【21年9月現在】激変するシンガポール就労ビザの最新状況をプロが徹底解説!

シンガポールの永住権を持っていない外国人がシンガポールで働くために必要になるのが、就労ビザ。シンガポールには、EPやSパス、ワークパーミットなどいくつかの種類の就労パスが存在します。

ただ近年、シンガポール政府は、就労ビザに関する制度を目まぐるしく変更しています。今回は、就労ビザに関するプロであるCPAコンシェルジュ代表公認会計士の萱場さんに最新の状況をお伺いしました。

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シンガポールで就労するためにはどんなビザが必要になるか

シンガポールの就労ビザの種類で、日本人を対象としている主なビザは次の3種類です。

ーEmployment Pass(EP)
ーS Pass
ーWork Permit(WP)

もちろん、このほかにも就労ビザの種類はいくつかありますが、日本人が関わってくるものといえば、主にこの3種類になります。

EP(Employment Pass )について


専門職や経営層、管理職を対象に発行される就労ビザです。日本からの駐在員の多くが、このEPを取得してシンガポールに赴任します。有効期間は基本的に1年、2年、3年のいずれかになります。

EPには最低月額給与の基準が設定されており、国籍や年齢、学歴などによってその基準額が異なります。シンガポール政府は2020年にEPの取得に必要な最低月額給与を4500ドル(金融関係は5000ドル以上)と設定しています。

最低月額給与は、学歴や年齢に応じて異なり、この最低基準額の4500ドルは、高学歴で年齢が若い場合のケースです。例えば、東京大学卒の22歳の新卒者、といった方であれば、4500ドルでEPを申請することが可能です。

ただし、必ずしも承認されるとは限りません。30歳や40歳というように年齢とキャリアを重ねていくと、基準給与が6000ドルや7000ドルといったように増えることになります。


S Passについて


中技能熟練労働者に発給される就労ビザです。雇用しているシンガポール人やシンガポール永住権保持者の人数に応じて、政府から企業にSpassの発行枠が付与されるというシステムです。例えば、シンガポール人を10人雇用していれば、Sパス1枠与えます、というイメージです(業界により異なる)。

EPに比べて最低給与が若干低く、現在は2500ドルに設定されています。こちらもEPと同じように、年齢などによって申請可能な最低月額給与が変わります


WP(Work Permit)について

WPの中には4タイプあります。

1)住み込みのメイド
2)ナニー
3)エンターテイナー用(プロスポーツ選手など)
4)一般

WPは、基本的には単純労働である肉体労働を担う外国人が対象となっており、業界ごとに国籍要件があります。例えば、建設業であれば、バングラデシュやインド、ミャンマーなどと定められています。

日本人はこれまで、基本的にはWPの対象国籍とされていませんでしたが、2021年の7月頃に、それまでの制度が改められ、日本人でもDP保持者であれば一般のWPを取得できるようになりました。


配偶者の就労基準の変更について

DP(Dependant Pass)とLOC(Letter of Consent)について


EP等の外国人就労者に帯同する家族に付与されるのがDPです。DPはあくまで帯同家族のためのビザですので、DPのみでは働くことはできませんが、LOCという就労許可証を取得すれば、DPを持ちながら働くことができました。

しかしこの制度も2021年5月に改正され、5月1日以降は「勤務」の場合は新たにLOCを発行することができなくなりました。ただしそれと引換えに、自ら「起業」をする場合はLOCの発給が可能となりました。


起業の定義は3パターン

LOC発給の条件とされる「起業」の定義は3つあります。それぞれについてみていきましょう。

1)個人事業主になる
ACRAという日本でいう法務局のような監督官庁に個人事業を登録すれば、個人事業主になることができます。個人事業登録を行いLOCを取得すれば仕事をすることが可能になります。

2)パートナーシップとして事業を行う

3)会社を作って事業を行う
本人が会社の30%以上の株主であり、かつダイレクター(取締役)であればLOCの申請が可能です。

ここで説明したように、LOCでの起業にも3つの方法がありますが、これらについて共通しているのは、シンガポール人を雇用しなければならない点です。

起業してから初めの1年間は助走期間という位置付けで、シンガポール人を雇用せずに1人で事業をしてもよいとされていますが、LOCの更新(最初の取得から遅くとも1年後には更新の必要あり)についてはシンガポール人の雇用が条件とされています。

Q、起業してLOCで働くのであれば、個人事業主が一番やりやすいでしょうか。

そうですね。

法人を作ると、カンパニーセレクタリーやローカルダイレクターの就任、株主総会や年次報告といった法人を維持するために求められる要件がさまざまありますし、そのコストも発生します。

個人事業主であれば、そういった手続きやコストは必要ありません。また、法人の場合は、法人税の申告と自身の個人所得税の申告が必要になりますが、個人事業であればあくまで自分の所得税を申告すればよいということになります。
個人事業主は、始めやすく維持もしやすいといって良いと思います。
Q、個人事業主の登録をして、企業と契約関係で事業をすることはできますか?

できます。

ただ、個人事業として企業へサービスを提供することになるので、雇用関係では無い点は注意が必要でしょう。雇用契約ではないので、業務委託契約等に基づき、提供するサービスの条件とその対価を決めて進めることになるといえます。

2021年4月よりも前にLOCを取得して現在も引き続き勤務している人は、一般的な企業との雇用関係になると思いますので、不当解雇などの雇用法の対象になると思われますが、個人事業主はあくまで雇用されているわけではなく会社と業務委託契約なので、雇用法の対象とはならないということになるでしょう(法律事務所にご確認ください)。
Q、EPに帯同したDPの方で、意欲的な人は起業しやすくなったということですか?

そうなりますね。

起業したい人にとっては、制度が緩和されたという形です。以前までは、DPを持ちながら自分で会社を作ってLOCを出すのはNGで、MOMに申請しても却下されていましたが、今回の改正によって政府が公式に、DPの方の起業を認めたことになります。

つまり、シンガポール人を雇用するのであれば、DPであっても自ら起業し、事業を行ってよい、という形に制度変更されたといえます。



SパスとWPの違いについて

最低基準給与額の差、雇用枠の制限、外国人雇用税の支払い額の3つで違いがあります。

1)最低基準給与額の有無
Sパスには最低基準給与額(2500ドル)がありますが、WPにはその基準給与額は設定されていません。極端な例を挙げると、月額給与1ドルとしても申請することができます。
旧制度のLOCでは、月額固定給が0ドルでも申請できました。例えば、営業職など成果報酬型のコミッションのみで働く、という条件でもOKでした。しかし、WPは、月額給与が0ドルでは申請できませんので認められないということになります。

2)雇用枠
企業が当該パスの労働者を雇用できる枠が違います。WPの方がSパスよりも多くの枠を付与されます。
業種によって異なりますが、サービス業の場合は、おおむねシンガポール人2人の雇用に対して、WPが1枠付与されます。

3)外国人雇用税(FWL: Foreign Worker Levy)の支払い
SパスもWPも、雇用する人数に応じて税金のようなものをシンガポール政府に支払わなければなりません。このLevyの支払いは、EP雇用の場合にはありません。
業種によって異なるものの、SパスとWPでは、月額百数から数百ドル程度を納付しなければなりません。企業にとっては、その分がコストになります。
労働者側が支払うことはありませんが、会社側からみれば、給与以外にFWLというコストが発生するので、人件費としては負担増になるといえます。


ビザ改定の背景をどのように捉えていますか?

シンガポール政府は、もちろんシンガポール人の雇用を最優先で考えています。それをベースに考えると、外国人へのビザ支給に関して、政府の政策は一貫していると思います。

WPはシンガポール人がやりたくない仕事(建設業や清掃業など)を外国人に担ってもらい、EPは高度な職業という位置付けであり、シンガポール政府の政策の趣旨に合致していると思います。

つまり、DPの方にWPを出したとしても、もともとシンガポール人がやりたくない仕事なので、シンガポール人の雇用を奪うことには繋がらないという整理だと考えています。


ビザの厳格化について

シンガポールは毎年のようにEPを発給するための基準が引き上げられて、ここ1年はとくにEPが承認されることが難しくなったと感じています。

そもそもEPを申請した場合、MOMの返答には三つのパターンがあります。

1)すぐに承認
2)すぐに却下
3)追加資料の提出を求められる

1と2は、分かりやすいと思いますが、問題は3のパターンです。

3の場合は、承認もしくは却下という結果が出る前に、監督官庁のMOMから追加資料の提出を求められます。その資料は、例えば、銀行明細や既存顧客のリスト、さらには事業内容をもう少し詳しく教えるようになど、項目はさまざまです。

却下の場合では、却下された理由が添えられていることが多いです。ここ最近で多いのは「その人には、この給与が見合わない」というものです。この「見合わない」のはどういう意味なのかを考えると、高すぎるのかそれとも安すぎるのか、どちらに取ることができます。

「見合わない」と記述されている一方で、「高すぎる」と明記されているケースもあります

例えば、申請者の学歴や年齢、職歴などを勘案した上で、EPの最適月額給与(4500ドル)ギリギリで申請しても、MOMから「高すぎる」と言われることもあります。月額最低給与なので、これ以上下げると最低月額給与に届きませんし、上げれば高すぎるとなりますので、そういったケースは、「そもそもその人にはEPは承認しない」という意味なのではないかと思っています。

ここ最近の傾向としては、若い人のEP申請が却下されるケースが目立ってきました。20代や30歳前後でも、却下されています。

EPは、人材用語で「PMET※」、つまり高所得を期待できる外国人が対象です。そうした高度な人材が、シンガポール人にそれらのスキルを教えた上で、いずれ母国に帰ってもらう。EPはこういった趣旨のビザなのだと思います。

そう考えると、年齢が若い人がシンガポールに来たとしても、シンガポール人に教えることはないだろうと政府が考えている可能性は否定できません。

※PMET
Professional
Managerial
Executive
Technical

もう一つの要因を挙げるとすれば、今まで新型コロナウイルスの影響で外国人がシンガポールに入国するのが難しい状況が続いていました。もしかすると、新規のEPの申請をコロナの入国制限に合わせて厳しくしていた、という可能性もあります。そうであるならば、国境が再開するに従って、申請したEPが承認される確率が上がってくるかもしれません。


シンガポールで就職希望の方へメッセージ

シンガポールは物価が高く、日本と比べても1.3倍〜1.5倍ほどではないでしょうか。従って、稼ぐ場所としてはいいと思います。

物価の高い国で稼げるスキルを身につければ、他の国どこに行っても働けると言っても過言ではありません。もちろん、シンガポールで働いたキャリアは、光るものになると思います。


CPAコンシェルジュ萱場玄氏オンラインサロンのご紹介

2016年から、フェイスブックの秘密グループのような中で、概ね週に2回、テキストで今日のようなビザ関係、税金や会計、雇用、登記、国際税務といったお話をお送りしています

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<取材協力>

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この記事を書いた人

SingaLife編集部