駐在夫、子を育てる-37- 妻の会

これはシンガポールに駐在する妻に帯同し、“駐在夫”として家事や育児に奮闘する日々を綴ったコラムです。シンガポールのフリーマガジン「シンガライフ」誌上で連載しているものに一部加筆して、ウェブでも公開しています。

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駐在夫がいるのは駐在員になった妻(駐在夫の妻)がいるからで、駐在夫が社会的に珍しい存在であるならば、家族を帯同して駐在員をしている妻もまた社会的に珍しい存在であるに違いない。先日、駐在夫の妻たちの飲み会が初めて開かれた。

シンガポールに居住する駐在夫たちが繋がるのは早かった。自分自身が圧倒的マイノリティであることを自覚しているから、同じ立場で話ができる存在を求めていることも理由の一つだろう。新型コロナウイルスによる行動規制の合間を縫うように、歓迎会やら送別会やらを開催し、交流を深め、愚痴をこぼし、酒を飲んでいた。

一方で、駐在夫の妻たちは”夫が帯同して来た”というだけで本人同士の繋がりはない。2018年に私がシンガポールに来て以降、飲み会の開催は初めてのことだ。働いていることが理由かもしれないし、夫と子どもを自宅に置いて飲みに出るなんて、という殊勝な気持ちなのかもしれない。

駐在夫の会も駐在夫の妻の会もそこでなされる情報交換が実生活に大きな影響を及ぼす。駐在夫の会ではお小遣いの話がトピックにあがる。「他の家では、月額300Sドルをお小遣いとして渡しているらしいよ。なのでうちもそうしよう。」と。切り出された妻側は、前例がなくお小遣い水準も不明、そしてその情報が確かなのかを確認する術もないため「そうなのね、じゃあそうしようか」となり、要求が実現しやすくなる。

駐在夫の妻の会では、シンガポールでの生活状況や家事分担の話をが出たそうだ。働く妻とそうでない夫。家事分担を”してもらう”側の駐在夫にとっては「どこまで働く妻を巻き込むか」が、せめぎ合いである。

我が家では「食器洗い問題」がたびたび浮上する。食洗機がない我が家ではご飯を作っていない人が食器を洗おうというルールになっているものの、妻はご飯を作ることはなく、作るのは離乳食だけ。つまり毎回、食器洗いは妻なのだ。

飲み会で、妻が「食器類を手洗いしている」という話をしたところ、参加者の1人が「手洗いするぐらいなら、仕事の後であっても食事を作る側の方がいい」と発言したそうだ。「ほらやっぱり食洗機を買おう。それがスタンダードだよ」と言い出しやしないかとはらはらしているが、今のところその兆候は見られない。

駐在妻の界隈ではある(かもしれない)夫への確固たる要求水準は、駐在夫の界隈ではまだまだ確立されていない。駐在夫も駐在夫の妻も手探りなのである。


この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポールライフをもっと楽しく豊かに、をコンセプトに、在留邦人や短期滞在者、またシンガポールに興味がある方に、実用的で生活に役立つ情報を提供しています。