駐在夫、子を育てる-42- 子育て罰

これはシンガポールに駐在する妻に帯同し、“駐在夫”として家事や育児に奮闘する日々を綴ったコラムです。シンガポールのフリーマガジン「シンガライフ」誌上で連載しているものに一部加筆して、ウェブでも公開しています。

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「子育て罰」という言葉を初めて目にした。新聞紙上に書かれていた嫌な響きのその言葉は、日本でじわりと浸透しつつあるようだ。「子育て罰」なんとかならないものなのか。


朝日新聞の記事によれば、子育て罰とは

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子育て世帯に冷たい日本の政治や制度、社会意識を「子育て罰」と名付けたもの

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とのこと。つまり、子育てをする親に対して、あまりに厳しい状況を批判する概念だそうだ。

一部世帯への児童手当の廃止、解消しない待機児童問題、苛烈な保育園活動(保活)などなど、日本は「子ども」への風当たりが強いように感じさせられる。手当の廃止は確かに痛手ではあるだろうけれど、それよりも痛く感じるのは、子どもに対する社会意識だ。よく耳にするのが「子どもをベビーカーに乗せたままバスに乗ったら、舌打ちされた、蹴られた」といったエピソード。行儀良くベビーカーをたたんで、子どもを片手で抱っこして、バスに乗って。そしたら、座席を誰も譲ってくれない。笑い話になりそうなぐらい悲劇的だ。

かたや、シンガポールではどうだろう。専門家ではないので、シンガポール政府の子育て支援策が十分なのか不十分なのかは分からないけれど、社会意識の面では子どもに対して温かいことは間違いない。シンガポール在住の日本人の多くは賛同してくれるはずだ。

確かに、シンガポールでの子育てはお金がかかる。生まれる前の産婦人科検診をはじめ、生まれたあとの子どもの予防接種や定期検診、それに歯科検診などなどに莫大な(と言っても差し支えないぐらいの)金額が必要になる。

民間の保険で費用の一部を賄ってはいるが、それでも日本よりはお金がかかる。保育料だって、シンガポールから見れば外国人である駐在夫の家庭には支援がないので、とんでもなく高い。月額2000ドル(約16万円)。家計は厳しい。がしかし、シンガポールは子育てしやすいなぁ、と感じることの方が多い。

電車やバスでの移動もしやすいし、タクシーも安い。レストランでは、店員さんも周りのテーブルのお客さんだって、笑顔でモモタ(仮名、1歳)に話しかけてくる。

子どもからもらう新しい視点や喜びはかけがえのないものだと思う。親の立場としては、子育ては「罰」なんかではなくて「恩恵」として考えられるようになりたい。それには、やっぱり支援も必要だし、なにより社会意識が変わってくれないと。


この記事を書いた人

SingaLife編集部