【大人の社会科見学】
シンガポールで楽しむイベントその326
-シンガポールが誇るソウルフード、肉骨茶(バクテー)の魅力-

シンガポールは、東南アジアの交通の要衝であり、西洋と東洋の文化が交差する場所として、長い歴史を持っています。大航海時代からアジア、そしてヨーロッパなど、様々な地域からの交易者がこの地を訪れ、特に香辛料貿易が盛んだった頃には、多くのヨーロッパ船が寄港しました。
1819年にラッフルズ卿によってシンガポールが英国植民地として開港されると、近隣地域から多くの人々が集まるようになり、さらにアヘン戦争以降、中国人の海外渡航が正式に許可されると、労働力として多くの中国人が英国海峡植民地であるシンガポールへと渡ってきました。
そんな歴史の中で育まれたバクテーは、今やシンガポールを代表するソウルフードとして、多くの人々に愛されています。骨付き豚肉を、ニンニクと数種類のスパイスをミックスしたスープでじっくりと煮込んだ料理で、一口食べれば体の中から温まります。


「ちょっと風邪気味かな」「二日酔いで気持ち悪いなぁ」と感じたときには、薬に頼るのではなく、まずこのバクテーを食べるのが私の習慣です。熱々のスープをすすり、柔らかく煮込まれた骨付き豚肉を頬張ると、途中からは汗が噴き出してくるのですが、不思議と重かった体がいつの間にか軽くなっていくのを感じます。シンガポールで風邪をひくことが少ないのは、このバクテーのおかげだと今でも思っています。
さて、バクテーは漢字で「肉骨茶」と書きますが、シンガポールに来た当初から「なぜこの漢字をバクテーと読むのか?」が疑問でした。
シンガポールに移住してきた中国人は、主に福建省からの移民で、港で苦力として重労働をしていました。しかし賃金は低く、安い食材といえば、豚を解体した後の削ぎ落としきれなかった肉片がついた骨でした。その食材をスパイスで煮込んでスープと一緒に食べるのが、安くて良い栄養補給源として苦力仲間に広まっていったと言われています。
そして「茶」の字ですが、肉を食べて体にたまる脂肪分を中和するためとか、食べ終わった後にみんなでお茶を飲みながら歓談するからなど、諸説あります。いずれにしても、肉骨茶は福建語での発音が、肉bah骨kut茶têから現在まで伝わっているということです。


バクテーは、シンガポール発祥という人もいれば、マレーシアが発祥の地だと主張する人もいて、シンガポールとマレーシアの間で論争になることがあります。しかし、その論争はさておき、福建風、潮州風、広東風と、異なった味付けを楽しむことができるのがシンガポールならではの魅力だと思います。
多様な文化が交差するシンガポールの食文化を象徴する料理であり、多種多様な香辛料やハーブが織りなす独特の味わいは、一度食べたら忘れられない魅力があります。ぜひバクテーを味わって、シンガポールでの生活をさらに健康で、そして元気みなぎるものにしてみてはいかがでしょうか。
◆大人の社会科見学 筆者
森山 正明 大人の社会科見学シンガポール版は、シンガポールで生活している方々へ、シンガポールの奥深さを知ってもらいたい思いで活動を始めました。「3か月も住んでいればシンガポールは飽きてしまう」と巷では言われますが、なかなかどうして、この地ならではの楽しみは、尽きることはありません。 2013年11月からこのサークル活動を始めて約11年。行ったイベントは、200回を超え、その中から読者の方にもシンガポールの文化や習俗について年中行事を軸に紹介をして参ります。 ●大人の社会科見学の電子書籍版完成! 詳細はこちらから |
●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
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この記事を書いた人
SingaLife編集部
シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!