シンガポールの税金は安い!?所得税の仕組みや税率を解説。控除を活用して、さらに節税も

「シンガポールは税金が安い」。なんとなくそんなイメージを抱いている人もいるかもしれません。その認識は概ね間違っていません。所得税に関して言えば、日本よりも安く設定されています。

ただ、実際にシンガポールにはどのような税金があり、どれくらいの税率なのかを意識したことがある人はあまりいないのではないでしょうか。

この記事ではシンガポールの税制や税率について、とくに所得税について見ていきます。


シンガポールの税金の種類

シンガポールの税金は、直接税と間接税とに分けられます。

直接税は、法人または個人が手続きをして納めるもの
間接税は、法人や個人が納める代わりに第三者を介して納税するもの
です。

直接税間接税
1法人所得税財貨及びサービス税(GST)
2個人所得税印紙税
3固定資産税輸入税(関税)
4外国人労働者税物品税
5技能開発税ホテル及び飲食税
6自動車税

この記事は、所得税、なかでも個人所得税について詳しくみていきます。



シンガポールの個人所得税

シンガポールの個人所得税は、日本と比較して税負担が低く抑えられていることが特徴的です。また、給与所得者の源泉徴収制度はないため、個人個人が自らの所得税を申告し、納税をしなければなりません。

いくつかの項目を例に挙げて、シンガポールと日本の所得税の違いをみてみましょう。

項目シンガポール居住者日本居住者
1課税所得の範囲国内源泉所得課税
キャピタルゲインに課税なし
全世界所得課税
キャピタルゲインに課税あり
2税率累進課税
最高税率:22%
累進課税
最高税率:55%(住民税含む)
3税金の計算期間暦年(1月~12月)暦年(1月~12月)
4申告・納税方法給与所得の源泉徴収なし
期限:翌年4月15日or18日
給与所得の源泉徴収あり
期限:3月15日

シンガポールの個人所得税の計算期間は日本と同様で歴年(1月〜12月)です。確定申告により所得を申告した後に、内国歳入庁(Inland Revenue Authority of Singapore, 通称IRAS)が発行する賦課通知に従って、納税を行います。

2021年1月〜12月の所得は、2022年の4月18日(紙ベースの場合は、4月15日)までに、納税を行い、2021年の暦年は、2022賦課年度(YA2022)と呼ばれます。


シンガポールの所得税率

累進課税制度を導入しているシンガポール。税制自体は日本と同様ですが、所得税率を比較すればその違いは歴然です。上記の表でも見たように、最高税率は22%。住民税はありません。

シンガポールの所得税率を表にまとめました。

     課税所得($)税率(%)税額($)
       最初の 20,00000
次の 10,0002.0200
     30,000 までの金額200
次の 10,0003.5350
     40,000 までの金額550
次の 40,0007.02,8000
     80,000 までの金額3,350
次の 40,00011.54,600
     120,000 までの金額7,950
次の 40,00015.06,000
     160,000 までの金額13,950
次の 40,00018.07,200
     200,000 までの金額21,150
次の 40,00019.07,600
    240,000 までの金額28,750
次の 40,00019.57,800
    280,000 までの金額36,550
次の 40,00020.08,000
    320,000 までの金額44,550
   240,000 を超える金額22.0

参照:https://www.iras.gov.sg/irashome/Quick-Links/Tax-Rates/Individual-Income-Tax-Rates/

例えば、課税所得が$125,000だった場合を見て見ますよう。

$125,000のうち、$120,000までに掛かる税金は、$7,950です。残りの$5,000に対しては、15%の税率が掛かる仕組みになっています。

納める所得税は、$7,950+($5,000×15%=$750)=$8,700

となります。


さまざまな控除

シンガポールの個人所得税では、さまざまな控除が適用されるのも特徴的です。日本にはないようなユニークな控除もあり、控除を受けられれば納税額が下がる可能性があります。

1)配偶者控除

配偶者の所得が年間$4,000以下の場合は、$2,000を控除することができます。配偶者はシンガポール在住である必要はなく、日本に居住している場合でも配偶者控除は適用となります。

詳しくはこちら

2)子供扶養控除

16歳未満の子ども、もしくは大学やその他の教育機関に通っている状態でかつ年間の収入が$4,000以下の場合は、子ども1人につき$4,000の控除ができます。

こちらも上記と同様に、子どもがシンガポール在住である必要はありません。

詳しくはこちら

3)両親扶養控除

55歳以上で年収$4,000以下の両親と同居している場合は$9,000の控除を受けられます。同居しない場合は$5,500の控除を受けることができます。控除額は親1人当たりの金額です。

ただし、両親に月額で最低$2,000の補助=扶養していることが条件です。

詳しくはこちら

4)生命保険控除

CPFの掛け金が$5,000以下、かつ本人がシンガポールに支店のある、生命保険会社の生命保険に加入し、保険金を支払っている場合が控除対象です。

保険の掛け金あるいは、7%にあたる保険受取額、どちらか低い方が控除金額となります。

このほかの控除に関しては、IRASのウェブサイトをご覧ください


所得税の申告と納税方法

シンガポールでは所得税の申告と納税を基本的には個人で行わなければなりません。(※駐在員の場合は、会社がまとめて一括して申告と納税をすることもあります)

申告に際して必要になるのが、暦年(1月〜12月)の所得証明です。所得証明は、雇用主に課せられた義務で、翌年の3月1日までにそれぞれの従業員に発行しなければなりません。

申告書の入手

IRASのウェブサイト上でオンライン申請することが推奨されています。毎年1月〜2月ごろに申告用のアクセスパスが郵送されてきます。

申告書の作成と提出

所得税の確定申告は所得証明を元に労働者本人が、IRASのウェブサイトにアクセスしてオンラインで行います。オンラインで申告できないという人は、IRASに申告用紙の発行を依頼することになります。

所得税の納付

所得税の納付は、IRASから送付されてくる賦課通知を受け取ってから1カ月以内に行わなければなりません。通常は申告後、1~2カ月で賦課通知が発行されます。

支払いはインターネットバンキングやATMなど、さまざまな方法で支払うことができます。

詳しくはIRASのウェブサイトから。



所得税を節税するには

では、これまでご紹介した控除を利用する以外に、所得税を節税するための方法はあるのでしょうか。

シンガポールのファイナンシャルアドバイザー会社「インフィニタム(Infinitum )」の山下千華さんに伺いました。

インフィニタム社と

シンガポール保険会社最大手のNTUCインカムが親会社として、シンガポール金融管理局(MAS)より許可を受けているファイナンシャルアドバイザー社。

 

Q、所得税を節税する方法があれば教えてください

山下さん:
すでに記述されているさまざまな種類の控除を受ける方法はもちろんですが、そのほかに挙げられるのが、SRS口座という銀行口座を利用する方法です。

Q、SRS口座とはどのようなものですか

山下さん:
SRSは略称で、正式名称はSupplementary Retirement Schemeといいます。シンガポールにおける個人型確定拠出年金システムです。シンガポール国民や永住権保持者(PR)だけでなく、シンガポール在住の外国人も開設することができます。

SRS口座について(DBS銀行のリンク)

このSRS口座に拠出(=入金)すると、その金額分が控除対象となります。さらに、拠出分を投資に回すことができたり、引き出し時には課税額が優遇されるといったメリットがあります。

対照的に、注意点としては、
・原則として法令上の退職年齢(現行62歳)になるまで引き出すことができないこと
・途中で引き出した場合にペナルティがあること
・1年間で最大$35,700(シンガポール人とPRは$15,300まで)までしか拠出できないこと
が挙げられます。

Q、所得税節税のモデルケースを教えてください

山下さん:
各種控除を同様に、SRS口座に拠出した金額はまるまる控除となります。

例えば、1年間の課税所得が$150,000で、控除が一切ないことを前提とした場合で見てみましょう。

所得税率の表に従えば、課税所得$150,000に対する所得税は$12,450($7,950+$4,500)となります。

一方で、SRS口座に年間の限度額($35,700)を拠出したケースでは、$35,700がまるまる控除されますので、課税所得額は$114,300に下がり、所得税額も$7,295($3,350+$3,944※四捨五入するため端数切り上げ)となります。

差し引きすると、$5,155が節税できる計算です。割合にして40%強にもなります。

所得税節税の一例

インフィニタムは、節税相談や投資相談、保険相談などのコンサルティングを行っています。個々人の資産状況、ライフプランに合わせた最適なプランを提案してくれます。

シンガポール在住の今だからこそ加入できる商品などもありますので、まずはご相談をしてみてはいかがでしょうか。


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まずは控除を活用

シンガポールの所得税についてみてきました。仕組みや各種の控除をお分かりいただけたと思います。

「この控除、もしかして私に当てはまるかも」と思った方は、IRASのウェブサイトで調べることができます。

また、保険や投資のプロフェッショナルである「インフィニタム」に相談することで、別の節税方法が発見できるかもしれません。

少しでも納める税金を浮かせたいものですね。





この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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