わり見応えがあります。

そこからCBDの中心に向かい歩くとシンガポール川側にUOBプラザが見えます。この建物は世界の巨匠である丹下健三の設計した建物で新宿の東京都庁と雰囲気が似ております。それもそのはず、共に同じ時期に丹下健三が設計した為です。

大きな違いとして、UOBプラザは左右のタワーの高さがずれております。東京都庁がフランスのノートルダム大聖堂に着想を得たならば、こちらは左右非対称の美で知られるシャルトル大聖堂から着想を得たのでしょうか。それぞれのタワーは八角形の平面を有しております。八角形は風水において陰と陽のバランスが丁度半々である為、安定した力と繁栄を齎すと言われております

また、高い方のタワーは高さが280メートルです。28と言う数字はシンガポールにおいては最強の吉数とみられております。二の字は両とも書き、つがいのものは増えると考えられます。八は発と音が同じで、ものが生まれ出る、アラビア数字では8ですが横に倒すと∞になります。

二と八の組み合わせである二十八は「富が無限に増え続ける」と読めます。因みに日本の姓名判断では二十八は凶数と言われております。

このタワーの麓はピロティ空間になっており、シューレアリズムで有名なダリの彫刻作品「Homage to Newton (1980)」があります。リンゴの持つ重みが彫刻全体に緊張感を与えております。更にシンガポール川に出るとフェルナンド・ボテロによる彫刻作品「Bird」があります。コロンビア出身で世界的に有名なアーティストである彼は対象を太らせると言う特徴があり、愛嬌があります。

中華系の寺院にもふくよかな金運を司る釈契此(布袋尊)がいたり、卵を生む鶏も金運の象徴なので、それとの関連もありそうですね。

 UOBプラザの向かいには鋭い三角形が目立つワン・ラッフルズとワン・ラッフルズ・プレイスがあります。これらは共に丹下健三が設計した高層ビルです。

ワン・ラッフルズが完成した際は香港のHSBCビルに抜かれるまでアジアで最も高い建物と成りました。建物の高さはUOBプラザと並び280メートルです。これはタンジョンパガー・プラザの完成で緩和されるまでシンガポールの建築法が定める最高軒でした。風水の吉数が法規にまで介入する所がシンガポールのユニークな点です。

建物の屋上階はオープンバーになっており、雄大な都市景観を楽しめます。余り知られていないのが、ワン・ラッフルズ・プレイスのロビーにある日本人芸術家、千住博の陶板作品「ザ・フォール」。滝は水(富)が流れ込むので商売繁盛に繋がりそうですね

鋭角の先鋭角の先には悪い気が流れると言われている為、タワーの鋭角の先に円をモティーフにしたシンガポールの発展を彫刻した「プログレス&アドバンスメント」を置いて悪い気を攪拌させているのも風水的景観として面白いです。



ラッフルズプレイスの広場に出ました。そこから南方へ進むと超高層ビル、レパブリック・プラザが見えて参ります。この建物も先に紹介した二つの超高層と同じ最高軒280メートルで揃っております。


設計は東京の新国立美術館の設計で知られる黒川紀章によるものです。タワーの平面は八角形になっており、上の階に行く程、八角形の平面を維持しながら小さくなって参ります。この建物の内部は効率化の為に二階建てエレベーターが用いられておりますが、利用者に聞くと案外不便と言います。

向かいにある、オーシャン・ファイナンシャルセンターには作品が多数あります。先ずは世界最大級の壁面緑化でしょう。20m ×19mの壁面となっております。その下にはオーストラリア人彫刻家ジャン・コーウィーによる「スクール・オブ・フィッシュ」があります。ガラス製の魚が全部で999匹おり、九は久とも読み、長生きや永続性を意味しております。更に個人よりも群衆の方が力が発揮出来ると言う意味も込められております

広場の中央には世界的なインド系イギリス人彫刻家アニシュ・カプアの「トール・ツリー&アイ」があります。これは無数の鏡面仕上げのステンレス鉄製の球体で出来ており、見る角度により、球体に映る周囲の見え方が変わります。球体の数がもしかしたら二十八個かしらと思い数えましたが、微妙に多かったので全てが全て風水という訳ではなさそうです。しかしながら、球体は周囲の悪い気を攪拌できるので鋭角が多いCBDでは守護の役割をはたしているのでしょう

その先にはスペイン人彫その先にはスペイン人彫刻家ジャウメ・プレンサによる「シンガポール・ソウル」と言う作品があります。風水とは関係ないですが英語、中国語、タミル語、マレー語で「国」「統合」「幸せ」等の言葉がそれぞれの言語で書かれており、文字が人体を構成しております。

更に先にはシンガポール最大の彫刻作品「モメンタム」があります。イスラエン人彫刻家デビッド・ガーシュタインによる作品でカラフルでクリスマスツリーの様な姿が目を愉しめせてくれます。これもCBD地区の入口に位置している事からその螺旋状の形態を通じて守護をしているのだと思います

少しラッフルズ・プレイスから歩くとこれまた日本人建築家、伊東豊雄の設計したキャピタ・グリーンがあります。この建物の屋上には換気の為に設けられた特徴的な赤い彫刻があります。調べてみたのですが、特に風水とは関係がないみたいです。

ロビー階にはアイスランド出身の世界的芸術家オラファー・エリアソンの照明作品と同じく世界的芸術家アントニー・ゴームリーの彫刻作品「2x2」があります。これは同じ意匠をデジタル技術と手作業で作った作品で、技術の違いを見比べる事が出来ます。

シンガポールのCBDを歩くだけで質の良い美術館を巡るのに匹敵する芸術作品群を愉しめると同時に28の吉数に囲まれた景観も楽しめます。この辺りを歩く事で、金運や仕事運もアップする事と思います!

連載第1回が大好評だった藤堂さん解説の「シンガポール開運ウォーク」いかがでしたでしょうか?

さらに第3回に続きます。ご期待ください!



藤堂高直さん

バンコク在住の建築家/陶芸家/執筆家。1983年東京生まれ。15歳で渡英し、ケンブリッジ・アート・アンド・サイエンシズ(高校)を経て、世界最古の建築専門大学AAスクールで学び、卒業後建築家としてのキャリアを開始。2016年にインドのECO WORLDパビリオンコンペで優勝、その後も数々のコンペで入選。

Instagram
ウェブサイト





この記事を書いた人

栗尾モカ

ライター/ コミックエッセイスト 美大デザイン科卒業後、航空会社CAを経て出版社へ  「女のネタ帖」(学研)「サロン・ド・勝負」「おしゃれレスキュー帖」(KADOKAWA)