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シンガポールのスポーツ事情&ユニークなスポーツ機器の秘密に迫る

あなたはどれ位の頻度でスポーツをしているだろうか?朝晩ランニング、週末のゴルフ、日々筋トレに励むなど、健康を保つために自分のペースで体を動かす人も多いのではないだろうか?

自らも筋トレ好きな筆者の周囲には、スポーツビジネスの業界に携わる人も多いが、今回は、世界を舞台にスポーツ機器販売からサポートまで幅広く担当するスポーツメーカーRapsodo(ラプソード)社のシニアビジネスディベロップマネージャー、宇野カルロス冠章(うの・かるろす・かんしょう)さんにインタビュー。本社があるシンガポールのスポーツ事情や自身の企業で扱っているユニークなスポーツ機器などについて話を聞いた。

実はスポーツ好きも多いシンガポール。まずはシンガポール(&近隣諸国)の最新スポーツ事情を教えて

シンガポール政府は2012年に「スポーツを通じてより豊かな生活を送ること」を目的とした“Vision2030”を掲げし、生涯スポーツの推進のため“ActiveSG”などのアプリを普及させています。スポーツが持つ本来の意味(“Live Better Through Sport”)を体現していると言えますね。

東南アジアに目を向けると、1959年から2年に1度、東南アジア諸国内で開催されている “SEA Games”を通じて、スポーツの競技レベルの底上げが見られます。

人種や宗教も異なる多民族の東南アジアにおいて、競技スポーツは多岐に渡り、インドネシア・マレーシアでは「バドミントン」、タイ・ベトナムでは「サッカー」、フィリピンでは「バスケットボール」、シンガポールは「卓球」「水泳」などが盛んで、中にはオリンピックで金メダリストの出現や欧米のトップリーグでの活躍なども少しずつ見られ始めています。

なるほど。では、プロスポーツではなく、シンガポールの一般の方向けにお勧めスポーツはある?

やはり、ランニングと水泳でしょう!何と言っても、道具無しで今日からでもすぐに始められる手軽さが魅力ですね。シンガポールは暑いので室内スポーツもお勧めではあるけれど、人が集まらないとできない競技も多いし、今のご時世では室内に複数でこもって行う種目より安全性が高いと思います。

走る・泳ぐタイミングや時間も自分次第で決められるので、まずは仕事の前後・間、30分位からスタートしてみるとか、自分のやりやすいペースで始めたら良いと思います。シンガポールは、日本と比べて残業や飲み会などが少ないし、割と早起き派も多いので、より健康的になるための手段として、早朝の「ゴールデンタイム」をフル活用するためにも、ランニングと水泳は効果的だと思いますよ。

ご自身は今どんなビジネスを?

色々手がけていますが、主に野球・ソフトボールやゴルフの計測機器の販売に注力しています。私の役割は、日本を主力マーケットにアジアパシフィックとヨーロッパの市場のB2B・B2C・B2B2Cの「営業」から始まり、新しい収入の柱を生み出すためにパートナー企業を模索する「ビジネス開発」、ソーシャルメディアを含めた日々の「マーケティング」活動(下記画像イメージ)をしています。

さらに、ソフトフェアのユーザビリティー向上に向けた既存顧客に対する継続的な「カスタマーサポート」などに加え、日本法人を来年頭に立ち上げるための準備もしています。

シンガポールはバックオフィスの機能として、インド系を中心としたエンジニアの他、ローカルのシンガポール人とアジアと欧州諸国の多国籍で約50名在籍していますが、お客様との向き合いのポジションは自分しかいないため、アメリカと欧州の支社の担当者と社内調整で日夜、お客様は週末・夜遅い時間の対応も多いため、一人で奮起しています。

弊社は現在、韓国や台湾にもパートナー社様がおり、強固な関係から売り上げが右肩上がりの成長を続けています。野球のビジネスが軌道に乗りましたら、今後は、世界で2番目の競技人口を誇るクリケットのメインであるイギリスと旧大英帝国(オーストラリア・南アフリカ共和国・インドなど)の市場で受容性と市場規模とブランドポジショニングなど戦略的に参入していきたいと考えています。

実際どんな機器? 

ズバリ、上記の機器(上:投球機器、下:打球機器)をマウンドからホームプレートの間に置き、ハードウェアで投球や打球のボールのデータを瞬時に解析・処理し、下記の画像にありますような細かい様々な投球(例.球速・回転軸・回転効率・縦横の変化量など)と打球(例.打球速度・打球角度・回転軸・想定飛距離など)のデータがiPadに表示されます。

これらの1球1球のパフォーマンスを可視化することで、選手にとっては具体的にどの弱点を克服、改善していくのかが明確になります。その上で、個人の目的に向かって、トレーニングのメニューを組み、日々データから試行錯誤を重ね、感覚を研ぎ澄ませ、データをトラッキングしていきます。

データはクラウド上に蓄積され、ビックデータとして、仮説の検証や、必要な部分だけカスタマイズすることが可能で、他の分析ツールとデータを紐づけることでコンディションや怪我の予防など、多角的に分析も可能となります。

なぜ、これを作ろうと?

弊社の創業者がエンジニア出身のゴルフ好きで、ゴルフのパフォーマンスアップのために測定機器を作り始めたのが始まりです。

これまでのスポーツ産業では、スポーツ用具やユニフォームなどのメーカーが多く存在しますが、スポーツに限らず、「リテールとIT」のかけ合わせや「ファイナンスとIT」のかけあわせなどから今ではお馴染みの「リテールテック」「フィンテック」のように「スポーツとIT」のかけ合わせ『スポーツテック』がスポーツ産業の新たなトレンドとして、多くのスタートアップがここシンガポールで生まれ、スポーツ先進国の現場で活用されています。

ハードウェアとソフトウェアの組み合わせで、顧客のニーズに沿った商品とサービスを今後も上市し、期待に応えれればと思います

プロとして活躍できる選手は本当に一握りしかいないですが、そんなプロの選手の縁の下の力持ちにもなり得る、効率的かつ効果的にデータを紐解き、パフォーマンスアップを支えるデータアナリストなどの雇用創出も広義では弊社の役割と自負しています。

どんな所で使われているの?

アメリカでは現在全30球団に導入され、日本では、本格的に1年半前からプロ野球の大半の球団様に導入が完了し、独立リーグ・社会人・大学(東京六大学全てなど)・高校など、アカデミーやコンディション面で選手をサポ―トする治療院などでも導入が進み、大学様では研究の対象としても利用用途は多岐に渡っています。

また、弊社の機器は中国で部品などは仕入れ、マレーシアのジョホールバルの工場で製造しています。コロナ渦で一時、中国からの部品がショートしたり、マレーシアがロックダウンしたりと大変な時期もありましたが、今では製造ラインは戻り、まだ景気の低迷はあるものの、景気の回復を視野に日本法人の設立でさらにトップラインをあげていきたいものです。

プロの選手しか使えないもの?

メインは、データアナリストなども抱えるプロ野球球団向けではあります。選手の現在の力を測るのに加え、各球団が選手をスカウトする際の判断基準にする為に本機器を用いて、トライアウトをするケースも増えています。例えば、韓国や台湾のアジア強豪国でも、まだ知られていない有能な選手がソーシャルメディアを用いて、自己アピールしたり、米メジャーリーグで活躍される日本人の中でも、所属球団で当機器を用いて、新しい球種の獲得など、一人で黙々と投げ込む姿なども見受けられました。

しかし同時に一般の方にもご使用頂いており、例えば台湾やアメリカなどでは、親が自分の子ども向けに購入して、子どもとの対話に活用する傍ら、パフォーマンスアップに活用されている家庭が沢山あります。子どもに野球を教える際、この機器があれば、ホームランを最適に打つ角度や球の回転軸など、選手でないと分かりにくい感覚を数値で的確につかむことができるので、重宝されています。

1台65万円(消費税別)と安くはないので、気軽に買えるものではないですが、結果が分かりやすく出るので、ご好評を頂いています。

今後の目標は?

アジア(日本であっても)では、スポーツテックの分野においては、まだまだソフトもハードのエンジニアも不足しているだけではなく、プロ以外ではデータアナリストの不在も、アメリカなど最先端の国から遅れをとっているため、私はそれに携わる立場として、若い世代、これから社会に出ようとしている若者をサポートしていきたいと思っています

今後は日本でデータアナリストの養成講座なども行う予定ですし、スポーツデータに国境はないため、北中米も巻き込んで、アジアパシフィックとヨーロッパの国境を超えていく橋渡しの役割が担えればと思います。また、データが全てとは言わないですが、データを基に感覚を研ぎ澄ます判断材料となり、野球選手を目指す若い方から生涯スポーツとして野球をしている方まで、野球を楽しく長くプレイするために必要な機器として、社会のエコシステムの一貫になるよう精進していきたいです。

宇野カルロス冠章(うのかるろすかんしょう)さん 37歳

中国・日本・アメリカ合衆国・オーストラリア・アラブ首長国連邦に在住・職務経験を持ち、金融・広告・マーケティングコンサルティング・自動車・Eコマース・アドテクの業界を渡り歩いた後、現在はシンガポール本社のRapsodo社にて、アジアパシフィック・ヨーロッパの統括として野球・ソフトボール市場における営業・ビジネス開発・マーケティング・プロジェクトマネジメント・オペレーションまで幅広く一人で担う。
マサチューセッツ州立大学アムハースト校スポーツマネジメント学部卒業、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修了。

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この記事を書いた人
シンガポール在住8年目。ワインと美食をこよなく愛し、日々ワインを楽しむ一方、筋トレも欠かさず行う。“ワインと美活“のスペシャリスト