【大人の社会科見学】
シンガポールで楽しむイベントその332
-シンガポール流焼きそば「ホッケンミー」の奥深い世界-

シンガポールを代表するローカルフードのひとつに「ホッケンミー(Hokkien Mee)」があります。日本の焼きそばとは一味も二味も違う、海の香りと旨味がたっぷり詰まった麺料理。ホーカーセンターの湯気の向こうに、老若男女がレンゲ片手に夢中になって頬張るその光景こそが、シンガポールの日常を物語っています。今回はホッケンミーの起源や特徴、現地での楽しみ方まで、じっくりとご紹介します。
◉ルーツは福建移民、南国の屋台で進化
ホッケンミーの「ホッケン」は「福建省」の意味。その名の通り、中国福建省からシンガポールやマレーシアに移り住んだ人々が持ち込んだ麺料理がルーツとされています。もともとは家庭の味だったものが、シンガポール独自の食文化や地元の食材と融合し、屋台料理として発展してきました。いまではホーカーセンター(屋台村)やコーヒーショップで手軽に食べられる、国民的な麺料理として広く親しまれています。
朝食にも昼食にも、また飲み会の締めにもぴったりな万能メニュー。シンガポールの人々にとって、ホッケンミーは単なる食事以上の「故郷の味」と言えるでしょう。
◉麺と海鮮の旨味が織りなす独特のハーモニー
ホッケンミーの最大の特徴は、太めの黄麺と細いビーフン(米麺)をミックスして使うこと。2種類の麺を一緒に炒めることで、もちもちとした食感とつるりとした喉越し、両方の魅力を楽しむことができます。
具材にはエビやイカ、豚肉や厚揚げなどがたっぷり入り、何よりも特筆すべきはそのスープ。海老の頭や豚骨などからじっくりと煮出したスープを麺にしみ込ませながら炒めることで、うま味がギュッと凝縮されます。
日本の焼きそばのように完全に水分が飛ぶまで炒めるのではなく、ホッケンミーはやや「おじや」風にスープが残る仕上がり。レンゲですくいながら麺と一緒にスープも味わうのが現地流です。ほんのりと海老の香りが鼻を抜け、噛むごとに具材の旨味がじんわりと広がります。

◉チリとライム、魔法のアクセント
ホッケンミーを語るうえで欠かせないのが、添えられる「サンバル チリ」と「カラマンシー(ライム)」の存在です。
テーブルには必ずといっていいほど赤く鮮やかなサンバル チリが添えられ、自分好みに辛さを調節できます。ほんの少し混ぜるだけで、濃厚な海鮮スープが引き締まり、味の奥行きがぐんと増します。さらに、カラマンシーをギュッと絞れば、爽やかな酸味が口の中に広がり、最後の一口まで飽きさせません。
現地の人は、まずそのまま麺とスープの旨味をじっくり味わい、途中からチリやライムを加えて味変を楽しむのが定番スタイル。旅行者なら、ぜひ何通りもの組み合わせを試してみてください。
◉個性豊かなホッケンミーの名店たち
シンガポールには数え切れないほどのホッケンミーの名店が点在しています。例えば、老舗である「Nam Sing Hokkien Fried Mee」は、あっさり系のスープと香ばしい香りで人気を集めています。一方、「Geylang Lor 29 Hokkien Mee」は、エビのダシが濃厚なパンチのある味付けが自慢。
店ごとに麺の太さや火の通し方、具材の切り方、スープの濃度などが微妙に異なり、食べ比べてみるとその奥深さにきっと驚かされるでしょう。
また、ホーカーセンターのカウンターで手際よく中華鍋を振るうシェフたちの姿も、料理そのものと同じくらい魅力的です。目の前で立ちのぼる湯気と香ばしい音、熱気あふれる屋台の活気。ホッケンミーは、まさに五感で味わうシンガポールのソウルフードです。
◉まとめ―シンガポールの暮らしに息づく味
ホッケンミーは、ただの焼きそばではありません。福建系移民の知恵と工夫、シンガポールの多様な食文化、そして人々の日常がひとつの皿に凝縮されています。香り高いスープと麺のハーモニー、そこに加わるチリとライムのアクセント。その一口ごとに、南国の陽気な空気や屋台のにぎわい、人々の温かさが感じられることでしょう。
もしシンガポールを訪れることがあれば、ぜひホッケンミーを現地で味わってみてください。その味わい深さと、現地ならではの雰囲気に、きっと忘れられない思い出が生まれるはずです。
◆大人の社会科見学 筆者
| 森山 正明 大人の社会科見学シンガポール版は、シンガポールで生活している方々へ、シンガポールの奥深さを知ってもらいたい思いで活動を始めました。「3か月も住んでいればシンガポールは飽きてしまう」と巷では言われますが、なかなかどうして、この地ならではの楽しみは、尽きることはありません。 2013年11月からこのサークル活動を始めて約11年。行ったイベントは、200回を超え、その中から読者の方にもシンガポールの文化や習俗について年中行事を軸に紹介をして参ります。 ●大人の社会科見学の電子書籍版完成! 詳細はこちらから |
●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
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この記事を書いた人
SingaLife編集部
シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!



















