駐在夫、子を育てる-35- 服の魔力
これはシンガポールに駐在する妻に帯同し、“駐在夫”として家事や育児に奮闘する日々を綴ったコラムです。シンガポールのフリーマガジン「シンガライフ」誌上で連載しているものに一部加筆して、ウェブでも公開しています。
母親の子供服への熱量がすごい。駐在夫の家だけのことかもしれないが、その熱量が尋常ではない。我が家には子どもは、モモタ(仮名、1歳)しかいないのにも関わらず、3人ぐらい子どもがいても賄えるほどの量の服がクローゼットにスタンバイしている。
子どもは成長する。身長も伸びるし、体重も増える。そのため、例えば70サイズの服を着られる期間などわずかしかない。にも関わらず、70サイズの服だけで10着以上はある。「え、10着って少なくない?」と思った人もいるだろう。しかし、80サイズの服も10着以上、すでに捨てるリストに入っている60サイズの服も10着以上あった。近い将来は90サイズの服も(もちろん10着以上)用意されることになるのだ。
駐在夫の妻がソファで寝転んでiPhoneをいじっている時、大抵はインスタグラムで子ども服を見ているか、子ども服ブランドのウェブサイトを見ているか、だ。「なんて可愛いんだろう、子供服って」と独り言をつぶやいてもいる。
「そんなに必要なのだろうか」と心の中でつぶやく駐在夫。頻繁に外出するわけでもないのだから、一つのサイズにつき半分でいいのではないだろうか、と思うが口に出そうものなら、大変な事態を招くのは火を見るよりも明らかなので、黙っている。
日本で子育てをしていたら(服は)どうなっていただろうと考えることがある。一年中暑いシンガポールは夏服だけで済むので、これぐらいの量で抑えられている。が、春夏秋冬がある日本だったら、サイズに加えて気温も考慮して、服を揃えなければならなくなる。冬服は重ね着が必要になり、1回で2〜3枚数を着させるとなると、その量は計り知れないはずだ。
シンガポールですらクローゼットには2〜3回しか着なかった服が眠っているのだから、日本だったら・・・
当のモモタ本人は、頭から被せる服だと、頭が引っかかるので嫌がることはあるが、デザインに好き嫌いはなさそうだ(今のところ)。もっと成長していけば「戦隊ものがいい」とか「新幹線のデザインがいい」とか好き嫌いが出てくるだろう。その時、駐在夫の妻とモモタ本人がどのような折り合いを見せるのか今から、楽しみだ。
子ども服の業界は、(特に先進国では)少子化でピンチを迎えつつあるとは思うが、母親の子ども服へのこの熱量がある限り、しばらくは大丈夫なような気がする。
この記事を書いた人
SingaLife編集部
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