シンガポールを漢字で書くと?「星」を使う由来などもご紹介!

シンガポールにお住まいのみなさんは、「渡星」という言葉をよく目や耳にするのではないでしょうか。ではなぜ「星」という漢字を使うのでしょう。そもそもシンガポールを漢字で書くと、どのように表記されるのでしょうか

今回はそのような疑問を解消するために、シンガポールの漢字表記の歴史やそのバリエーションについてご紹介します!





①正式な漢字表記とその由来

漢字でのシンガポールの正式な表記は「新加坡」とされています。中国語の発音がXīn jiā pō(シンジーポー)なので、なんとなく音の響きが似ていますね。

「新加坡」という漢字表記が正式に定められたのは、1972年4月25日のこと。政府の委員会により決められました。そもそもなぜそのように、表記を統一する必要があったのでしょうか。

その理由は、当時はいくつもの表記が併用されていたからです。例えば「新嘉坡」や「星架坡」、「星加坡」、「星嘉坡」などが用いられていました。これらはみな、発音が似ている漢字をあてています。

それが1965年にシンガポールが独立して以来、地名や通りの名前等を統一する必要性が生まれました。このような背景から、「新加坡」という表記に統一されたのです。

さて先ほど挙げた表記例の全てに、「坂」を意味する「坡」という漢字が使われていることに気づきましたでしょうか。実はこれには理由があるのです。

そもそもシンガポール川の両岸には、「大坡(Dà pō:ダーポー)」と「小坡(Xiǎo pō:シャオポー)」という地名があり、中国系の人々が多く暮らしていたのだとか。

大坡はチャイナタウンなどがあり、他にも移民が多く住んでいた地域。一方の小坡は市役所などがある地域でした。

これらの地域は川の両岸にあるために坂になっていました。そのため、「坡」という漢字がシンガポールを表す時によく使われたと考えられているのです。

「新◯坡」という表記が最初に登場するのは、ドイツ人宣教師のカール・ギュツラフ(中国名:郭実臘)が1840年に書いた「貿易通志」という書物。そこには、「タイと新嘉坡が東南アジアで最も貿易が盛んな場所である」という旨が記されています。

さて、ここまで読んできて「シンガポールを漢字で新加坡と書くなら、なんでシンガポールに行くことを渡星というのだろう」と疑問に思った人がいるかもしれません。

次にそのことについてご紹介しましょう。


②一文字で表すと「星」なのは…

「渡星」のように、シンガポールを漢字一文字に略すときには、「星」がよく使われます。これはシンガポールが「星加坡(Xīn jiā pō : シンジャーポー)」のように、「星」を使っても漢字で書けることに由来しています

「新」と「星」は中国語ではほぼ同じ、「シン」という発音です。たしかに、せっかくなら「星」という漢字を使ったほうが、なんとなく格好いい感じがしますね!

どことなく見た目の印象が良いのはわかりますが、なぜわざわざ正式な表記に使われている「新」ではなく、「星」を使うことが多いのでしょうか。それは、「新」を漢字表記に使っている国が他にもあるからです。どこだかわかりますか。

答えはニュージーランドです。漢字で「新西蘭」と書きます。ニュージーランドに行くことを「渡新」というのかはわかりませんが、混乱を避けるためにも「星」を使ったほうがよさそうですね。

さてここで、さらに不思議に思ったかもしれません。「新聞などの日本のメディアで、シンガポールに『星』が使われているところを見たことがない。これはなぜだろう」と。

それは各メディアが、外国の地名を書く際のルールを定めているからです。

例えば共同通信社では外国の地名の書き方を次のように定めています。「外国名を見出しで略記するときは、仏、伊、独、豪、加、印、露[一般的には片仮名の「ロ」を使う]、比、越は使ってもよい。」


他社も同様の規則を定めているので、日本のメディアにおいてシンガポールを「星」で表すことは認められていないのです。それにしても新聞などの見出しで漢字一文字に略せるのが、九か国だけなのも驚きですね!


③シンガポールの漢字表記は他にもたくさん!

この記事の最初に、シンガポールの漢字表記には様々な種類があると書きました。例えば王芝という人物が書いた『海客日譚』には、「星加坡」、「星架坡」、「新格坡耳」、「新格伯儿」、「新寄坡」、「息力」、「柔佛」、「新州府」という書き方が紹介されています。

ここでは、それらの漢字表記のいくつかをご紹介しましょう。

色々な漢字表記①:星洲

星洲は中国語でXīng zhōu(シン・チョウ)と読みます。「星」と「新」の中国語読みが同じなので、星を使った表記がたびたびみられるのです。ここでの「洲」は「島」を意味しています。

1929年にシンガポールで創業し現在はマレーシアに拠点を移している新聞、「星洲日報」にはこの表記がまだ残っていますね。

他にも「星国」という書き方も知られています。

色々な漢字表記②:石叻

マレー語で「海峡」を意味する「selat(セラ)」という語があります。これを音訳したのが、「石叻」です。中国語ではShí lè(シーラー)と発音します。

この石叻を基にした表記には、以下のものなどがあります。

・石叻埠(Shí lè bù:シーラーブー)
・实叻埠(Shí lè bù:シーラーブー)
・叻埠(Lè bù:ラープー)

色々な漢字表記③:狮城

みなさんは「シンガポール」の本来の意味をご存知でしょうか。シンガポールはサンスクリット語の「Singapura」が語源で、「獅子の街」という意味があるとされています。ちなみに一説にはこの街を築いた王子さまが、トラをライオンと見間違えたためにこの名前になったとされています。

この「獅子の街」を中国語に訳したものが、「狮城」なのです。中国語ではShī chéng(シーチャン)と読みます。

色々な漢字表記④:日本の文献の場合

ここまで紹介してきたのは、主に中国語の文献に書かれている漢字表記です。最後に、日本の文献に紹介されている表記をみてみましょう。

福沢諭吉が書いた『世界国尽』では、「新賀堀」の字があてられています。また『宛字外来語辞典』には、次の6つの表記の仕方が紹介されていました。

1.新加坡
2.新保彌
3.新賀堀
4.新嘉波
5.新嘉坡
6.新嘉玻

また1942年に日本がシンガポールを占領した際には、同地を「昭南市」と名付けています。


④シンガポールは様々な漢字を使いながら愛されてきた!

古来より東南アジア屈指の港として名高いシンガポール。その名前は様々な漢字が用いられつつ、多くの人々に愛され続けているのです。

正式な表記は「新加坡」ですが、一文字に略す時には「星」が使われています。他にも音訳した漢字や、マレー語やサンスクリット語を中国語に訳した表記も紹介しました。

ここで紹介したもの以外にも、どんな漢字が使われているかを調べてみるのも面白そうですね!




この記事を書いた人

SingaLife編集部

シンガポール在住の日本人をはじめ、シンガポールに興味がある日本在住の方々に向けて、シンガポールのニュースやビジネス情報をはじめとする現地の最新情報をお届けします!