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ソムリエコラム Vol.3〜250秒の味わい〜

ソムリエコラム

“250秒”これが世界トップに求められるブラインドテイスティングの基準時間。ソムリエたちはこの時間、1杯のグラスに何を見ているのでしょうか?

皆さんも1度は聞いた事のあるブラインドテイスティング、これはグラスに注がれたワインの外観・香り・味を評価して、生産地・ブドウ品種・収穫年などを当てるテストです。

さらには提供温度、適したグラスの形状、相性の良い料理等まで答えられれば完璧です。ある国際的な試験では、25分の間に6種のワインについて英語でのフルコメントを求められます。私も試験や大会に向けて日々練習していますが、息つく間もなくギリギリ終える頃にはゼイゼイ息切れをしており、私にとってはもはやスポーツの一種です。漫画や映画の世界では簡単にこなしていますが、世界一のソムリエでもなかなか当てられないのが現実です。

ブラインドテイスティングには暗黙のルールが幾つか存在しますが、最たる例は、世界基準にないコメントは無効という点です。例えばドリアン、ヨーロッパの方々には想像しがたい香りですね。逆に(ないと思いますが)“くさや”なんて言っても、日本人にしか理解されません。このようにソムリエ達には、誰もが理解できる共通“用語”が求められます

逆に産地を絞り込むコツもあります。白ワインであればミネラル、赤ワインであれば土っぽさを探すのですが、強く感じればそれはヨーロッパ圏で造られたワインの可能性が高いです。加えて酸味が強ければ、比較的涼しい気候の多いヨーロッパ圏のワインの可能性大。反対にフルーツが強く出ていて酸味も弱めなら、温暖な気候のヨーロッパ圏外の可能性大。これは生産者のスタイルにも影響されるので絶対ではありませんが、重要な手掛かりとして利用します。今度ワインを飲むときに、どちらに重点が置かれているか、意識して飲んでみると面白いかもしれません。

後は白胡椒・ライチ・白桃など、ブドウそれぞれの特徴を探したり、そのブドウの主な生産地や気候、畑の標高、ワインの色の濃さや熟成した香りの由来など、ありとあらゆる推測を交えながらどんどん絞り込んでいきます。ある試験の場合にはこの頭が痛くなる一連の判断を250秒 x 6で行うわけですが、当然味わう余裕はありません…。それでも運よく完璧に当たったときは、普通に飲んでいれば味わえない高揚感が得られます。しかし本音を言えば、「ゆっくり味わって飲みたい」に尽きます…。昔からよく「考えて飲むな」と言われてきましたが、その通り、頭で飲むと疲れるんですよね。私が低価格帯ワインも良く飲むというのは、そういった理由からかもしれません。ワインは楽しく飲みましょう!

Wine Tasting

Gewurztraminer 2018 by Wolfberger

産地はフランスのアルザス地方。
ドイツとの国境隣の内陸地方で、クリスマス市やStaubで知られているのではないでしょうか。

ブドウはGewurztraminerと書いてゲヴュルツトラミネールもしくはゲヴェルツトラミネールと読みます。フランス語ですから日本語表記もどっちつかずなんでしょう。ドイツバージョンもあるのですが、また別の機会にしますね。

“アルザスはコウノトリが有名でシンボルにもなっています”

<外観>
中程度のイエローで、若い白ワインの中では色が濃い方ですね。

<香り>
香りの強さは中(+)程度でライチ、そして金柑のような甘酸っぱい柑橘の香りが特徴的です。
(確かめたことはありませんが、金柑は英語にもなっているので試験や大会ではセーフだと思います…)。
全体的に黄色い印象で、黄色っぽい果実や黄色い花が思い浮かびます。
フレッシュなレモン、グレープフルーツ、ライチ、白や黄色のバラ、白胡椒、フレッシュジンジャー、乾いた白い石といったように、フレッシュな酸味あるフルーツ、スパイス、お花、少々のミネラルといったのが特徴かと思います。あとはハニーでしょうか。
フレッシュな香りが多いという事は、それだけ若いワインという判断ができます。恐らく古い大きな樽を使用していると思うのですが、そのせいかそれらしい香りが見つけられませんでした。
もしくはステンレスタンクを使用しているのかもしれませんが、資料が見つからず…。

参考までに、アルザスの別のワイナリーですが100年以上使用しているという1000ℓ以上もの容量の樽です。
他の地域では一般的な樽の大きさは250ℓ前後が多いので、その規模4倍以上になります!
また古い樽だと、何者かの顔が彫られていたりします。
そういう発見もワイナリー訪問の楽しみの一つです。

<味>
酸味は控えめで多少の甘味を感じるオフドライです。
香りも十分甘いのでしっかりと吟味しましたが、これはオフドライと呼べるでしょう。
アルコールは中程度でボディーは中(+)程度。
Gewurztraminerはoily textureと言いますか、重ためになる傾向にあります。
アルコールは中程度ですが、甘味を感じるという事でとても飲みやすくなっています。
余韻は中程度続き、とても心地よいです。

<総評>
このワインもどちらかというと女性向けかと思います。
以前テイスティングしたAlbariñoの特徴が白桃だとしたら、これは一般的にライチが特徴ともいえ、実はGewurzというのはスパイスという意味を持つことから、スパイスの香りが強いのも特徴です。
そのお陰か中華料理にも合わせやすいと言われており、他にもナツメグやシナモン、カルダモンなどスパイスを使用した料理(辛くないもの)とも合わせやすいと思います。
シンガポールの中華料理店はBYO出来るところが多く、白ワインを飲みたい方はお断りを入れた上で、Gewurztraminerを持ち込むのもアリではないでしょうか。
BYOの分は、食前のビールや料理をしっかり注文するなど、こちらもBYO暗黙のルールをお忘れないようお願い致します

今回私は家で鶏肉とパプリカを使用した中華の炒め物(名前不明)と合わせましたが、とても良く合い、使用した鉄のフライパンの香りと相性が良いことも発見しました。

“ジンジャーブレッドマンとコウノトリ”

アルザスはPain d’Epices (スパイスを使用した焼き菓子)も有名で、写真は有名な人の形をした通称ジンジャーブレッドマン。

ジンジャーブレッドマンはとある映画にもキャラクターとして登場したこともあり、クリスマスになるとシンガポールにもどこからともなく現れますが、実はアルザスからかもしれませんね。

今回のGewurztraminerを考えると、ほんのり甘味もありスパイスを感じる同じ出身の焼き菓子とはまさに相性抜群ですね。クリスマスのホームパーティーでGewurztraminerとPain d’Epicesを用意すれば、家族みんなで楽しめますね

早く海外渡航が解禁になり、Alsaceを再訪できる日が来ることを心待ちにしています。その暁にはワインをたっぷりと堪能してから、前回果たせなかったStaubのアウトレットに行きたいです!

次回は再び日本酒のお話に移りたいと思います!


< プロフィール >

渋谷 大輔 
Daisuke Shibuya

<略歴>
北海道札幌市出身。現在、Suntory F&B Internationalが展開するSUN with MOON Japanese Dining & Caféと串カツ田中でシニアマネージャーを務める。
2020年には インターナショナルワインチャレンジ酒部門 准審査員に抜擢。

<ワイン資格等>
Certified Sommelier by Court of Master Sommelier
WSET Advanced Certified in Wine
インターナショナルワインチャレンジ酒部門 准審査員
WSET Advanced Certified in Sake

<受賞歴>
2019年 シンガポール – フランスワイン ベストソムリエコンクール優勝/アジア大会シンガポール代表
2019年 シンガポール – アメリカワイン ベストソムリエコンクール優勝

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この記事を書いた人
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