【21年最新情報】シンガポールのデング熱。感染者最多の20年の死亡者は、コロナを上回る。流行期を前に注意を
デング熱での死亡者は32人。コロナを3人上回る
2020年にシンガポールで猛威をふるったのは、新型コロナウイルスだけではありません。むしろ、新型コロナウイルスよりも脅威だったのは、デング熱です。シンガポール環境庁(NEA)によりますと、2020年のデング熱による死亡者は32人。これは統計を取り始めてから最多で、これまででもっとも多かった2005年の25人を上回りました。死亡者の年齢は最年少が25歳で、最年長が92歳となっています。
シンガポールで2020年に新型コロナウイルスが原因で死亡した人は29人なので、シンガポールでは新型コロナウイルスの犠牲者よりもデング熱で死亡した人の方が多かったことになります。
感染者も過去最多
2020年のデング熱の感染者は3万5,315人で、こちらも統計を取り始めてから最多となっています。デング熱がもっとも流行した時期には、1週間で1,792人が感染しました。
2021年は18年よりは多めで推移
シンガポール保健省の統計では、2021年のデング熱の感染者数は3月13日までで合計1,514人。過去最多の感染者数だった2020年と比べると大幅に減っていますが、2018年や2017年よりは感染者数が多くなっているので、デング熱に感染しないように注意が必要です。
2017年以降の具体的な感染者数は次の通りです。
- 2020年:35,315人
- 2019年:15,988人
- 2018年:3,285人
- 2017年:2,772人
(※2013年〜2016年は、年平均で約11,000人)
となっています。
特定の蚊が人体を刺すことで感染
日本の厚生労働省によりますと、デング熱はデングウイルスに感染することで発症する感染症です。デングウイルスは、全ての蚊が媒介するわけではありません。
ーヒトスジシマカ(学名:Aedes albopictus)
と
ーネッタイシマカ(学名:Aedes aegypti)
が媒介します。
デング熱は、この2種類の蚊に刺されると感染する恐れがあります。新型コロナウイルスと異なり人から人への感染はなく、感染経路は蚊に刺されることだけです。
ジカ熱も蚊を媒介して感染する感染症ですが、こちらは症状が軽いケースが多く、感染したとしても気づかないことも多いということです。
ただ、妊婦の場合は、妊娠中にジカ熱に感染すると胎児に影響が出てしまう恐れがあるため感染しないように注意しましょう。
シンガポールでは6月〜10月が流行期
シンガポールでは、デング熱の流行期は例年6月から10月です。昨年もこの時期に爆発的に感染者が増えました。流行期に入る前に、デング熱を媒介する蚊が発生しないように対策しておくことが大切です。
2〜14日の潜伏期間後、高熱と激しい痛みの症状
では、デングウイルスを持っている蚊に刺されると、どのような症状に見舞われるのでしょうか。
厚労省によりますと、蚊に刺されてから2〜14日間の潜伏期間を経て、約2〜4割の人に38~40℃の発熱で発症となります。合わせて激しい頭痛や関節痛、筋肉痛、発疹の症状が出ます。
関節などの痛みは激しく、英語ではBreak bone feverとも呼ばれるほどです。
3〜5日で解熱しますが、熱が下がる際に発疹がみられます。
重症化するケースは多くはありませんが、まれにデング出血熱やデングショック症候群を発症することがあり、その場合は早めに適切な治療が行われなければ死に至ることもあります。
ワクチンや有効な治療法はなし
厚労省によれば、現在のところデング熱のワクチンは開発中ではあるものの、有効性が確実なワクチンはいまだになく、さらに有効な治療法もありません。症状を抑える対症療法しかないため、最大の予防策はデング熱にかからないこと(=ウイルスを媒介する蚊に刺されないこと)です。
参照リンク=厚労省「デング熱について」
大流行はデング熱の型が大きな要因
シンガポールの地元紙「ストレーツ・タイムズ」によりますと、昨年シンガポールでデング熱の感染者が急増した大きな要因は、多くの人間が免疫を持たないタイプのデングウイルスが流行したからです。
日本の厚生労働省によれば、デング熱を引き起こすウイルスには、4種類の異なる血清のタイプ(DEN-1、DEN-2、DEN-3、DEN-4)があり、例えば、DEN-1の血清型のウイルスに感染して回復した場合、その血清型への免疫力が生涯にわたり続きます。
そのため、DEN-1の血清型のデングウイルスが今年もシンガポールで流行したとしても昨年感染した人は免疫を持っているので大きな流行にはなりにくい傾向があります。
2020年に流行したデングウイルスの血清型はDEN-3型でした。このタイプは約30年前に流行したもので、免疫を持っている人がほとんどいなかったため、デング熱を発症してしまう人が増えたと考えられています。
リンク:厚生労働省検疫所のウェブサイト
ステイホームも感染者増加に影響!?
シンガポールで2020年にデング熱が流行した背景には、新型コロナウイルスによるステイホームが影響していると指摘されていました。
1)在宅勤務が増えた
シンガポールでは、外出制限措置「サーキット・ブレーカー(CB)」が始まってからは、ほとんどの職場が在宅勤務になりました。そのため、本来であれば日中はオフィス街にいる労働者が自宅にいたため、自宅でデングウイルスを媒介する蚊に刺される機会が増えたとみられます。
2)建設現場がストップ
シンガポールでは新型コロナウイルスの感染が、建設現場などで働く出稼ぎ外国人(ワークパーミット=WP)の間で、爆発的に増えたことから、一時的に建設工事が中断されました。
人がいなくなった工事現場に溜まった雨水などが放置され、そこにボウフラがわき、デング熱を媒介する蚊が大量発生したと考えられています。
蚊が繁殖しやすい環境を放置すると罰金
シンガポールでは蚊が繁殖しやすい環境を放置していると罰金刑が科される可能性があります。
たとえ個人の住宅であってもシンガポール政府の職員が抜き打ちで訪問。ベランダや軒先にあるトレイや雨どいなどをチェックし、ボウフラが発生しそうな水がためられていないかや、蚊がいないかどうかを確認されます。
遺伝子組み替えの蚊で駆逐
シンガポール政府は、ほかにもデング熱を媒介する蚊の発生を抑えるための対策に取り組んでいます。
それが、遺伝子を組み替えた蚊を人工飼育して、その蚊を自然界に放つことで、繁殖を抑止する方法です。
具体的には、オスの蚊にボルバキアという自然界にいるバクテリアを感染させます。このバクテリアに感染すると、たとえメスと交配したとしても、メスが産卵した卵からはボウフラが誕生せず、蚊の発生を抑止できるという仕組みです。
シンガポール政府はこれまでにシンガポール各地でバクテリアに感染させた蚊を放ち、結果として蚊の発生を90%近く抑えることができたといいます。
外出時は刺されないように
デング熱への最大の予防策は、デングウイルスを媒介する蚊に刺されないことです。
外出する際には、新型コロナウイルス対策のマスクの他、長袖と長ズボンを着用し、さらに防虫スプレーをすれば万全です。
シンガポールでは新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きを見せ始めたと思いきや、今度はデング熱の感染に注意しなければなりません。
デング熱の高熱や関節痛に苦しまないためにも、できる限りの自衛措置をしましょう。
この記事を書いた人
SingaLife編集部
シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!