【大人の社会科見学】
シンガポールで楽しむイベントその315
-ハリラヤ プアサ2025-イスラム教の断食明けを祝う日

シンガポールは、多文化が織りなす鮮やかなタペストリーのような国です。世界各地からの人々が、それぞれの豊かな文化遺産を携えて生活し、一年を通してさまざまな民族の祭りや行事が繰り広げられます。
異文化間の理解と尊重が日常生活に溶け込んでいるこの場所で、特に目を引くのはマレー系やインド系の祭りです。日本ではなかなか目にすることができないこれらの文化に触れることは、シンガポールでの生活をより豊かにしてくれるでしょう。

イスラム暦の第9月、ラマダン月が訪れると、シンガポールの東地区、パヤレバーからユーノスにかけての地域は、特別な雰囲気に包まれます。シムスアベニューとゲイランロードに挟まれたこのエリアは、煌びやかな電飾で彩られ、多種多様な露店が軒を連ね、まるで別世界のようです。この時期は、イスラム教を信仰するマレー人にとって非常に大切な宗教行事、ハリラヤ プアサへの準備期間であるラマダンが行われます。約1か月間、信徒は日の出から日没まで飲食を断つ断食を行います。
この断食は、単に食欲を抑制するだけではありません。それは、内なる信仰を具現化し、食べ物や水のありがたさを実感し、物資に恵まれない人々への共感を深める機会です。また、自制心や精神的な成長を促す重要なプロセスとも考えられており、イスラム教徒としての共同体意識の強化にも寄与します。
ラマダン中は日没までの断食が義務付けられていますが、夜になると解禁され、特にマレー系が多く住むエリアでは活気に溢れます。ゲイランセライ周辺では、屋台だけでなく、絨毯や帽子、サンダルを販売する店舗、さらには移動遊園地も設置され、ハリラヤ プアサの前夜まで地域全体が祭りのような雰囲気に包まれます。

そして、ラマダンの月が終わりを告げると、ハリラヤ プアサが到来します。シンガポールではこの日が公式の祝日に定められており、人々は朝早くからモスクに集まり、特別な祈りを捧げます。その後は家族や親戚、友人宅を訪れ、心温まる時間を共有します。この日は、新たな始まりを象徴し、互いに和解を促す意味も込められています。
今年のハリラヤ プアサは3月31日に設定されており、例えばスルタンモスクを訪れると、新しいマレー民族衣装を纏った人々がコーランの誦読に合わせて祈りを捧げる姿に接することができます。これは単なる宗教的儀式ではなく、信仰心を深め、生活の中での精神性の大切さを再確認する貴重な瞬間です。
シンガポールで過ごす時間の中で、ハリラヤ プアサやラマダンの期間を体験することは、異文化理解と国際感覚を養う絶好の機会です。このような祭りや行事を通じて、私たちは世界がどれほど多様で、かつ相互につながっているかを実感することができます。ぜひ一度、ラマダン時期の夜のにぎわいやハリラヤ プアサ当日にモスクを訪れ、多様な世界を垣間見てはいかがでしょうか。

◆大人の社会科見学 筆者
森山 正明 大人の社会科見学シンガポール版は、シンガポールで生活している方々へ、シンガポールの奥深さを知ってもらいたい思いで活動を始めました。「3か月も住んでいればシンガポールは飽きてしまう」と巷では言われますが、なかなかどうして、この地ならではの楽しみは、尽きることはありません。 2013年11月からこのサークル活動を始めて約11年。行ったイベントは、200回を超え、その中から読者の方にもシンガポールの文化や習俗について年中行事を軸に紹介をして参ります。 ●大人の社会科見学の電子書籍版完成! 詳細はこちらから |
●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
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この記事を書いた人
SingaLife編集部
シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!