日本の食文化、お茶を世界へ。中田英寿さんの新しい挑戦

Japan Craft Sake Company(ジャパン クラフト サケ カンパニー)のウェブサイトを開くと「日本の可能性を世界に、未来に伝えていきたい」というメッセージが載っています。

その言葉通り、中田英寿さんが代表取締役を務めるジャパン クラフト サケ カンパニーは、日本酒のすばらしさを日本のみならず世界中の人々に伝えています。

ここシンガポールでは、Japan Craft Sake Companyの品質・温度管理されたSake Blockchainシステムを介して輸出された日本酒を、現在Odette、Zen、Burnt Ends、Shoukouwa、Nouriの5つのレストランで楽しむことができます

中田さんは、「Sake Blockchain」というシステムを構築し、1本1本すべての日本酒を追跡し、流通経路の各段階で保管状況を確認できるようにしました。その目的は、すべてのお酒が最高の状態で消費者に届くようにすること、そして各関係者に販売データを提供することで、長期的な成長のための生産、マーケティング、販売戦略をよりよく管理出来るようにすることです。

そして日本酒の次に中田さんが挑むのが日本茶です。

出典 Japan Craft Sake Company

厳選した茶葉を使い、美しい季節を彩る新しいお茶「HANAAHU TEA ハナアウティー」

2023年中には、日本のレストランで味わえるようになります。日本茶の新しい境地を開いてくれると期待されているお茶でもあります。シンガポールでのリリース予定はまだ確定していませんが、リリース情報が出次第公開させていただきます。どうぞご期待ください。

今回、マリーナベイサンズの日本酒&ディナーのイベントでシンガポールを訪れた中田英寿さんに、期待高まる「HANAAHU TEA ハナアウティー」についてお話を伺いました。



日本の文化を守りたい

中田さんは一流のサッカー選手から転身し、日本酒という日本文化の一つを世界へ送り出し、改めてその素晴らしさを伝えています。全ての料理に合うという日本酒の柔軟さとおいしさも。

中田さんの過去のインタビューを拝見すると、そのグローバルな視点に改めて驚きました。一流のスポーツ選手として世界を席巻し、かつ引退後はビジネス界でも名を馳せる…。スポーツ選手の現役人生には限りがあります。そこを見越して現役時代からビジネスについて勉強していたのか、というのが気になりました。

そうでないとあれだけのセンスが持てるはずがない、という気持ちでした。

そこで現役引退後に備え、ビジネスについて学んでいらしたのかと伺うと…

出典 Japan Craft Sake Company

そう言った事は一切なく、「ただ好きなこと、やりたい事だけやってきました」と中田さん。それはサッカーも今やっている事業についても同じことだと言います。

そして「(今やっていることは)ビジネスとは思っていません。日本の文化に関わることをやりたいだけです。日本の文化を守るためには、産業として継続できなくてはいけません。そのために自分が何かをやることで、文化が100年、200年、300年と残っていけばいいなと思っています」

文化を守るために思考を巡らし、ひとつずつ積み重ねていく。そしてゆっくりと地固めをしながら正しい仕組みを作っていくと、市場も収入も安定して産業が活性化していく。

言われてみれば当たり前のことですが、それに気づき、方向性を示してくれる人はなかなかいなかったような気がします。


歴史はお金では買えない

日本の良さは、と伺うと「日本は島国なので他国と競争することがなく、じっくりといいものを作ろうという意識が強かった。そしてそれが長い歴史を持つ産業となりました。歴史は簡単にお金で買えるようなものではないし、良いものづくりの精神が歴史と結びついている。それは日本の文化の素晴らしさですね」と中田さん。


日本茶は世界に誇る食文化

「HANAAHU TEA ハナアウティー」で中田さんが提唱しているのは、食中茶。食事しながら飲むと、食事をよりおいしくいただけるお茶です。もちろん茶葉も厳選した茶葉を使い、お茶自体がおいしいのは言うまでもないことです。

世界的にノンアルコール化が進んでいるにもかかわらず、レストランでは水やジュース、お茶など、選択肢が限られているのが現状だという。さらに、お茶にしても料理との相性を考えて用意されている事はあまりない。そこにはブランドも無く、単価も安いのでレストランの利益にもならないのが現実。

確かにレストランで選ぶ際に、ミネラルウォーターにはブランド名があっても、日本茶にはありません。日本各地のお茶農家を回ったという中田さんは、お茶農家が抱える問題に気づいたそうです。

出典 Japan Craft Sake Company

 

問題解決のためのブランディング

2013年に同じ場所でプライベートイベントスペースを立ち上げたのですが、その2年後によりインタラクティブなダイニングコンセプトをお客様にお見せしたいと思い、レストランに改装し、Chef’s Table “Western Omakase “が誕生しました。

「お茶の生産地を回って感じたのは、お茶農家さんは非常に苦労しているということです。この50年で生産者が10分の1くらいになって、平均単価も2分の1くらいに落ちています。でもお茶自体が衰退しているかというと、コンビニのお茶はたくさん売れているんです」実際、コンビニのドリンク類の中でもお茶類は1番売れているそうです。

一般の人はお茶を嫌いではなく、また海外輸出もおこなっているのに単価が低いのは、安価なペットボトル専用の茶葉を多く生産しているからだろう。

お茶自体に需要はあるが、茶葉から淹れて飲む人が減っている。その大きな理由が、お茶は淹れる温度で味が変わりやすいことや、旨味が強いだけのお茶は飲みづらいと思われているのではないか、といろいろと考えて繋げていったときに、やれることはたくさんあると気がついた中田さん。

生産者を助けたい、ひいてはお茶文化を助けたい。そう思ったときにお茶のブランドを作ることに決めました。お茶の価値を引き上げれば全ての問題は解決していくのでは、と。


お茶に関わる業界全体の底上げを目指す

そしてお茶農家だけでなく、お茶のブランド化が成功すればレストラン業界にもプラスとなります。コロナ後により強くなった健康志向により、アルコールの売り上げが低下したレストラン業界。しかし、ノンアルコールのプレミアムな日本茶が生まれれば、客単価も上がり、増収にもつながります。

中田さんは、高品質のお茶を生み出すことにより、お茶に関わる業界全体の底上げを目指しているのです。


四季を表す「HANAAHU TEA ハナアウティー」

春の’HA’ 夏の’NA’ 秋の’A’ 冬の’HU’、日本の特徴でもある、四季のうつろいをブランド名にしました。「春には苦味がある食材が多いように、夏にも秋にもその季節の食材の味があります。この日本の素晴らしい四季を表現するべきだなと考えました。味設計もそうですし、名前もそうです。」

日本の四季の美しさは世界でも知られています。そういった意味でもブランディングにぴったりの名前だと思います。


クオリティコントロールが容易

そしてこの茶葉は水出し専用として開発されたことも、大きな特徴の一つと言えます。

それにより、淹れる温度により味が変わりやすいお茶ですが、水出しという誰もが簡単にできる淹れ方で、常においしいお茶を作ることができます。また食事中は冷たい飲み物をみんな飲みます。そういう意味でも、水出しが大事なんです。また、これによりレストランなどのオペレーションサイドにとって、一つ負担が減ります。


美しい色あい

特筆すべきは、水出しゆえの美しい色合い。ブランド第一弾として選ばれた春を表わす「Kusawakaba 草若葉」と、秋を彩る「Akizakura 秋桜」の2種類。

・春「Kusawakaba 草若葉」

出典 Japan Craft Sake Company

春の若葉のような香りと、レモングラスを思わせる華やかなニュアンス。フレッシュで心地よい清涼感のある口当たりで、優しい味わいです。そして美しいグリーン。味を感じる色合いです。

海老、きゅうりの三杯酢、セビーチェ、グリーンサラダやトマトとバジルのカペッリーニなどの冷製料理など、軽い風味と酸味を持つシーフード料理にぴったり。

・秋「Akizakura 秋桜」

出典 Japan Craft Sake Company

香ばしく、秋空を思わせるさわやかで清々しい香り。渋みは穏やかで口当たりも柔らかく、風味と余韻が長く続きます。そして淡い茶色が美しい。

野菜や海老の天ぷら、茄子の揚げびたし(出汁と醤油に浸した揚げ茄子)など、香ばしい風味の軽い料理を引き立てる味わい。


ここでしか飲めないという付加価値

そして「HANAAHU TEA ハナアウティー」は最初はBtoBのみで市販はされないので、レストランやバーなどでしか味わうことができない特別なお茶です。「HANAAHU TEA ハナアウティー」を飲むためにレストランへ行く、というお茶ファンが生まれる可能性があります。

お茶業界を救うというだけでなく、クオリティコントロールから付加価値を付けることまで徹底しており、中田さんの意識の高さが伝わってきます。


まずは日本市場へ

来月にもデビューすると言われる「HANAAHU TEA ハナアウティー」。中田さんはまずは日本市場を固めてから、海外へと展開する予定です。

「輸出して販売量が増えればいいという考え方ではありません。売り上げを安定させるためには定着した市場を作ることが大事です。お金が目的だったら違うやり方もできるでしょうが、そうではなく、しっかりとしたシステムを作り、業界が継続していけるようにすることが大事です。僕らはお茶のブランドを作りたいのではなく、仕組み作りをしたい。この産業が変わるためにはどうすればいいか、解決法の一つとしてものづくり、製品を作っているからです」

出典 Japan Craft Sake Company



お茶は全ての料理に合う

お茶の魅力はどんな食材にも合うことです。ですから世界のどこででも愛されるお茶といえます。どんな料理、というのではなく、どんな食事に合うお茶です。ターゲットは世界」

中田さんの言葉通り、お茶でなく「HANAAHU TEA ハナアウティー」を、とお客様が名指しで注文する。世界各地のレストランでそれが当たり前となる日がくるのではないでしょうか。

中田英寿さんが生み出した、料理と楽しむ新しいお茶「HANAAHU TEA ハナアウティー」。日本茶の未来に光を投げかけてくれそうです。

インタビュー:榊原亮(Fifty One Media)
文:林じゅん子



JAPAN CRAFT SAKE COMPANY
代表取締役社長 中田英寿さん

出典 Japan Craft Sake Company

プロサッカー選手引退後、日本の文化や職人技を学ぶため、7年間かけて47都道府県を旅して回る。
その後、日本酒、お茶、文化、職人技を世界に広めるべく、JAPAN CRAFT SAKE COMPANYを設立。
2022年には、日本有数の茶の専門家や生産者とともに、料理とのペアリングに特化した日本茶ブランド「HANAAHU TEA ハナアウティー」を立ち上げました。




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この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!

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