駐在夫、子を育てる-47- 観察眼

これはシンガポールに駐在する妻に帯同し、“駐在夫”として家事や育児に奮闘する日々を綴ったコラムです。シンガポールのフリーマガジン「シンガライフ」誌上で連載しているものに一部加筆して、ウェブでも公開しています。

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「子どもは親の背中を見て育つ」ということわざがある。子どもは親の行動をよく見ていて、似たような行動を取るという意味であるが、「まさにその通り」と息子に驚かされる場面が増えてきた。


1歳4ヶ月を迎えた長男・モモタ(仮名)。親の仕草を、見よう見まねすることが多くなってきた。

まずは鍵の扱い。棚に置いている鍵を手にしたモモタは、テーブルや椅子のネジ山の凹みに差し込んでは、鍵をかちゃかちゃとやっている。おそらく、玄関ドアを開ける際に、鍵穴に鍵を挿入するのを見ているためだろう。それを真似ているのだ。

次に、ダイニングテーブルの拭き上げ。毎食後、台拭きでテーブルを拭いている駐在夫の家。テーブルに置かれた台拭きを手に取り、自分の口と同じぐらいの高さのテーブルを拭き始めるのだ。爪先立ちをして、必死に手を伸ばして。その姿勢が愛らしい。「そこまで必死にならなくてもいいのよ、お父さんがやるよ」と声をかけても、本人は脇目も振らずにテーブルを台拭きでなぞっている。拭いてはいない。食べこぼしを床に散らしているだけなのだが、それはそれでいい。

極め付けは、スマホとタブレットの扱いだ。スワイプして画面を切り替えるのは、お手のもの。驚くのは指紋認証のロックを解除しようとすることだ。しかも、駐在夫の指を使って。ロックがかかった状態のタブレットを手にしたモモタ。おもむろに近づいてきて、駐在夫の親指を掴む。そして、指紋認証のセンサー部分に指を誘導する。

これまでにも、ある日突然立てるようになったり、歩けるようになったりして、駐在夫夫妻を驚かしてきたモモタだったが、この行動には心底びっくり。

まるで夫の浮気を疑う妻が、寝ている隙に、夫の指をセンサーにあてがってロック解除を試みるかのようである。「ひょっとして妻は、私が昼寝しているときに、そんな行動をしていて、それをモモタが見ていたのか」。疑念が頭をよぎる。いやまさか。ロックを解除するために、センサーに指を当てていることことまで観察されているとは。

そのうちモモタはスマホを私の顔にかざして、顔認証を解除しようとするかもしれない。現代のデジタルネイティブの子どもたちは「親の背中」ではなく「手元」を見て育っているようだ。恐ろしい。


この記事を書いた人

SingaLife編集部

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