駐在夫、子を育てる-33- 瞬間

これはシンガポールに駐在する妻に帯同し、“駐在夫”として家事や育児に奮闘する日々を綴ったコラムです。シンガポールのフリーマガジン「シンガライフ」誌上で連載しているものに一部加筆して、ウェブでも公開しています。

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ある日、モモタ(仮名、11カ月)に離乳食をあげているときに気づく。「あれ、お皿も口の周りもあまり汚れなくなっている」。少し前までは、ご飯のあとは食べカスがそこら中に飛び散り、大惨事状態だったのが、随分とスマートになった。こんな瞬間が育児にはたくさん訪れる。そして、その瞬間にリアルタイムで立ち会えるのが、駐在夫として子育てしている無上の喜びだ。


掴み食べにハマっているモモタ。つい3週間前は、ブルーベリーをあげようものなら、握力の加減がわからないため、お皿は果汁で赤く紫に染まる。お焼きは、握りつぶして指の間から生地がニュルっとはみ出して周囲に散らばる。こんな状態だった。それが、ここ最近はどうだろうか。

ブルーベリーは人差し指と親指で上手に掴んで口に運び、お焼きもしっかりと潰すことなく、口の周りにべったりと付着することなく食べられるようになっている。他人からすれば「へー、そうなんだ」とあっさりとしたものだろうけれど、モモタにとっても駐在夫夫婦にとっても大きな一歩なのである。(※豆腐はまだ上手に掴むことはできないようだ)

生後10カ月から11カ月にかけては、見た目には大きくもなっていないし、体重もそれほど増えていないから「あまり成長しない1カ月なんだなぁ」と思っていたけれど、見た目ではなく「指先の使い方」という内面で成長していたとは。

モモタの日々の成長を感じられる貴重なこの瞬間を見られたのは、駐在夫だったからである。

最近では、立つそぶりも見せるように。わずか数秒だけれど、短く太い足でなんとかバランス取ろうと、よろよろとしているモモタ。すぐに尻餅をついてしまうが、二足歩行もまもなくできそうだ。これからこんな「瞬間」に立ち会えるチャンスが何度もあることだろう。初めて反抗的態度を取った瞬間はいつになるのか、公園でキャッチボールができるようになるのがいつなのか。

モモタのこれからは「できるようになる瞬間」の積み重ねの一方で、駐在夫のこれからは「できないようになる瞬間」の連続になってくる。早くさまざまなことをできるようになってもらわねば。


この記事を書いた人

SingaLife編集部

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