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夫婦のいさかい多いと子どもに悪影響?「良い離婚もある」とシンガポールの女性弁護士、離婚数は19年は7,500件超

シンガポールで「離婚すると子どもに悪影響」などといった政府調査の概要が明らかにされました。シンガポールでは、離婚に対する偏見は今も根深く、子どものためを思い離婚を先送りにする夫婦もいるようです。この中で、家族と法律に詳しいシンガポールの女性弁護士シャランジ・カウルさんは「破綻した結婚生活を無理に続けるより、離婚した方が良い場合もある」と話しています―。

「離婚と子の関係」調査

シンガポールでは、婚姻関係を解消した件数が2019年には過去最高の年間7,623件となり、離婚に関する関心が高まっています。

昨年12月8日、シンガポールの社会・家庭振興省(MSF)は10万人以上のシンガポール人の結婚と経済状況に関わる研究成果を明らかにしました。この研究では、21歳になる前に両親が離婚した人の35歳までの収入は、同年齢で両親の離婚がなかった人と比較して少ないことが示されています。また、両親が離婚した人は本人も離婚しやすい傾向でした。「離婚ペナルティ」などとも言われます。

この調査に対し、昨年12月11日、地元の女性研究団体「AWARE」がFacebook上で「離婚が子どもに与える影響を調査するためには、離婚した家庭の子どもと離婚はしなかったが同様の問題を抱えた家庭の子どもを比較するべきだ」としてこの研究の調査方法を疑問視するとともに「離婚という選択肢を取りにくくなる」といった懸念を示しました。

今年1月5日のシンガポールの国会でも、この調査に関する質問がありました。答弁の中でMSFのサン・スエリン大臣は「この調査は両親の離婚と子どもの間の因果関係を示すものではない。両親が離婚したが両親が結婚したままの子どもよりうまくいっている人もいる」と説明しました。

結婚生活の破綻は虐待など深刻な事柄が関係する場合があり、問題は複雑です。

シンガポールで離婚は「スティグマ」

シンガポールでは離婚はタブーのようなものです。離婚によって生じる社会的不名誉・不利益は特に女性にとっては今も残っています。上の世代で定着し今も受け継がれている「アジア的価値観」は、夫婦が離婚しない核家族という形体を支持しています。

このような価値観の下で、離婚そのものや両親が離婚した子は社会でネガティブにとらえられることがあります。そのため、夫婦関係は不幸なものなってしまっているのに離婚せず、あえて夫婦のままでいる例を多く目にします。離婚しないのは経済的理由が主です。離婚手続き自体にお金がかかるだけではなく、特にシングルインカムの家庭に離婚は大きな影響を与えます。

例えば女性側が専業主婦の場合、どうやって離婚費用をまかない自分が食べていくかを考えなければなりません。この将来への不安は夫婦にとって極めて切実なものです。

しかし、最も重要な問題は子どものことです。夫婦関係は破綻しているのに、子どもの生活を守るために結婚を続ける人もいます。夫婦が一緒にいつづけることのメリットとデメリットを検討しなければなりません。

夫婦のいさかいを目にすることが子どもにとってよくないとの調査結果を無視することはできません。子どもが穏やかで平和な経験をする機会を排除しています。子どもは常に混乱した精神状態におかれ、成長・発達のために欠かせないことに集中することができなくなります

いさかいの多い家庭では、両親が離婚した方が子どもの幸福度が高くなり、いさかいのすくない家庭では一緒にいるほうが良いとの結果を示す研究もあります。

「良い離婚」

仲は良くないのに、あえて子どもの成長や独立を待ったのちに離婚することも珍しくありません。シンガポール政府のデータによると60歳以上の高齢離婚も目立ちます。子どもが成長してからのほうが、精神的ショックが少ないと想定して離婚を遅らせているのです。

しかし、長年緊張した感情を抱えて生きるのは子にとっては大変な苦痛です。外に助けを求められなかったと話し、両親に早く別れてほしかったと言う子もいます。

離婚は家族にとっては必ずしも最悪の選択肢であるわけではありません。夫婦としての体裁を維持するだけでなく、子ども達にとってベストな家族関係を目指すべきです。

子ども達のことを第一に考え、離婚後も安定した環境を提供した「元夫婦」もいます。「1つのすさんだ家庭」よりも「2つの幸福な家庭」が良いこともあるのです。

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