シンガポールの日系飲食店のwithコロナ戦略【Case2 寛寿司】
シンガポールでは新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、政府が4月7日から飲食店の店内飲食を禁止した。6月19日から店内飲食を解禁したものの、この約2カ月間で、飲食店は大きな影響を受けた。
店内飲食を再開した後も、客同士の間隔を1メートル以上の確保しなければならないなど、これまでのような営業を続けることは難しい状況だ。このような状況で、どのようにシンガポールで飲食店を経営していくのか。
第1回目の焼肉王・魚王魚王グループに続いて、今回はシンガポールで寿司店2店舗を展開する寛寿司に聞いた。
Q.ロバートソンキー店がオープンしてから約4カ月で、外食禁止となってしまいました。経営への影響はありますか。
寛寿司:売り上げ=収入ががくんと減ったので、影響はかなり大きいです。特に店が入居するテナント賃料の負担が大きいです。それがあるので、この期間に黒字は出せないですね。
Q.それまでの営業はいかがでしたか。
寛寿司:タンジョンパガー店の常連さんが来てくれたこともあり、オープン直後からお客さんは来てくれてました。
立地がロバートソンキーの川沿いでもなく、メインストリートから少し奥まったところだったので、集客に苦労するだろうなと思っていましたが、常連さんが来てくれたのは嬉しかったです。
Q.両店での客層の違いなどはありますか。
寛寿司:ロバートソンキー自体がハイエンドな住宅街ということもあり、客単価はタンジョンパガー店よりも高いですね。「一番いいお任せコースを」と注文するお客さんが多く来店する印象です。
Q.雇用しているスタッフはどのように対応していましたか。
寛寿司:タンジョンパガーとロバートソンキーの2店舗体制なので、正社員は7人(日本人:3人、ローカル:4人)で、アルバイトが2人です。
タンジョンパガー店の日本人スタッフは、アンペイドリーヴを取ってもらい、政府が一部を肩代わりしてくれるシンガポール人はそのまま支払うという形を取っていました。ロバートソンキー店は、テイクアウトと宅配で営業をしていましたので、シフト制を取って、勤務してもらっていました。
Q.シンガポール政府の補償は十分ですか。
寛寿司:日本よりは補償が手厚いと思います。シンガポール政府は、税金を納めている分に関しては支援しましょうという考えで、シンガポール人スタッフの給与の一部肩代わりしてくれています。4月や5月と同じように、6月も給与の肩代わりがあればいいのですが、なければスタッフの生活もあるので、最低限の給与は支給します。テナント賃料はオーナーとの交渉になりますが、政府が後押ししてくれています。
Q.テイクアウトも当初は2店舗で行っていましたよね?
寛寿司:そうですね。スタッフの給与を捻出しようと、タンジョンパガー店もテイクアウトや宅配の営業をしていましたが、注文が入らず採算が合わないので、ロバートソンキー店だけにして、タンジョンパガー店は休業にしていました。
Q.ロバートソンキー店で宅配営業をして、手応えはいかがでしたか。
寛寿司:はい、思った以上のご注文をいただけたと思っています。これまでご利用がなかったお客様からの注文が多くありました。
店内飲食が禁止になる前は日本人以外のお客さんの方が多かったのですが、テイクアウトや宅配を始めてからは、日本人からの注文が増えた印象です。
Q.その理由をどう考えていますか。
寛寿司:4月7日から6月18日までの店内飲食禁止期間中には、寿司や刺身を盛り合わせた、豪華な「お祝いセット」を新たにメニューに加えました。
家族の誕生日や結婚記念日などのお祝い事や、母の日といった特別な日には、それまでの自粛モードを少し緩めてもらい、お寿司で豪華にお祝いしようというお客さんが多く、「お祝いセット」の多くのオーダーをいただけました。
それまでお寿司の宅配自体をしていないこともありましたし、お客さんの側も炭水化物と揚げ物というお祝いプレートではなく、ハレの日にはお寿司をと考えてくれて、注文いただけたものと思います。
売り上げも、母の日は3500ドルを超えて、反響はあったのかなと思います。
Q.宅配はフードデリバリーアプリを利用していましたか。
寛寿司:いえ、利用せずに自社で宅配をしていました。その理由は、手数料の高さもありましたし、多くの飲食店が参加するアプリでは、寛寿司は他店に埋もれてしまうのではないか、という懸念もありました。
電話やワッツアップで注文を受けて自社でお届けするので、コミッションを支払うこともなく、ある程度の利益率を確保することができています。ここは強みになっていますね。
Q.お客さんはどのように寛寿司を知ってくれるのでしょうか。
寛寿司:まず自社のFacebookとインスタグラム、あとは主にローカルを対象にしたアプリも利用しています。
あとは口コミもありますし、シンガライフの記事や誌面を見て注文したというお客さんもいました。
Q.店内飲食が6月19日から再開しました。今後の店舗展開をお聞かせください。
寛寿司:まず、外出制限措置(サーキット・ブレーカー)が始まる前の状態に戻るのは難しいと思っています。それまで宅配をしていなかったロバートソンキー店が思った以上の集客でしたのでこれは続け、さらにテイクアウトの営業を強化したいと思っています。
その上で、寿司屋の醍醐味であるカウンターに座って握りたてを食べるというライブ感にはこだわりたいと思います。
その棲み分けを上手にやっていきたいです。
Q.その他の新たな展開は考えていますか。
寛寿司:寿司店以外にもラーメン店も展開できれば、と考えています。そのために、この2ヶ月で事業企画書を練り、日本のラーメン店にアプローチをしています。
シンガポールで、寿司店だけにとどまるつもりはなく、シンガポールを代表する「Teppeiグループ」や「KEISUKEグループ」のような日系飲食店グループを目指しています。
<店舗情報>
・タンジョンパガー店
住所:10 Anson Rd, #02-54, S079903
電話:6221-3678
営業時間:
月〜金11:30-14:30 18:00-22:00
土 18:00-22:00
定休日:日
・ロバートソンキー店
住所:30 Robertson Quay, S238251
電話:6970-7128
営業時間:火〜日12:00-14:30 18:00-22:30
定休日:月
この記事を書いた人
SingaLife編集部
シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!