スエズ運河の船舶座礁問題、シンガポール運輸相「供給中断の可能性ある」と指摘
エジプト北東部のスエズ運河で、愛媛県今治市の「正栄汽船」が所有する巨大コンテナ船「エバーギブン」が座礁し航路をふさいでいる問題で、シンガポールのオン・イェ・クン運輸相は3月25日、「シンガポールやその周辺地域への供給が一時的に中断する可能性がある」と発言しました。また、オン運輸相のfacebook投稿では、供給の混乱で物によっては在庫がなくなる可能性にも触れています。
オン大臣は、ヨーロッパや中東からシンガポールなどに来る船がスエズ運河を通らず、アフリカ大陸を大きく迂回し、アフリカ大陸南端の喜望峰を回る代替の航路案についても言及しました。これには通常より1~2週間余分に時間が掛かります。
シンガポールを拠点として港湾オペレーション事業を行うPSA社については「座礁にともなう混乱が長引くと、運行会社が航路を変更し、スケジュールがかみ合わなくなる可能性がある。先をみて計画を立て、スムーズなオペレーションを維持しなければならない」と述べました。
コンテナ船の座礁後、ボートや掘削機などでの解消が試みました。これまでのところ(※3月29日朝現在)、エバーギブンの全長約400メートル、22万4,000トンという巨大さもあいまって、離礁させる試みは成功したとの情報はありません。スエズ運河庁は、船舶が強風と砂嵐に遭って航路を維持できなかった可能性があり、運河を再び開通させるには少なくとも数日は要するとしています。
スエズ運河は、全世界の海上貿易の約1割に当たるほどの量が通過するとされます。シンガポールが位置するマレー半島とスマトラ島の間に位置する海峡はスエズ運河の3分の1ほどの通過量があると言われます。オン運輸相はこれらの海峡がヨーロッパ、中東、そしてアジアを密接につないでいると言います。「スエズ運河の封鎖は、中央高速道路に大木が横たわっているような状況と言える。中央高速道路に接続するその他全ての高速道路に影響がでてしまう」と危機感を示します。
新型コロナウイルスの感染拡大によって影響を受けている全世界のサプライチェーンに波及効果があるなどとの指摘も専門家らから上がっています。ただ、平均的なシンガポール人にとっては、物が不足したり、輸送に時間が掛かったりする程度の問題で、物価上昇のような事態までは至らないとの見方があります。
国際貿易マネジメントを専門とするシンガポール社会科学大学のヤップ・ウェイ・イン学長は「運賃が占めるのは商品価格のうちほんの一部でしかなく、仮に航行の運賃が上がっても消費者は価格上昇には気付かないレベルだろう」などと指摘します。物不足についは、トイレットペーパーなどはアジア地域から輸入しておりスエズ運河は経ておらず、スーパーに買い占めに急ぐようなことは不要と言います。
シンガポール海運協会のマイケル・プーン事務局長は「アジア、地中海地域いずれもの消費者がスエズ運河を通る貨物船の遅延を予期するだろう」と指摘します。プーン事務局長は、海運会社が、座礁の解消を待つか、解消を待たずにアフリカ大陸を迂回する航路に変更するかの決断が強いられていると述べました。「いずれにせよ時間は余計に掛かるし、追加コストも発生する」と話しています。
日本の会社が所有する巨大なコンテナ船が、海上貿易に与える影響の大きさから「世界の大動脈」とも呼ばれるスエズ運河を塞いでいます。シンガポールへの影響も指摘される中、船舶が無事離礁ができるか、世界の海上貿易にどのような影響を与えるか、賠償などはどのように生じるか…目が離せません。
この記事を書いた人
SingaLife編集部
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